八百三十三頁目
拠点へと戻る道中も俺は妙な不安がぬぐい切れず頭を悩ませ続けていた。
それが表情に出ていたようでキャシーは心配するように何度も声を掛けてくる。
けれども俺はキャシーにまで余計な心労を背負わせたくなかった。
何よりこの不安が自分の勝手な思い込みではと言う疑念を抱いていたこともあって、結局何でもないと答えることしかできなかった。
しかし口先ではどう言い繕うとも内心の不安からくる態度はそう簡単に変えられない。
お陰でキャシーも俺の言い分に納得していないようであったが、それでも気を使ってかそれ以上追求してはこなかった。
代わりに少しでも気がまぎれるようにとばかりに雑談めいた話題を振ってくる。
まず先ほどシャルル少年が乗っていたTEKティラノについて、改めてその外見を眺めてみたけれどワイバーンにも劣らぬ格好良さがありますねと見た目についての意見を口にしてくる。
確かに思い返すまでも無くメタリックに輝くTEKティラノが魅力的な外観をしているのは明白でありキャシーの言葉に頷いて見せる。
するとキャシーは少し早口になりながら、番を見つけて数を増やして軍団を作りトライブの皆で並んで荒野を駆け抜けたら最高に気持ちいいと思いませんかと続けて同意を求めてくる。
今度は少しだけ頭の中でその光景をイメージしてみるが、横並びのTEKティラノ軍団がこの砂漠の強い日差しを反射しながら砂煙を巻き上げながら滑走していく姿は傍から見たらまるで映画のワンシーンのように映えることだろう。
だからこれもまた素直に頷くとキャシーは更に身を乗り出して来て、もちろん今育てているワイバーン軍団でも同じように皆で空を舞ってみたいですねとも言ってくる。
……ああ、それもまた凄く気持ちよくてとても楽しい時間になるだろうな。
考えるだけで少しだけ気持ちが明るくなり思わず軽く笑いを零しそうになる。
そんな俺を見てキャシーは、どこか安堵したような様子で軽く息を吐くとニコリと笑顔を浮かべるのであった。
……俺がそんなことができるほど長い間このARKに残ってはいないと知っているはずなのそんなことを言う辺り、やっぱり一時的でも気を紛らわせて悩みを忘れられるようにしてくれたんだろうな。
キャシーの心遣いはありがたい限りであり、実際に違う話をしているせいで余計なことを考えずに済むためか不安な気持ちも少しは収まってきた。
……しかしそこでキャシーが更なる話題として昨夜のハンスさんと何をしていたのか尋ねてきたから今度は一転して困ってしまうのであった。
今回名前が出た動物
TEKティラノサウルス
ファイアワイバーン
ライトニングワイバーン
ポイズンワイバーン