二百三十七頁目
ティラノの捕獲は後で考えることにして、俺たちは一旦東南の端にある小島を目指して飛び始めた。
海上を可愛い少女と二人で鳥に乗って飛んでいくなんて、まるで映画か何かのワンシーンのようで色んな意味で感動してしまった。
フローラの方はと言えば、はにかんだ笑みを浮かべながら俺を見たかと思うとあちこちを見回してまた俺の顔を見て逸らして……を繰り返している……その顔が少し火照って見えたのは気のせいじゃないと思う。
尤も俺もそんなフローラを見つめていると気恥ずかしくなってきて、何より下から聞こえる波打つ音が気持ちよさそうでついついそちらへ視線を投げかけてしまう。
波打ちながらキラキラと日の光を反射している海はとても美しく、その海面を可愛い魚たちが飛び跳ね……何て訳はなく巨大な背びれがあちこちに見える。
どうやらこの海はメガロドンの天下のようだ……前に襲われかけたことを思い出してしまい、浮かれていた気分が一気に萎えてしまう。
こんなところに落ちたら一巻の終わりだ……さっさとあの小島へ急ごう。
……もしかしてあの小島はここ以上に危険な場所だったりしないよな?
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ようやくたどり着いた小島は……まさに天国とでもいうべき島だった。
少し熱いぐらいの気温でありながら島の中央は水遊びに相応しい浅い入り江になっている。
しかも海と続いていながらも浅すぎるために、釣り竿で釣れそうな魚こそ寄ってくるが巨大なメガロドンなどの危険な肉食は入ってこれないのだ。
海だけじゃない、陸上に居る生き物もブロントにステゴ、それにアンキロ、トリケラ、パラサウロロフスと草食動物のオンパレードでありながら肉食は本当に一匹も居なかった。
前に赤いオベリスクの近くにも似たような場所はあったが、あそこにすらディ君と同種のエリマキトカゲのような小型の肉食はいたというのにここはそれすらいないのだ。
実際に天敵が全くいないためか、この小島で暮らしている動物たちは俺たちが居た島と同じ生き物とは思えないぐらいのっそりと歩いている。
おかげでフローラは楽しそうにはしゃいでいる……ぱちゃぱちゃと水を蹴って遊び、また草食動物が草を食べているところを至近距離で観察して笑っている。
そんなのどかな光景に和みながらも俺はあることを考えていた。
……ひょっとして、肉食が全く住んでいないここに拠点を作れば長期滞在しても平気なのではないだろうか?
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とりあえずフローラに別荘代わりの小さい拠点でも作るよう提案すると、嬉々として動き出しすぐに最低限の安全が確保できそうな居住空間が出来上がった。
更に何かを作ろうとしてるようだが、そこまで見守った時点で俺はもう少しこの島の周りを観察しようと軽く飛び回り始めた。
三日月形に盛り上がった地形は、やはり隅から隅まで探索しても草食しかいない上に……洞窟のように入り込める場所も無かった。
もしそんな場所があったらフローラが好奇心から突入しかねないと思っていたので、まずは一安心だ。
後はこの島の向こうに何かないか海上を見渡したが、水平線が広がるばかりだった。
そこでふと前にオベリスクの頂点に貼ってあったバリアに関する考察を思い出した俺は、自作マップとコンパスを取り出すともう少しだけ南に向かって飛んでみた。
……思った通り、ある程度進んだところで目に見えない壁があり移動できなくなる。
やはり俺たちのいる場所はドーム状のバリアで包み込まれた閉ざされた空間のようだ。
ますます絶滅動物保護区の可能性が高まり、何よりも脱出に向けた一つの回答が完全に潰されたことを知って流石にため息が漏れる。
尤も絶望したりはしない、だって今はもうここにも俺を帰りを待ってくれる人がいて……帰る場所があるのだから。
【今回名前が出た動物】
ティラノサウルス
アルゲンタビス(鳥)
メガロドン
シーラカンス(釣れそうな魚)
セイバートゥース・サーモン(釣れそうな魚)
ブロントサウルス
ステゴサウルス
アンキロサウルス
トリケラトプス
パラサウロロフス
ディロフォサウルス(エリマキトカゲ)