八百三十四頁江
ハンスさんと昨夜話した内容はキャシー達への想いも絡むものであり、おいそれと話せる事ではない。
だからこそ適当に誤魔化してしまいたいところであったが、先ほどと違って俺の態度が深刻そうに見えなかったせいか今度は深く追求しようとしてくる。
あんな夜更けまで私たち抜きで何をしていたのか、或いは私達に言えないことでもしていたのかと問うキャシーの言葉に少しドキッとする。
……意外と鋭いというかなんというか、これが女の感と言う奴なのだろうか?
そんなどうでもいいことを頭の片隅で思いながら、俺は仕方なくハンスさんとはオベリスクの守護者へ挑むタイミングについて相談していたのだと告げることにした。
これも決して嘘ではない、というか結果的にハンスさんの気持ちに言及することになっただけで主題はこっちであったはずだ。
それでも俺の答え方が不自然だったのかキャシーは疑る様な眼差しを向けながら本当デスカ?と重ねて尋ねてくる。
しかし事実ではあるのでコクコクと頷いて見せるとようやく納得してくれたのか軽くため息をつくと、こちらから視線を外して前へ向き直る。
余計なことを言わずに追及を免れることができたようでほっとする俺であったが、少ししたところで再びキャシーが……どこか遠慮がちな素振りを見せながら問いかけてくる。
もしかしてハンスさんと一緒にオベリスクの守護者へ挑もうとしているのですか、と。
またしてもある意味で鋭い指摘をされて再びドキッとするが、そんな俺の反応を見てキャシーはやっぱりそうなんですねと静かに小さく呟いた。
まあ実際にはハンスさんにそう提案されたのを俺が断ったので微妙に間違っているのだが、俺がそう告げる前にキャシーの方が意を決した様子で口を開いた。
曰く、オベリスクの守護者との戦いに人手が必要ならば動物の扱いに慣れている自分の方が良いから代わりに自分が行きますと言うのだ。
まさかあれだけここの動物集めに執着していたキャシーがそんなことを言い出すとは思わなくて驚く俺であったが、続けて彼女が話したところによると少し前から考えていたことのようだ。
どうやらキャシーもまたハンスさんと同じく大事な仲間であり命の恩人でもある俺を一人で危険なところへ送り出すことに思うところがあったようだ。
……ああそうか、最初の問いかけはともかく今回ハンスさんとの話し合いの内容を大まかに当てられたのは自分でも同じ提案をしようと思っていたからなのか。
半ば早くフローラと再会したい一心で動いている自分勝手な俺に、ハンスさんだけじゃなくてキャシーまでこう言ってくれるだなんて……つくづく俺は良い仲間に恵まれたんだなぁ。