ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第881話

八百六十九頁目

 

 一通りクラフトが終わったところで防具などを配るために皆の元へ行き、ついでに報告も聞いて回る。

 ただ余り状況は思わしくないようで、誰も良い意味での報告をしてくれなかった。

 ハンスさんはARKの機能にオベリスクで干渉するためにもエレメントが必要になりそうだがこの拠点には一つもないため用意できないでいる。

 

 もちろん金庫に入っている分を使えれば問題はないのだが、既にルゥちゃんの手が伸びている可能性を考えると安心はできない。

 確認に行くにしても夜中に一人で行動するのは危険だし、かといって俺と一緒に出向いたりしてその隙にエレメントの影響で狂暴化しているルゥちゃんが戻ってきたら大変だ。

 女性陣と子供のシャルル少年だけで傷つけないよう手加減しながらそんなルゥちゃんを取り押さえられるか分からないのだから。

 

 そのため金庫を見に行くわけにも行かない中でハンスさんは一応代わりにここにあるTEK牧場からエレメントダストを回収しておいてくれた。

 これらを全て加工すれば最低限の数は揃うかも、とのことで取りあえず一安心……するには余りにハンスさんの口調は自信なさげであった。

 まあそもそもしたこともないであろう作業をするために準備しているのだから仕方のない事でもあるのだが、この件に関してはハンスさんに頼るしかない身としては不安でしかない。

 

 続いてソフィアに会いに行くとこちらは特に変化のない光景が広がっていた。

 ただこんな状態が二日と続くようであればワイバーンの幼体に必要な餌であるワイバーンミルクが間違いなく足りなくなってしまうと不安そうに呟いた。

 回収しに行くにしてもワイバーンの谷にはやっぱり二人で行かないといけないわけで、幾ら将来的に必要なこととはいえ流石にルゥちゃんのトラブル解消と比べたら優先すべきことは決まっているため二人も人員を割くような真似は難しい。

 

 もちろんソフィアも言われるまでも無くルゥちゃんを優先する気でいるのだが、その上でこれまでの苦労を全部無駄にしないためにもまだ孵化していない卵はあえて孵化させない状態で待機させる方法が無いか考えているようだ。

 確かに孵化させなければ餌は必要にならないわけで、その着眼点は無かった俺は素直に感心するのだが問題はどうやって卵の状態をキープするかだ。

 冷蔵庫に入れて保管……しても保てるのは鮮度だけだろうし、そもそも結構な高温で孵化するワイバーンは冷気には弱い可能性が高い気がする。

 

 実際にワイバーンミルクは冷蔵庫で保管できなかったわけで……だとしても他にどうやって保管すればいいか全く思いつかない。

 そういう専用の設備でもあればいいのだが、とにかく今は早い段階でこんな状況が改善されるのを祈るしかないようだ。

 最後に三つのオベリスクを監視しているキャシーとシャルル少年の元へ向かうが、今のところどのオベリスクも異常な反応をしていないようであった。

 

 ただ待つだけの状況が余計に不安を募らせるのか二人は探しに行くべきではと再び口にしてくる。

 恐らくルゥちゃんが何をしているのか分からない状況もそうだが、それ以上にルゥちゃんが野生動物に襲われて命を落とすかもしれない事に対して不安を抱いているようだ。

 もちろん俺だってこんな夜中に抜け出したルゥちゃんの身を案じていないわけではない。

 

 ……だけど俺は皆と違って直接ルゥちゃんからの干渉をうけたから何となく今のルゥちゃんはその辺に居る並みの野生動物ではどうしようもない存在だとわかってしまう。

 仮に襲われても俺にしたようにして強引に相手の気持ちを宥めることだってできそうなのだから。

 また純粋に夜中に目的地も無く闇雲に出かけたりしたら俺達の方だって夜目の効く野生動物に翻弄される危険が高いのだ。

 

 それも含めて二人には辛いだろうけれど最低限の目星が付くまで監視を続けて欲しいと頼むと、シャルル少年の傍にいるオウ・ホウさんもリーダーである俺の判断だから従うべきだと言い含めてくれた。

 ……多分俺達の中で一緒に居た時間が最も長いであろうオウ・ホウさんこそが一番探しに行きたいだろうに、相変わらず冷静な判断ができる大人だ。

 本当はこういう人がリーダーになるべきだったのだと今更ながらに思うが、とにかく今回の件が終わるまでは頑張ってリーダーとして振舞おうと決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の傍を離れながら皆の状況が思わしくない状況を改善すべく頭を悩ませていた俺の耳に、キャシー達が慌てた様子で呼び止める声が届いてきた。

 反射的に頭を上げた俺の目に二人がある方向を指し示す仕草が見えてそちらに視線を向けたところ……小さいけれど確かに闇の中に浮かび上がる光源が揺らきながらこちらへと向かってくるではないか。

 それが松明を手に持った人が飛行生物の背中に乗って移動しているときの光景だとすぐに理解した俺は思わず身構えてしまう。

 

 あれがルゥちゃんなのか他の誰かなのかまだ遠くて見分けは付かないのだが、何故か俺は長年の経験からか警戒態勢に入るべきだと傍にいる二人だけでなく無線を通じて拠点に居る全員に声をかけるのであった。




今回名前が出た動物

ファイアワイバーン
ライトニングワイバーン
ポイズンワイバーン
アルゲンダヴィス
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