八百四十六頁目
内心高鳴りそうな心臓を抑えながら超巨大な草食の背中に近づいたところ、思った通りゴソゴソと動き回るルゥちゃんの姿が目に入ってきた。
何故か探していたはずなのに見つかった時はドキッとしてしまい、少しだけ気持ちを落ち着けようと空中に留まったままルゥちゃんの動きを見守ることにした。
、たまに屋根のある死角になる場所を行き来するせいで何をしているか詳細ははっきりしないが、どうも背中に設置されている収容箱や設備を順番に巡っているようだ。
いつも通りクラフト作業をしようとして、そのために素材を探して回っているようにも見える……のだが、どうにもそれにしては動きが落ち着きなさすぎる気がする。
何より作業机や旋盤の前に立っても何かを作ろうとするわけでもなく、そこに常備されている素材を確認したらすぐに去ってしまうところに違和感を強く覚えてしまうのだ。
だからこそやっぱりちゃんと話を聞かなければとアルケンで近づいていったところ、羽ばたきの音で向こうがこちらに気づき振り返ってきた。
いつも通りニコニコと笑顔を浮かべて手を振ってくれている、のにどうしてこんなにも心臓がバクバクと高鳴り始めるのだろうか?
そんな不安な気持ちを抱得ていることに気づかれないよう何とか俺も笑顔を作って傍に降り立ち、まずは何をしていたのか聞いてみることにした。
するとルゥちゃんはどこに持っていたのかメモ帳を取り出すと、もくろく?を作っていたとちょっと変な発音で答えてくれた。
その言い方は大人から聞いた難しい言葉をそのままオウム返しにしている子供のようであり、誰かに頼まれてこの仕事をしているのだろうと予想できた。
……なるほど、確かに在庫数の確認をして回っているのならあの動きにも納得がいく。
そして希少素材である黒真珠やエレメントを使って今後は更にコストのかかるクラフト作業に取り掛かるであろうハンスさん辺りが素材数を厳密に把握しようと目録を作ろうと考えて、しかしエレメントダストの精製を含めたオベリスク操作で手が離せないためにルゥちゃんに頼むことも十分にあり得る話だ。
……うん、こうして直接話してみても変なところは無いしやっぱり俺が勝手に関連付けて思い込んでいただけなのかな?
ルゥちゃんの純朴な話し方が心をほぐすのか、先ほどまであれほど強く根付いていた深刻な不安があっさりと解けていくのを感じる。
お陰でかこれまで相当肩が凝っていたようで、緊張が解れるのと同時に疲れたようにため息を漏らしてしまったほどだ。
そんな俺を見てルゥちゃんはニコニコ笑いながら近くにあった椅子を引き寄せその上に立ったかと思うと、俺を労わるように頭を優しく撫で始めた。
急にどうしたのかとビクッとするが、そのままルゥちゃんは更に子守唄……のような優しいメロディーを口ずさみ始めた。
その手つきが余りにも優しすぎるからか何故か穏やかな温もりまで感じる様な気がして、そこに子守唄に似たメロディーが心地よい振動となって頭の中に直接染み込むように伝わってきて……夢見心地とはこのことだろうか?
お陰でかずっと今日一日感情が激しく上下していた疲れがドッとあふれ出したようで何だか妙に眠くなってきてしまう。
……考えてみればモーリツさんにも無茶せず落ち着いて地に足の付いた行動をすべきだと諭されたばかりだし、こういう時は軽く昼寝でもして休息を入れた方が良いのかもしれない。
そう思い俺は一旦ルゥちゃんと別れて自分の寝室へ向かいそのままベッドに入り目を閉じると、先ほどの心地よさから湧き出た睡魔に身をゆだねるのだった。
……だけどさっきのルゥちゃん、あんな優しくいたわってくれる様はまるで女神様みたいで……案外大人になったら神秘的な雰囲気を纏ってライア氏みたいになれるんじゃないかな?
何せあんな心地よい思いは生まれてこの方、経験した覚えは……覚えが……覚えが……ある、ぞ俺……あの心地良い、メロディと、温もり……どこか、で…………?
今回名前が出た動物
ティタノサウルス(超巨大な草食)
アルゲンダヴィス(アルケン)