七百九頁目
まさかこんな問題が発生するとは予想外だ。
カマキリを捕まえ終えたところで改めてモーリツさんの元へシャルル少年を送り届けたところまではよかった。
また事前に無線で連絡した通り同行者がシャルル少年一人だけになっていてもモーリツさんは気にした様子を見せなかったから、後はもう別れるだけ……のはずだったのだが何故かシャルル少年に待ったを掛けられてしまった。
そしてシャルル少年は、もし皆様方が許してくださるのならばと前置きした上で今後しばらくの間は俺達と行動を共にしたいと言い出してきた。
全く想像していなかった展開に俺とハンスさんは困惑し戸惑ってしまう。
またモーリツさんもこうなるとは全く……いや少しは予想できていたのかそこまで驚きは大きくなかったが、それでも一瞬目を見開いて俺達とシャルル少年を交互に見ていた。
しかし続けてシャルル少年が、後学のためにも多数の動物を既に仲間にした実績がある上に実際に目の当たりにした捕獲作業も洗練されている俺達の元で色々と学びたいと口にしたことでようやく彼の心境をおぼろげながらに理解することが出来た。
何せモーリツさんは基本的に動物より人間の相手をしてコネクションを築き上げる方を優先してるっぽいから本格的に動物の捕獲能力や運用方法を学びたいのであれば俺達のトライブに来た方が良いのは明白だ。
尤もしばらくの間とわざわざ口にしている以上はモーリツさんの元へ帰るつもりはあるようだ。
……多分シャルル少年もここに来たばかりの頃、モーリツさんに手助けしてもらっただろうしその恩義を忘れていないのだろう。
その証拠とばかりに俺達だけに同行の許可を求めるのではなくモーリツさんにも一時的に傍を離れる許可を貰おうとあえて『皆が許してくれるなら』なんて言いかたをしたのだろう。
七百十頁目
突然のシャルル少年の提案に何と返答していいか迷う。
結構長いことARKで時を過ごしている俺はトライブに新しいメンバーを勧誘したことも実際に参加させたこともある。
しかし他のトライブからの移籍何て自体は経験していないどころか想像だにしていなかった。
拒否すればシャルル少年が可哀そうだし、かといって受け入れるとなればトライブが弱体化してしまうモーリツさんに迷惑が掛かる気がする。
だから俺一人では結論を出すことができそうになくモーリツさんと話し合って決めたいところであったが、ありがたいことに向こうも同じ考えだったようだ。
一旦シャルル少年に待っててもらい、少し離れたところでモーリツさんとシャルル少年について話し合うことにした。
すると意外なことにモーリツさんとしてはシャルル少年が俺達のトライブに学びに行くこと自体はむしろ前向きなようですらあった。
何だかんだで律儀なシャルル少年のことだからきちんと戻ってきて、俺達のトライブで学んだ技術を自分のために大いに役立たせてくれるだろうからと……。
そう結論出ているのに何故わざわざシャルル少年から離れたところで話し合おうとしたのか不思議に思う俺達にモーリツさんは俺達のトライブは大丈夫なのかと聞いてくる。
……拠点に残っている女性陣の反応は実際に聞いてみないと分からないが少なくとも俺個人としてはトライブに参加したいと言ってくれている人を拒絶したくはない。
もちろんこれが粗暴な輩であったら信頼のおけなそうな相手であれば話は別だがシャルル少年とは少しの間とはいえ行動を共にして、色々とズレたところもあるが真面目な人柄であることはわかっている。
ハンスさんも同じ気持ちのようであり、また拠点に残っている女性陣にしても後で確認は取るがキャシーもソフィアも俺達が認めている以上は幼いシャルル少年のお願いを無下にしたりはしないだろう。
しかしそこまで告げたところでモーリツさんは違うとばかりにかぶりを振ると、あのルゥという幼子と顔を合わせても大丈夫そうなのかと重ねて尋ねてきた。
……ルゥちゃんが人を拒絶することを危惧してるのか? いやいやあり得ないだろう……と決めつけるのはどうかと思うが、だけど幾ら考えて見てもルゥちゃんが嫌がる姿が余り想像できない。
そう例えシャルル少年が少しばかり宗教観に凝り固まっていてたまに見境なく自分の宗教に勧誘してくるとしても問題には……問題……あ…………少年十字軍って確か異教徒の改宗を目的としていたんじゃなかったっけ?
…………ルゥちゃんの動物信仰というか生贄の巫女的な挙動が宗教観によるものなのかははっきりしていないがシャルル少年の方が異教徒判定したらどうなるのか……物凄く不味い気がするぞ。
今回名前が出た動物
カマキリ