ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第851話

八百三十八頁目

 

 変に悩んでいたことに加えて安全な空を移動中だったこともあり、少し気が緩んでいたのかもしれない。

 しかしまさかモスラの同種が鱗粉をまき散らしながら急上昇してくるだなんて。

 真下はアルケンの身体で死角になっていることもあって、すれ違う寸前まで気づくことができなかった。

 

 咄嗟によけようとしたが僅かに鱗粉を被ってしまった。

 しかもそこへモスラの同種を狙ったと思わしき刺トカゲの針が地上が飛んできて、回避しきれず何発か食らってしまう。

 この針には微妙に麻酔効果があったはずで、スタミナを消費させる鱗粉の効果と合わさりアルケンの動きが目に見えて鈍くなっていく。

 

 それでも本来のアルケンのスタミナならばこのまま強行することも不可能ではなかっただろう。

 ただ今回は慌ててオベリスクの様子を見に行きそのままろくに休憩も入れずに帰ろうとしていたこともあって、後どれぐらいアルケンのスタミナが持つのか不安になる。

 こんな不安を抱えて強引に移動するのは得策ではないと判断し近場で安全に休めそうな場所を探したところ、縦に大きくそびえる巨大な岩山の途中に着地できそうな足場を見つけた。

 

 あの岩山の頂上までは厳しいだろうが足場までならいけると判断し、キャシーと共にそこへ一旦避難しアルケンのスタミナが回復するまで休憩することにした。

 もう少しで拠点だったというのにまさかこんな形で足止めを食う羽目になるとは思わなかった。

 ……だけどキャシーと二人きりの時間が増えた今は、さっき考えていた個人的な相談を振るのにちょうどいい機会かもしれない。

 

 尤もそうは思っても元々恋愛関係の話に疎かった俺はこういう時にどう切り出せばいいかでまた迷ってしまう。

 そうしているうちにキャシーの方が沈黙に耐えかねたのか、先ほどの話の続きとばかりにハンスさんも置いて一人で行くだなんて本当に大丈夫なんですかと尋ねてくる。

 その言い方からしてどうやらキャシーもまた俺と同じくハンスさんの事を頼りになる存在だと認識しているようだ。

 

 だからこそあえて俺は逆にキャシーへ、そっちこそハンスさんが居なくなっても大丈夫なのかと尋ね返してみるのだった。

 すると意外にもキャシーは即座に首を横に振って見せたではないか。

 やっぱりキャシーはハンスさんの事を……なんて思いかけたところで、俺もハンスさんも居なくなったらクラフト関係の専門家が居なくなって大変なことになると大げさに騒ぎ立てるのであった。

 

 ……確かに考えてみたらクラフト系は俺とハンスさんが中心になってて助手としては主にルゥちゃんが頑張ってたぐらいだ。

 まさかルゥちゃんにクラフトを任せるわけにも行かないわけで……そりゃあハンスさんが居なくなったら残された仲間が困るとキャシーが慌てるわけだ。

 尤も左手首の鉱石の使い方や各種設備の使い方も彼女達には教えてあるし最低限触ったこともあるはずだし、そこまで悲観的にならなくてもいいと思うのだが……?

 

 そんな俺の疑問の答えとばかりに更にキャシーは、少なくともハンスさんには仮にソフィアやルゥちゃん達がここで生涯を過ごすことになっても安全かつ快適な毎日を送れるよう未来道具や設備を整えるまで残っていて欲しいという。

 どうやらキャシーはあのエレメントが生み出す未来道具に対して結構な期待を抱いているようで、それがハンスさんへの期待へも繋がっているようであった。

 ……まあ実際にTEKレプリケーターとか凄かったし、アレに匹敵する設備や武装をハンスさんが作ってくれれば盤石の体勢にはなるだろうな。

 

 そうなればルゥちゃんやシャルル少年のような幼子に始まり、更にはここで成立したカップルの間に出来た赤ちゃんを安全に育てる土壌にもなるではないか。

 それこそ俺とフローラが無事再開することが出来た時のことを考えたらむしろ余計にハンスさんにはここに残って頑張ってほしいとすら思ってしまう。

 キャシーもまた似たようなことを想定しているのか、自分はともかくソフィアに好きな人が出来た時のことを考えたらとどこか遠い目をしながら小さい声で呟いた。

 

 ……或いは無意識で呟いてしまっただけかもしれないキャシーの発言をいつもならばスルーしただろうが、今回はちょうどいい切欠だ……ここからちょっとだけ突っ込ませてもらうとしよう。




今回名前が出た動物

リマントリア(モスラの同種)
アルゲンダヴィス(アルケン)
モロクトカゲ(刺トカゲ)
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