八百十八頁目
やはり前に思っていた通り、ハンスさんもまた薄々俺と別れるのに思うところがあるようだ。
尤もキャシー達とは事情が少し異なるようで、ARKについて詳しいからこそオベリスクの守護者が恐ろしい存在であることもわかっており、このままだと一人でオベリスクの守護者に挑みかねない俺の身を危惧しているようだ。
だからせめてTEKレプリケーターが完成するのを待って今まで以上に装備を充実させた後で挑んだらどうかと言うのだ。
実際に設計図で防具を固めようとしている俺としては、確かにTEKレプリケーターでハンスさんが未来道具を作って色々と戦力を補強してくれるというのは魅力的な提案に思われた。
またそれだけにとどまらず、更にハンスさんはARKに関してここで調べられるだけ調べ尽くした後ならば俺の旅に同行しても良いとまで言ってくれた。
……熾烈を極めるであろうオベリスクの守護者との戦いもそうだが、次のARKに辿り着いたとしてもまた一からやり直すことになるわけで、それを全て一人でやりきるのは余りにも過酷だ。
そう考えればもしハンスさんが一緒に来てくれるのならどれほど頼もしい事だろう。
本当にありがたい提案だった……だけど俺は素直に頷くことはできなかった。
ARK攻略が遅れればバグの修正も遅れるわけで、少し前に誤認しただけかもしれないがオベリスクの妙な反応も気になる身としては皆に余計なトラブルが舞い込まないよう一刻も早く攻略を済ませてしまいたかったのだ。
それにもう一つ気がかりな点もあり、言うべきか迷ったがここまで俺を心配して気遣ってくれているハンスさんのことを思えば聞いておくべきだと思った。
だからこそ俺は本当に付いてきていいのかと……キャシー達を置いて行くことになっても大丈夫なのか尋ねた。
……今まで俺は、いや多分他の皆もトライブの空気が壊れるのを無意識のうちに避けようとして俺とフローラ以外の恋愛事情は話題にしない暗黙の了解のようなものが出来つつあった。
そういう事情もあってか突然の俺の問いかけにハンスさんは目に見えて取り乱し始めた。
目を見開いたかと思うと露骨に視線をさ迷わせ、その顔は赤く火照り始めていた。
この調子だとビンゴのようだ……やはり薄々感じてはいたがハンスさんは女性陣のどちらかに想いを寄せているようだ。
そしてその相手は恐らく……いやそこは重要ではないし、向こうから相談されたわけでもないのに他人である俺が突っ込むべきではないだろう。
要するに俺が言いたいのはハンスさんには好意を向けている女性が居るのに、それを置いて俺なんかに付き合わせるのは悪いのではということだ。
暫くの間取り乱していたハンスさんであるがある程度して落ち着いてくると軽く咳払いしつつ、自分の個人的な感情よりもARK全体の修正をして回る俺に付き合う方が重要だと呟いた。
……だけどそれは間違っている、だって俺がARKを修正して回っている理由は他でもない愛するフローラと再開するためであり、つまりは自分の恋愛事情のためなのだ。
自分の想い人を救うための旅にハンスさんの想い人を諦めさせて付き合わせるのは余りにも自分勝手すぎる……少なくとも俺はそう感じてしまう。
何より愛する人と一緒に居る幸せを誰よりも知っている俺としてはARKの修正なんかより、そっちの方がずっと大事なことだとすら思うのだ。
だからこそ俺はハンスさんに自分の気持ちに正直になるよう告げて、俺は一人で大丈夫だからここに残ってあの二人のサポートをしてあげて欲しいと頼むのだった。
……本当はものすごぉく一緒に来てほしいんだけどねっ!!
だってまた一から木を殴って藁を紡ぎつつ石を拾って……何て作業を一人で繰り返すのかと思ったらもう……もう…………はぁぁぁ……