ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第796話

七百四十六頁目

 

 やっぱりワイバーンがこんな単純なやり方で仲間に出来るわけがなかった。

 麻酔を打ち込まれて普通に眠りこそしたワイバーンであったが何を差し出しても食べる素振りすら見せてくれなかったのだ。

 蛇などのように特別な餌を要求する場合であっても食べる素振りぐらいは見せてくれるため、単純に好みの食べ物を持っていないからというわけでもなさそうだ。

 

 つまり眠っている状態で餌を食べさせて懐かせるのではなく別の方法、それこそカマキリやフェニックスのように起きているときに手渡しとか……ってんな危険な真似が出来るわけないだろうがっ!!

 そりゃあ罠にかかっているこの状態なら高度も上げられないし無理やり口元まで近づけなくはないが、電撃のブレスを吹いてくる口元に生身で近づくなんて幾ら何でも自殺行為すぎるっ!!

 しかしだからと言って他に仲間にする方法と言われても困ってしまうのだが……。

 

 一応前例を必死に思い出して超巨大な草食のように眠っている間にサドルをつければいいのかとも思ったが、不思議と左手首の鉱石を眺めてもワイバーンのサドルの作り方は全く思い浮かんでこない。

 もうこうなるとほぼお手上げ状態なのだが、そこで興味津々な様子でワイバーンの身体を調べていたキャシーとソフィアが声を掛けてきた。

 ちょうどワイバーンのお腹側に居る二人の元へ行くと彼女らはワイバーンの胸元辺りを指さしており、そちらに視線を向けてみれば何やらトロっとした白っぽい液体が垂れてきているではないか。

 

 一体何なのかと一瞬首をかしげるが牧場育ちのキャシーが母乳ではないかと答えてくれた。

 実際に胸の辺りを手で押すように触れてみると確かに何かで見た牛の乳を搾った時のように勢い良く噴き出してきた。

 初めて見る素材に一瞬ワイバーンを捕獲することも忘れてそのミルクを……いやワイバーンの乳なのだからワイバーンミルクの回収に専念する俺達。

 

 そうしておおよそ五人分ほど回収できたところでワイバーンミルクは止まってしまったが、これを見て俺達は即座に思いついたことがあった。

 ……さっきは餌は関係ないって思ったけれど、ひょっとしてこのワイバーンミルクなら食べて……いや飲んでくれるんじゃないかっ!?

 

七百四十七頁目

 

 残念なことに俺の推論は外れていた。

 或いは最初の推論通りというべきか、ワイバーンミルクもまた口元へ持っていっても全く反応してくれなかったのだ。

 これでまたワイバーンの捕獲については一からやり直しか……と思ったのは俺とソフィアだけでキャシーはもしかしたらと呟くともう少しワイバーンの谷をちゃんと観察しようと言い出してきた。

 

 別に反対する理由はないが一体どうしてなのか聞いてみたところ、まさに目から鱗と言わんばかりの答えが返ってくる。

 あのワイバーンは母乳を出していた……それはつまり子育てするための身体になっているというわけであり、ならば妊娠しているか卵を孵化させていた最中だったのではないかと。

 ……ARKで野生の動物が交配しているところを見たことがなかっただけにその可能性を完全に失念していた。

 

 しかし考えてみれば前の島ではペンギンだけではあるが一応野生の幼体も存在したではないか。

 尤も野生のペンギンの幼体は既に生まれた後だからか牧場で産み落とされた直後の幼体の様に刷り込ませることはできなかったから幼体でうろついていたら難しそうである。

 逆に言えばもしも卵が孵化する前の状態であれば……そう思いながら慎重にワイバーンの谷を望遠鏡で見て回ると垂直の壁のあちこちに小さい穴が開いていることに気が付いた。

 

 その一つ一つの穴を確認していくと中にはまるで鳥の巣みたいな物が形成されている場所もあり、その中央には巨大な卵が鎮座していた。

 ……アレこそまさにワイバーンの卵、いや受精卵に違いないっ!! つまりアレを手に入れて孵化させれば生まれた子供を懐かせることができるはずだっ!!




今回名前が出た動物

ライトニングワイバーン(ワイバーン)
カマキリ
フェニックス
ペンギン
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