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前にフェニックスの灰が落ちた辺りに作っておいた建物はしっかりと檻の役割を果たしてくれていた。
内部に閉じ込められたフェニックスは窮屈そうにしながらも近づいてきたこちらに気づくこともなく優雅に旋回を繰り返していた。
こうなると後は捕獲作業に取り掛かればいいわけだが果たして本当に炎を食べてくれるだろうか?
少しばかり心配だったがここで躊躇しても仕方ないし、駄目なら新しい方法を考えればいいだけだ。
だからドア枠の隙間という向こうが抜け出れない隙間を利用して赤いワイバーンの炎を浴びせてやると、思った通り吸い込まれるように口の中にのみ込まれていった。
そして食べさせれば食べさせるほど目に見えてこちらに懐いて来て……最終的には何の問題もなく仲間になってくれた。
あまりにあっけなく終わってしまい何やら味気ないくらいだが、事前準備や天気の制限などの苦労を考えれば他のワイバーンやゴーレムといった空想生物仲間に引けを取らない面倒さは十分あったともいえる。
それだけにゴーレム達と同様以上に便利な能力を持っていたりしてくれると助かるのだが……
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フェニックスの能力は便利さではかなりの物であった。
まずワイバーンと一緒でサドル無しで乗ることができる。
これに関しては防御力が下がる意味もあって一長一短ではあるし、捕まえてすぐに便利に乗り回せる利点も、そんなポンポン見つけて捕獲できる存在でもないのでむしろ残念なところかもしれない。
何よりもあの燃える身体にサドル無しで跨るのは地味に勇気が必要であったりする。
尤も身体の部位ごとの温度をある程度調整できる様で、その特徴のお陰か天然の溶鉱炉&焚火のように持たせておくだけで金属鉱石や生肉をこんがりと焼いてインゴットやこんがり肉にしてくれる。
流石に科学的な設備よりは生産速度が落ちるが、移動しながらこんがり肉などを作っておいてくれるのは意外とありがたい。
またガソリンなんかも生成してくれるがこれを工業炉で作るとそのまま燃料にも流用されてしまうこともあるのだが、こっちだとそんなこともないため純粋に数を集める分には便利……かもしれない。
代わりに木材を持たせておいても木炭にしてくれないのはちょっと残念だが、まあ溶かしたり焦がしたり精製したりと違って直接火をつけるような真似をしたら火事になりかねないからあえてそうしているのかもしれない。
実際にフェニックスが攻撃する場合は相手の身体に火をつけて燃やしてくれるぐらいだ。
更には遠距離に向かって炎の塊を吐きつけることもでき、こちらは着弾点が燃え続ける上にどうも炎の塊をそのまま飛ばしているためかワイバーンのブレスとは違ってこちらの攻撃と認識されないようで野生の動物に当てても敵対行動をとらないのだ。
尤も流石に強すぎるからか威力はワイバーンのブレスに比べると落ちる感じなのだが、燃えるところがなさそうなゴーレムの身体すら燃焼させることができるのにはちょっと驚いた。
他にも足で鉱石を砕くことができるので採掘も便利そうであるが、逆に器用に使えないのか動物を掴むことは出来なそうであった。
それどころか着地も苦手なのか幾ら指示しても空中に留まったままであり、そのせいで乗るために地上付近まで呼び寄せても、上手く指示出ししないと地面を滑るように移動してしまうので面倒ではある。
ただそこまで飛行に特化しているお陰なのか、一方行に集中して飛ぶように指示を出すとジェット機の様に加速して高速で動くことができるようになる。
こうなると旋回性能こそ落ちるが、単独での移動手段としてはある意味で最適な存在かもしれない。
総合すると居たら確かに他で替えの効かない能力を幾つも持っている便利な生き物ではあるが、絶対に必須な能力がある存在とも言い切れない器用貧乏な奴……といったところであろうか。
……もちろん俺達が一番期待していた再生能力などは持っていないようで、残念だけどルゥちゃんの治療には役立たなかった。
ただ燃える鳥という存在がルゥちゃんの故郷の何かを思い出させたのか、ほんの少しだけ嬉しそうにしながら片腕になってから初めて動物の背中に乗る気を見せてくれた。
ソレだけで捕獲した甲斐は十分にあったと言えるだろう……まあルゥちゃんが元気になって喜ぶ余裕ができたのかソフィアは楽しそうに観察しているし、ソフィアとシャルル少年はどっちの方が早く飛べるかタイムアタック紛いなことをしているので、トライブの殆どの面々が好意的に受け止めているのは間違いないだろう。
今回名前が出た動物
フェニックス
ファイアワイバーン(赤いワイバーン)
ロックエレメンタル(ゴーレム)