ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第872話

八百五十九頁目

 

 ようやく突然の奇行に納得できた俺の前でソフィアは、うぅぅ……と呻き声のようなものを漏らし続けていた。

 多分ソフィアの方も自分が勘違いの果てに自爆しただけだと気付いて今更ながらにそのことを悔やんでいるのだろう。

 そうして再び蚊の鳴くようなか細い声で申し訳なさそうに、勘違いして酷いことを言ってすみませんと謝罪を口にした。

 

 まあ俺の方も誤解を招きそうな発言をした……とも言い難い気がするが、とにかく気にしなくていいと告げると指の隙間からだがようやくこっちに視線を向けてくれた。

 恥ずかしさの余り涙も流していたのか潤んでいる眼差しを向けながらソフィアは、どうかこのことはご内密にと何度も頭を下げながら懇願してくる。

 もちろん相談事の内容を他の誰にも漏らす気はなかったため頷いて見せると、大きく息を吐きながら手を下ろしてくれた。

 

 尤も涙目だし思いっきり羞恥で顔が真っ赤に染まったままであった。

 ソフィアの気持ちが落ち着くまでは新たな刺激を与えるのは悪い気がするし、少しの間このままそっとしておこう。

 ……そう思ったのだがソフィアの方が沈黙に耐えられないようで、何も言っていないのに勝手にぼそぼそと言い訳するように喋り始めた。

 

 曰く、洞察力もある上にフローラと言う恋人もいた俺に対して恋愛初心者である自分ごときの秘め事はあっさり見抜かれているのではとソフィアは結構前から内心ドキドキしていたらしい。

 ぶっちゃけ俺はソフィアほど観察力があるとは思えないし恋愛もフローラが初めてな上に彼女との関係も結構グダグダだったのにそんなのを見抜けるはずがないのだが、どうやらソフィアは俺の能力をかなり買い被っているようだ。

 そんな俺の思いに気づくことなくソフィアは更に言葉を続けていく。

 

 これが異性に対する恋愛感情ならば或いは逆に相談することも考えれたかもしれないけれど、相手が同性のキャシーなだけに知られたら不味いと余計に抱え込んでしまっていたとのことだ。

 キャシーの時に似たような状況を経験しているだけに、彼女達の居た時代の価値観なりを思い出せばこの思いつめ方に関してはすんなり納得することができた。

 だからソフィアにも未来において変化した価値観と技術にこのARKと言う場所の特殊性からそこまで思い悩む必要はないと告げて少しでも安心させて……あげたいのだが、恥ずかしさを吹きとばさんとばかりにドンドン早口でまくし立ててくるソフィアに口を挟む暇がない。

 

 そのままソフィアはヤケクソ気味に感情を高ぶらせると、だけど初対面で物語みたいに馬に乗って格好良く登場した上で命も助けてくれて、その後も親身になって接してくれたら誰だって心奪われるに決まってるじゃないですかと怒ったように叫び始めた。

 そしてこちらをジロっと睨みつけると、もうここまで聞かれた以上は一蓮托生ですとか共犯者ですねとか訳の分からないことを言いながら、こうなった以上は仕方ないし俺がこのARKを去るまでの間はキャシーへの想い語りだとか自分の想いに折り合いをつける相談だとかに逐一付き合ってもらいますからねと宣言されてしまった。

 ……いやまあ相談に乗るのは良いんだけども、毎回このテンションで捲し立てられるのは勘弁してもらいたいところだなぁ。




次の話で相談パートは終わり、後二つの山場を書いたらスコーチドアース編は終了する……予定です。
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