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垂直の壁に挟まれた谷の底には前に望遠鏡で確認した通りマグマが流れている。
そのためにか周辺の環境物はマグマでコーティングされているかのようにガチガチに硬くなっている。
お陰で採取できるものはマグマ由来の黒曜石ぐらいしかなく、谷の外に広がる外周部の砂漠とは違う形ではあるがここもまた枯れた大地のようだ。
前の島では基本的に危険な場所ほど希少な素材が取れただけにワイバーンの卵以外に目ぼしい物がなさそうなのは少し不思議であった。
……或いは逆にワイバーンの卵にそこまでの価値があるのかもしれない。
そんなことを考えながらワイバーンが隠れていないかの確認も含めて谷の内情を調べて回る。
そうしてワイバーンの気配が感じられないことを確信した上で、改めて俺達は壁の途中に空いている穴を一つ一つ調べて回り……中に鳥の巣のようなものが築かれている場所を何か所も見つけた。
尤も鳥の巣に似ているのは外観だけでサイズは比べ物にならないほど大きく、その中心に鎮座している卵もまた俺の背丈と同じぐらい巨大であった。
このサイズは前の島に居たギガノトの卵と同じぐらいであり、中から生まれてくる生き物は相当の大きさに成長するであろうことが明白であった。
砂漠においてそこまで巨大な生き物はサンドワームとゴーレムを除いてはワイバーンぐらいである。
そして触ってみたところ受精卵特有の暖かさのようなものが感じ取れて、ここまでくるとやはりこの卵を持ち帰って孵化させることがワイバーンを仲間にする方法なのだとほぼ確信することができた。
つまり後はこの卵を割れないように慎重に孵化部屋のある拠点まで持ち帰ればいいわけなのでもう楽勝……い、いやよくよく考えてみたら人間サイズの卵を持ち出すのって結構大変な作業の気がするんだが……何故か普通に荷物に突っ込めばいいって考えそうになった俺はマグマの熱気でどうかしていたのだろうか?
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ARKにおける卵は高いところから落としても割れないぐらいの頑丈さがある。
お陰で荷物に詰め込んでも何とか割れずに運ぶことができたが、それでも運搬中は気が気ではなかった。
それでも何とか全ての卵を谷の外まで持ち出し終えることができて一息……つく間もなく日が暮れてきてしまう。
もちろんこのままこの場所に留まっているわけにも行かず、かといって空を飛べない動物を連れて移動したら間違いなく真っ暗になってしまう。
まあ高品質サドルを装備したゴーレム軍団ならば一日ぐらいここで待機させておいても全滅する心配はなさそうだ。
そのため豚とユウキィ君だけ簡易拠点に築いた防壁の内側へ避難させた状態で揃って待機させて置き、俺達は皆でアルケンに乗って一番近い赤いオベリスクが見えるところにある拠点へと移動する。
ここは今まで過ごしてきた緑のオベリスクの麓に作った拠点よりは環境が劣るけれど風力発電機が設置されているため水が使い放題でない点を除けば住み心地は悪くない。
何より動物の繁殖などの設備はこっちの方が充実しているため、ワイバーンの卵を孵化させるにはうってつけの場所であった。
……そんな俺の予想とは裏腹にまさかエアコンの温度設定が間に合わないという新たな問題が発生するとは思わなかった。
まあ考えてみればマグマが流れるような環境に巣を作るような生態なのだから常識外の熱気が必要になっても不思議ではなかったではないか。
この問題に関しては一応篝火やら焚火やらを大量に設置してその熱気を利用すれば何とかなりそうな気がするが、同時に下手に炎の熱気で炙ったら茹で卵になってしまいそうな不安もある。
しかし他にどうすることも……と思ったのだがそこは技術畑のハンスさんと観察力に優れるソフィアが相談して、エアコンの台数を増やした上で送風部分に近づけることで何とかちょうどよい温度に調整できるのではないかとのアイディアを出してくれた。
他に良い案も思い浮かびそうもないので取りあえずソレを試そうと必要な材料と設備が揃っている緑のオベリスクまで行ってもらうことにした。
そのついでに移動拠点の背中にしか設置していなかった冷蔵庫をちらに設置する分も作っておくことにした。
もちろんそれはワイバーンミルクを補完するためであり、それまでは代用品として手元の資材でも作れる食料保存庫を作りその中に食料保存塩と一緒に詰め込んでおくことにするのだった。
今回名前が出た動物
ファイアワイバーン(ワイバーン)
ライトニングワイバーン(ワイバーン)
ポイズンワイバーン(ワイバーン)
ギガノトサウルス
デスワーム(サンドワーム)
ロックエレメンタル(ゴーレム)
ダエオドン(豚)
ユウティラヌス(ユウキィ君)
アルゲンダヴィス(アルケン)