七百四十頁目
ワイバーンの谷は急斜面になっている岩山の陰にある。
そのため空を飛べない動物を連れてくる彼らはもっと到着に時間が掛かると思っていた。
しかしシャルル少年は道中の歩きやすさも考えて少し早い段階から障害物などがない外周部の砂漠の浅い場所に出て、そこを周ってきたようだ。
サンドワームに襲われる危険性はあったが高品質サドルを装備したゴーレム軍団ならば返り討ちに出来るため問題ないと判断したのだろう。
更にシャルル少年は自分以外の二人をアルケンに乗せ、また自分は代わる代わる違う個体に乗り移ることでゴーレムが疲れて走れなくならないよう気を配っていたようだ。
確かにこれまでの経験則から何となく動物は人が乗っていると普通よりずっと息切れしやすくなるとはわかっていたが強引に長距離を走り抜けるこんな方法を自力で思いつくだなんて大したものだ。
まあそれはともかくこれで準備は整ったわけで、後は装備と物資の整理を終えたらワイバーンの谷を観察しつつ作戦を話し合ってから……ついに空飛び火を吐く竜、ワイバーンの捕獲に差し掛かるとしよう。
七百四十一頁目
望遠鏡でワイバーンの谷の中を覗き込んでみたところ……まあいるわいるわウジャウジャと。
目の届く範囲だけでも十匹近いワイバーンが所狭しとあちこち飛び回っている。
流石にこの数のワイバーンに一度に襲われたら幾ら何でもどうしようもない。
だから捕獲するにしてもまずは一匹ずつ誘き出さなければいけない。
やり方としては遠距離武器で適当な個体を打ってこっちに気づかせるのが一番簡単だ。
ただもしも一体が気が付いて近づいてくる物音で他の個体も反応したらヤバすぎる。
そのため最初に一体を狙い撃つ時点で矢を打ってデゴイになる係とゴーレムを操る係と万が一の際にモスラの同種で鱗粉を振りまく係に別れる必要があった。
もちろん一番危険な矢を打ち囮になるのは俺がやるとして、モスラの同種はシャルル少年にお願いしゴーレムはキャシーに任せることにした。
残る三人はいつでも逃げれるようアルケンに乗った状態で待機しておいてもらう。
これならトラブルが起きても全滅することだけは避けられるはず……ああもう、やっぱり炎のブレスでの全滅が頭をちらついてしまうなぁ。
俺もマァ達ほどではないがあのドラゴンとの一戦がしっかりトラウマになっているようだ。
まあ流石に野生の個体であるワイバーンがオベリスクの奥に居たドラゴンほど強いとは思えないが、取りあえず最初の一体は戦力の確認も兼ねて普通に倒してみるとしよう。
……ついでにこれをきっかけに何とか炎のブレス恐怖症を克服したいところだ。
今回名前が出た動物
ファイアワイバーン(ワイバーン)
デスワーム(サンドワーム)
アルゲンダヴィス(アルケン)
リマントリア(モスラの同種)
ドラゴン