八百八十一頁目
ようやくルゥちゃんが目を覚ましつつあるが、反応は余り宜しくない。
当たり前だ……ここに来る前から信じていた事に裏切られ、大事な友達を失い、また大切な仲間だった俺達に酷いことをしたと思い込んでいるのだから。
幾ら俺達が気にしていないと言っても、多分カンガちゃんだってそんな風にルゥちゃんが落ち込むのを望んでやしないと言ってもあの子の顔にかつての皆を和ませてくれていた無邪気な笑みは戻らない
それでも特にシャルル少年は彼女への声掛けを辞めようとはしなかった。
彼もまた頭の中に響く声と言う神秘的な現象にある意味で裏切られたようなものであり、同じ仲間だと思っているのもしれない。
或いはかつて天の使いではないかと思っていたオウ・ホウさんの真実を受け入れるようになった今、もしかしたら神と言う存在を信じていた過去の自分にすら懐疑的になっていて、だからこそ似た物としてのルゥちゃんを放っておけないのかもしれない。
……余り俺達が声を掛け過ぎて余計に気を病まれても困るので、しばらくの間はルゥちゃんへの対応はシャルル少年に可能な限り任せることにしよう。
八百八十二頁目
暫く日記を掛けないでいた、というかやることが多い割に変化が殆どないからつい筆を執るのが遅れてしまった。
あれからそこそこ時間が経ったが、その間に着実に準備を進めたお陰で段々と俺達のトライブはかつての状況に戻りつつある。
メディカルブリューはまた十分な在庫ができたし、ゴーレム軍団も数が揃いつつあり、またワイバーンも遂に最初の子達が成熟しきった。
実際に乗って飛んでみた感想は素晴らしいの一言だった。
力強く空を飛び地に這う動物達を圧倒的なブレスで一掃し、ケツァ君にこそ及ばないがアルケン以上に多くの生き物を掴んで運搬できる力。
洞窟に入れないサイズを除けば完璧な生物と言っても過言ではなく、もしルゥちゃんの一件さえなければトライブ総出でドラゴン軍団を操り空を飛ぶ竜に乗るロマンと喜びに打ち震えることができたかもしれない。
尤も少しずつルゥちゃんも立ち直っていて、最近は弾に外に顔を出して俺達の行動を眺めて微笑みを浮かべていることもある。
ただその微笑みはやっぱりかつてとは少し違ってどこか哀愁を漂わせる、ある意味で大人染みたものになってしまっていた。
もちろん片腕を失った傷痕が痛々しく残ったままなのも相まって、近寄りがたく感じさせる雰囲気を纏っているように見えるときもある。
それでもまだ微笑みを浮かべられるようになっただけマシというものだ……一時期のカンガちゃんの亡くなった後に立てたお墓の前にほぼ無表情で立ち尽くしていた頃などはどうしていいかわからなかったぐらいだ。
シャルル少年とソフィアがルゥちゃんの元々知っているやり方とは違う祈りの言葉とか舞などを知識を総動員して教えたり、実践したりしたのが良かったのかもしれない。
……だからまあ当面において一番の問題はその見た目や纏った雰囲気を利用してルゥちゃんのように辛い思いをするものを二度と出さないために、なんていうスローガンの元でルゥちゃんをかつてのライア氏のようにこの砂漠における人間をまとめるための精神的要として使えないか目論んでいるモーリツさんなのかもしれない。
今回名前が出た動物
ロックエレメンタル(ゴーレム)
ファイアワイバーン
ライトニングワイバーン
ポイズンワイバーン
アルゲンダヴィス(アルケン)
ケツァコアトルス(ケツァ君)