七百五十二頁目
思った通りワイバーンにも特殊個体は存在していた……のだが、珍しいことにその体格は通常種とほとんど変わらない大きさであった。
大抵は通常種より一回りは大きく戦闘力もその体格に見合った強さになっているのだが、ワイバーンの場合はその戦闘力も大して差があるように感じられなかった。
尤もそれはこちらのゴーレム軍団が感情すぎるせいかもしれないが、向こうの吐く炎のブレスを無効化し噛みつきなどはサドルと合わさった頑丈すぎる身体に文字通り歯が立たず、罠にかかったところを袋叩きにあってあっという間にくたばってしまったのだ。
……薄暗い谷から飛び出てきたところで特殊個体だとわかりその瞬間はドキッとしたものだが、まさかここまであっけなく倒せてしまうとは逆に驚きだ。
ただ特殊個体ゆえに外皮が普通のワイバーンより硬いためか普通に撲殺してもなおミルクが採取不能になることなく身体から滴ってくるではないか。
しかも採取できる量も十倍近く多いため、容器の問題もあって結構嵩張るため逆にどうやって保存したらいいか少しだけ悩んでしまった。
まあ結局は他のミルクと同様に食料保存塩を持たせている動物の荷物入れに押し込むしかないのだが、お陰でこれ以上何も入れられない程にパンパンになってしまった。
……何かの間違いでここに別の荷物を押し込んだらミルクの容器が割れたりして大変だし、そういう荷物には何か一目でわかる模様……黒い重りのマークでも書いておくことにしようかな。
七百五十三頁目
特殊個体も駆除できる戦力があるとわかり、またその際に大量のワイバーンミルクも手に入った。
こうなるともうわざわざ罠を利用したり雌個体をより分ける必要もほぼなくなり、大胆に狩っていくことができるようになった。
お陰で何とか日が暮れる前に目に見える範囲のワイバーンは討伐しきることができてしまった。
後は飛行生物を使ってワイバーンの卵を回収するだけであり、それはつまり遂に谷の中へと潜入する段階になったということになる。
しかし幾ら目に見える範囲にワイバーンが居ないとはいえ死角に潜んでいたり、離れたところに居る個体がこちらへ飛んでくるかもしれない。
しかも厄介なことにワイバーンの飛行速度はこちらのどの飛行生物よりも速いため一度気付かれたら振り切ることは不可能なのだ。
だからこそモスラの同種を連れて行きその鱗粉で無理やり足を遅くして護衛のゴーレムが待機しているところまで逃げるしかないのだが、途中でブレスを食らう可能性を考えたら危険性の高い作業であることは明白だ。
そのためにもやはり動物の扱いに慣れていて咄嗟に判断を下せる俺とキャシーが向かい、何かあった時のためにシャルル少年には谷の上でゴーレム軍団を率いた上で待機しておいてもらうのが一番だろう。
尤もソフィアだけはワイバーンの巣を間近で観察して見たかったようで少しだけ悔しそうにしていたがそれでも危険性の高さは理解しているようで、結局は犠牲者を出さないためにみんな俺の判断に賛同してくれた。
……さぁてここまでは余りに順調に行きすぎているからこそ最後の最後に何かしらの障害が立ちふさがって来そうな気もするけれども、とにかくこの砂漠に残っている最後の未探索エリアに突入するとしますかっ!!
今回名前が出た動物
αファイアワイバーン(ワイバーンの特殊個体)
ロックエレメンタル(ゴーレム)
リマントリア(モスラの同種)