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どうやら無線に反応したのはルゥちゃんのようだ。
慣れない手つきで無線を弄ったから雑音がたくさん入ってしまったのだろう。
まあ無線機は下手な採掘道具や武器よりも頑丈なのでルゥちゃんが多少乱暴に弄っても壊れる心配はない。
だから雑音は無視してそのまま会話を続けたところルゥちゃんはまた拠点でお留守番しているようだ。
そしてキャシーとソフィアは洞窟攻略の準備や牧場の管理に加えて動物の捕獲も試みているようでバタバタとあちこち飛び回っているとのこと。
つい先ほども一度戻って、またすぐに飛び立っていったとのことなので連絡がつかないのは単純に何かの作業の真っ最中で手が離せないのだろう。
いつもならば特に問題ないというか自主的に動いてくれてありがたいぐらいなのだが今回だけはちょっと困ってしまう。
……よりにもよってルゥちゃんしかいない拠点にシャルル少年を連れて行くことになるとは計算違いだ。
七百十四頁目
拠点に帰り着いた俺とハンスさんは少し……いや結構緊張しながらシャルル少年を伴って内部を案内して回る。
当初の予定では真っ先に拠点に残っているメンバーと顔合わせさせるつもりだったのだが、当の本人が井戸の周りに作られたモーリツさん達の拠点とはまるで違う様相に興味を示したからだ。
上手く行けばキャシーやソフィアが帰ってくるまでの時間が稼げるかも、なんて思惑もあって一つ一つ細かく説明して回るがシャルル少年は熱心に話を聞いていた。
この拠点に居る動物の顔ぶれを見ては自分がまだ仲間にしていない個体の能力を細かく尋ねて来たかと思えば、水道と蛇口や見張り塔に動物捕獲の罠などの建物物にも関心を寄せている。
尤も見栄えなどの直接的な効果のない行為に関することはどうでも良さそうにしている辺り、どこまで行っても神の僕として元の土地に残してきた仲間のためになることを学ぼうとしているようだ。
この真面目さが変な方向に向かったらどうなるのか不安に苛まれつつ電化製品の説明に移るとクーラーの時と同じく仕組みから素材に至るまで事細かく質問してくる。
また専門的な事はハンスさんに任せつつ旋盤などの実物を見せて回る……中で遂に冷蔵庫へ薬と料理を仕舞いに来たルゥちゃんと対面してしまう。
こうなると紹介しないわけにはいかない……と思うまでもなくシャルル少年はルゥちゃんの傍に浮かぶガイドロボットのオウ・ホウさんを見て驚いたように聖霊様とか何とか叫びながら恭しく頭を下げ始めた。
……ああ、そういえばルゥちゃんも初めて見た時からオウ・ホウさんのことを天の使いだとか天使様だとか思い込んでいたっけ……まあ前提知識がないなら勘違いするのも無理ないけれど、これはまたややこしいことになってしまった気がするぞぉ。