ARK とある青年の日誌   作:車馬超

880 / 1041
第880話

八百六十八頁目

 

 フローラの伝えたい内容ははっきりと分からないが、それでも彼女が無意味な事をしているだなんて欠片も思わない。

 だからハンスさんにこのARKシステムについて改めて何が出来るのか尋ねてみるが、返ってきた答えは前と同じであった。

 オベリスクを通じての相互干渉などを除けば、エレメントの汚染が薄まった時に逞しく育った生命と共に地球へと帰還して残る汚染を浄化する機能ぐらいしかないと……そこまで言ったところでハンスさんは……いや俺達全員がほぼ同時に顔を見合わせた。

 

 ……エレメント汚染が強すぎる地球は浄化できないであろうARKシステムでも、或いは人一人を侵食する程度の汚染なら除去できるのではないか?

 同じことを考えたであろうハンスさんも悩ましい声を漏らしながらも、理論上は不可能ではないかもしれないと答えてくれた。

 またそのための操作も自分ならできると言ってくれて、先ほどとは一転して急に希望が見えてきた気がして俺達の顔は明るくなる。

 

 尤も絶対に出来るとは言えないし、そもそも向こうが抵抗するようだと厳しいから何とか昏睡させるなりして無力化した上でオベリスクのところまで連れていく必要があるようだ。

 つまりはルゥちゃんの身柄さえ確保できればいいわけで、結局はあの子がどこにいるのかの話に戻ってしまったが見つけさえすれば事態が好転するかもしれないと思うと精神的にはかなりマシになった。

 だからか気が流行るらしいキャシーなどは残るオベリスクを操作していないか確認するべきだと言い出し、それに対してソフィアが同意しつつわざわざ見に行かなくてもアルケンに乗って高いところまで飛行して見回せば使用されているオベリスクが異常発光しているわけだから一発でわかるのではとの案を出してくれる。

 

 実際にモーリツさんは発光現象の有無で遠くにある緑のオベリスクの異常を判断しているわけで、そしてこの拠点の上でも思いっきり飛び上がれば夜中でも煌々と輝いている三つのオベリスクを視認することはできるのもわかっている。

 ……つまり先ほどわざわざモーリツさんに連絡して緑のオベリスクの状況を確認してもらう必要はなかったことにもなるが、それに気づけなかった辺り余程動揺していたようだ。

 モーリツさんが無線で漏らしたため息の正体はそんな頭が回らない俺達に呆れたからかもしれないと今更ながら思いつつ、逆にこうして思い付けるようになったということは多少なりとも皆冷静さを取り戻せた証拠のようでもあった。

 

 俺もまたリーダーとしてこの状況に対処すべく皆にてきぱきと指示を出していくことにした。

 まずはキャシーとシャルル少年に交代しながら三つのオベリスクを監視してもらい異常があれば報告するように頼み、次いでハンスさんにはエレメント除去の作業に必要な物があるようならピックアップしていつでも取り掛かれるよう準備しておいてもらうようお願いした。

 またルゥちゃんの事が緊急とはいえそればっかりにかまけて今後の生活を台無しにするわけにも行かないのでソフィアにはワイバーンの幼体の面倒を含めた些事をしてもらうことにする。

 

 そして俺自身は他の皆からして欲しい事や新しい報告があり次第すぐに対処して動けるよう身構えながら必要になりそうな物品をクラフトして用意しておくことにした。

 ハンスさん曰く、エレメントに汚染されているとしたら段々と狂暴化していくことになり拘束しようにも暴れる可能性が高いため万が一にも陰惨な事態に悪化しないよう装備を充実させておいた方がいいと判断したからだ。

 ……本当はルゥちゃんを探しに行きたいところだけれど夜中の暗闇の中で探しに出かけても向こうが隠れるつもりならばどうしようもないため、明るくなるまではオベリスクを操作した時のように目立つ何かが無い限りはここで待機しておいてルゥちゃんが戻ってきた時に備えておいた方がいいはずだ。

 

 そんな考えの元、皆には他に何かあったり何か思いついたりしたら遠慮なく俺に連絡するように告げてから早速行動を開始して貰う。

 そうして各々自らの役割を熟すために動きだした皆と共に俺もまた動き出し、モーリツさんから貰った設計図を取り出して制作するものを選んでいく。

 ……まず防具は念のために全員分用意するとして、後は昏睡させるように麻酔関係のと……念のために少しだけデジャブを感じるあの時に使われた『アレ』も作っておくとしようかな?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。