八百三十七頁目
俺を見捨てるのではなく役割分担するだけだとわかってほしい一心での言葉をキャシーは最終的に受け入れてくれたようであった。
ただ最後にやっぱりハンスさんと同じように一人で行くのが不安になったらいつでも相談してほしいと言ってくれた。
もちろん否定する必要もないので頷いて見せたところでようやくキャシーは納得したように笑顔を見せた……かと思えば自分の言葉で遅れて気が付いたように、一人でということは結局ハンスさんもここに残るのかと尋ねてくる。
そういえばハンスさんがどうするかまでは伝えていなかったことを思い出し、改めて昨夜の話し合いの結果彼もここに残る予定でいることを告げた。
するとキャシーは再び俺を心配そうに見つめ……ながらも反面どこか安堵した様子で静かにそうですかと呟いていた。
それはまるでハンスさんがここに残ってくれることを喜んでいるように見えた。
……思い返してみればこの話し合いの最初にキャシーが言ったのは動物の扱いに慣れている自分がハンスさんの代わりに俺に付いていくということだったっけ。
もしかしてこれって俺の身を案じているのも嘘ではないだろうが、それ以上にハンスさんに危険な真似をさせたくないからこその提案だったのか?
だとするとそれはキャシーにとってハンスさんが大事な存在だからとか或いは逆に親しいソフィアから秘密の相談としてハンスさんへの想いを聞いており二人を一緒に居させるためとか……いやいや単純に動物の扱いに関して頼りない部分も見ているだけに仲間として心配していたからか。
キャシーの微妙な反応が気になってついつい色々と考えてしまうが、この手の微妙な問題は第三者である俺が余計な突っ込みを入れない方が良いだろう。
……いや本当にそうか? 同じような状況だったハンスさんの時は軽く突っ込んだ程度だけれど、それが少しだけど良い方向に作用した気がする。
考えてみれば暗黙の了解的にトライブ内で恋愛事情を表に出すのは法度みたいになっていたけれど、むしろ俺としては恋愛などを含めた自分の事情も大事にしてほしいと思っている。
しかしこのままだと下手にトライブ運営が上手く行っていることもあって、誰かが突っ込まない限りこの状況のまま固定されてしまいかねない。
そしてこの手のデリケートな問題に首を突っ込めるのは、この後でここから居なくなる俺こそが適任なのかもしれない。
……まあ逆に居なくなる俺が勝手な真似をして残されたトライブの空気が悪くなるのも困るだろうけれど、個人個人に相談という形で話を振る分には問題ない……よな?