八百八十七頁目
思った以上に守護者との戦いへの備えに時間がかかってしまった。
これもそれも途中でワイバーンの戦闘能力に偏りが大きいことに気が付いたせいだ。
どの個体も基本的な強さは変わらないのだがブレスの威力には大きな差があった。
比較的当てやすいけれど威力がそこそこな炎のブレス、威力は一番弱いがそれなり連射が聞く上に遠距離まで狙撃しやすい毒のブレス。
それらに対して雷のブレスは直射レーザー状であり遠くまで狙えるが非常に細いため当てる範囲が狭い上にちょっとした首の動きでも大きく目的からそれることもあって当て続けるのが難しいものであった。
しかし逆に言えば当て続けた際の威力は他のブレスよりはるかに強力であり、実際に野生のワイバーン相手に無双できてしまうほどだった。
しかもこれを安全な空の上から放つことができるわけで上手くやればサンドワームやあの超巨大な草食すら一方的に倒せてしまうだろう。
守護者との戦いに連れ込めることが判明していることもあり、俺一人で戦う以上はこの威力を利用しない手はなかった。
そのため青いワイバーンの数を揃えつつ雷のブレスを目標に当て続ける練習もすることになったのだ。
まあ時間をかけた甲斐あって十五匹ほどの青いワイバーンが揃い、更に雷のブレスもかなりの精度で当て続けられるようになった。
後は連れ込む動物のバランスをどうとるかだが……防御力の高いゴーレムの比率を増やして持久戦を覚悟して戦うか、或いは青いワイバーンを増やしてその圧倒的な火力で一気にに沈めるか。
悩ましいところだが前に戦った守護者の中で特に苦戦したドラゴンのことを思えば、仮に空のような攻撃が届きにくい場所に陣取られても問題なく対処できるようワイバーンの数を増やすことにした。
これで止めを刺しきれれば良し、駄目でも十数体の青いワイバーンに群がられてボロボロになった守護者を数体ほどは連れ込む予定のゴーレムを盾にして、ホーミングミサイルや高品質な銃火器で打ち抜いてやればきっと勝てるはずだ。
……皆との別れはもうすぐだ。
悲しくも寂しくも感じるけれど、もうここからは一人でやると決めている。
最初こそルゥちゃんの一件もあって危険な真似は避けるよう言ってくることもあったトライブの皆も、ルゥちゃん自身がこれ以上自分のことで迷惑を掛けたくない的なことを言ったこともあって今では寂し気に見守るばかりだ。
そしてそんな彼らの傍にはオウ・ホウさんの姿もある。
……彼はルゥちゃんをちゃんと見守れずあんな結果になってしまったことに責任を感じているようだった。
何より俺が抜けたことで穴ができるかもしれないこのトライブを見守る意味も兼ねて残ることを決めたという。
もしかしたら俺の決意を痛いほどわかってくれていて、だからこその提案だったのかもしれない。
そんなオウ・ホウさんに生き返らせる術が見つかったら必ず戻ると約束したが、仮に見つからなくても絶対に生きて戻ってくるように彼だけでなく他の皆にも約束させられてしまった。
その中にはモーリツさんの姿もあったけれど、結局俺ははっきりと頷くことができなかった。
……きっと前ならば素直に頷けたはずだった。
けどあのルゥちゃんを操っていた黒幕の存在を知った時から、俺は無意識のうちに嫌な予感を抱いてしまうのだ。
あの時彼が語り掛けた正体……この砂漠で見つけた狂いゆく先達者様の記録……俺が最も尊敬しずっと指針にしてきて今まで何度となく命を救ってきた薬の作り方を残してくれた偉人……もしも彼ですらこの過酷なARKの環境に飲まれてしまったとするならば俺みたいな奴の末路は……いや、ここまでやってきた自分自身を信じるしかないよなフローラ?
今回名前が出た動物
ファイアワイバーン(炎のブレスを吐くワイバーン)
ポイズンワイバーン(毒のブレスを吐くワイバーン)
ライトニングワイバーン(雷のブレスを吐くワイバーン)
デスワーム(サンドワーム)
ティタノサウルス
ロックエレメンタル(ゴーレム)