八百五十一頁目
改めてソフィアには俺の方はもう大丈夫だからと告げるが、キャシーにモーリツさんと二人も心配していたこともあって本当に大丈夫なのかと念を押すように何度も尋ねてくる。
そんなソフィアを安心させるように頷きながらも俺は実際に顔を合わせていたキャシーはともかくモーリツさんからいつの間に話を聞いていたのかが少しだけ気になっていた。
確かに時間的には余裕があるだろうがソフィアはここを離れられないし、かといってモーリツさんがここへやってくるとも思えない。
もちろん無線機を使えば話は別だが、とそこまで考えたところで少し前にモーリツさんと俺のトライブの誰かが連絡を取り合っているのではと疑惑を抱いたことを思い出した。
てっきり向こうのトライブから来たシャルル少年の仕業だと思い込んでいたが、果たして無線で連絡を取ったのかと尋ねてみるとソフィアはあっさりと頷いてみせた。
それも今回だけでなく結構前から頻繁にモーリツさんと連絡を取り合っていたようだ。
尤もソフィアはスパイのような真似をしていたわけではなく、単純にモーリツさんを正式な仲間になって貰おうとトライブに勧誘をしていただけとのことだ。
真剣な様子でモーリツさんも信じられる人に違いないと語る姿は全く嘘を言っているようには見えなかった。
だから本当にソフィアとしては俺達の不利益になる行動をしたつもりはないのだろう。
だけどあのやり手なモーリツさんの事だからこんなある意味で無邪気すぎるソフィアが相手ならば勧誘を交わしがてら、例えば世間話の体でもってさりげなくこちらの近況情報を収集するのは難しくなかったはずだ。
……今にして思えばモーリツさんがわざわざ自分の時間を割いてまで一緒に洞窟へ付いて来て、更にはリーダーである俺だけでも周りを疑うことを考えてトライブが宜しくない方向へ向かなわいよう厳しい指摘をしてきたのは、この純粋すぎるソフィアとのやり取りで余計に心配になっていたからだと思えば物凄く納得できる気がするぞ。
やっぱり何だかんだであの人はソフィアみたいな善人が不幸になるのを望んでいないようだと再確認できて、この調子ならば俺が居なくなった後で厄介なトラブルが起ころうとも彼も力になってくれそうで安心だと思えた。
だからソフィアに俺もモーリツさんの事は信用できると想っていることを伝え……つつも念のため、無線で他のトライブの人と連絡を取る際は詐欺にあう可能性も考えて事前にでも後ででもいいから仲間に周知するようお願いしておいた。
……とそこでふとあることが心配になり、もしかしてモーリツさん以外のトライブとも秘密裏に連絡を取っていないか尋ねてみたところ、取ろうとはしたけれどまだ他のトライブの人は無線を持っていないとモーリツさんに言われて諦めたと言われて少しだけ肝が冷えた。
誰かを信じたいソフィアにしてみれば、前にモーリツさんに語ったように理想の社会を築くべく……或いは単純に各地に隠されている日記やまだ見ぬ珍しい動物などの情報を求めてもっと多くの人とも交流を持っていこうと考えているのかもしれない。
そんなソフィアの考えは間違っているとは言い難いものなのかもしれないが、前の島で実際に女性相手に邪な念をみせた輩を見ている身としては流石にもう少し警戒心を持ってもらいたいと強く思ってしまう。
……これも俺の想定していた方向とは違うけれど放置して置いたら問題になりかねない一面だったわけで、居なくなる前に話をしておいてよかったと改めて思うのだった。