八百五十頁目
更に話を続けようとするソフィアであったが、はっと何かを思い出したかのように食料保管庫からミルクを取り出してワイバーンの幼体に飲ませ始めた。
どうも生まれたばかりのワイバーンはミルクと言う液体を餌にしていることもあってか、誰かが飲ませてあげないといけないようだ。
またこれは他の動物の場合もそうなのだが、お腹が減っても特に著しい反応を見せないため、こうして定期的にミルクを与えるようにしているらしい。、
ある程度育てば他の動物の幼体と同じく予め餌を渡しておけば勝手に食事を済ませるようになるだろうが、逆に言うとそれまではそうそう目を離すわけにはいかないというわけだ。
……まあ間違いなくワイバーンが優秀な生き物だからこそ使えるまでに手間がかかるようARKの設計者が意図して仕組んだことだろう。
相変わらずの底意地の悪さのようなものを感じさせる生態に面倒臭さを覚えそうになる俺に対して、実際にミルクを飲ませて回っているソフィアはより一層自分の手で育てていると実感できるためかむしろ楽しそうですらあった。
もちろんソフィアにだけ任せるのは悪いので俺もまた協力して手近なワイバーンにミルクを飲ませていく。
しかし飲み終えたワイバーンがゲップをするように火の粉を放ったり毒液を零したりしてきて、その度にドキッとしてしまう。
既に慣れているソフィアはそんな俺を見てクスクスと小さく笑いながら、体色ごとにファイアワイバーン、ライトニングワイバーン、ポイズンワイバーンと名前を付けた子それぞれの扱い方を教えてくれた。
そしてそのまま再びワイバーンの話をし始めようとするソフィアであったが、このまま彼女のペースに付き合っていたらそれだけで一日が終わってしまいそうだ。
だから強引に割り込む形で、俺はソフィアに対しても何か今のうちに話しておきたい事とか相談しておきたいことはないか尋ねてみた。
最初は突然何を言い出すのかとばかりにキョトンと首をかしげてみせたソフィアであったが、続けて俺がキャシーにも言ったようにもうすぐ別れる皆の事が心残りであるから他の人に言えない悩みが無いか聞いてみたのだと伝える。
するとソフィアは少しばかり悩ましげな顔をしたかと思うと、むしろ俺の方こそ何か悩みとか不安とか抱えているんじゃないですかと尋ね返してきた。
一体どうしてそんな……と疑問に思う俺に対してソフィアはキャシーやモーリツさんが心配していたと告げてくる。
一瞬驚いたものの更に話を聞いてみると、どうも俺がオベリスクの件で精神的に動揺している将を見せていたと二人から聞いていたらしい。
特にキャシーはオベリスクからの帰り道で俺が不安そうな顔をしていたのもずっと見ていたために結構深刻そうにソフィアに伝えたようだ。
だからこそソフィアは俺に対して少しでも気分転換になればと思ってあれだけ話しかけていた……面もあるそうだ。
……まあ一度話し始めたらついつい興奮して楽しくなってしまい半ば忘れかけていたようだが、とにかくソフィアもソフィアなりに俺の事を気遣ってくれていたようだ。
そしてソフィアは何か言い辛い悩みがあるのかもしれないけれど自分達は仲間なのだから、残り少ないとはいえ一緒に居る間は楽しい事だけじゃなくて辛いことも分かち合って、そして協力して乗り越えていきましょうと身を乗り出しながら訴えかけてくる。
……その気持ち自体は物凄くありがたいのだが、正直もう半分ぐらい不安は解消されていたりするのだ。
確かにまだオベリスクがどうなっているのかについては気になっているが、正直俺が一番恐れていたのはルゥちゃんに何かが起きているかもしれないという点であり、それも先ほどの会話である程度払しょくできてしまったのだから…………うん、もう大丈夫のはずだから今更ソフィアに言っても余計な心労を掛けるだけ、のはずなんだ。
今回名前が出た動物
ファイアワイバーン
ライトニングワイバーン
ポイズンワイバーン