ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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過酷なる焦土

「……本当に行くのかね?」

「ええ、行きます」

 

 唐突なモーリツさんの問いかけに俺は即座に頷いた。

 既に覚悟は決まっている。

 フローラを助けるまで絶対に歩みを止めないことも、これから先の旅路は一人で進むことも。

 

「まだこの焦土の地が安定したとは言い難いというのに、仲間達を見捨てていくと言うのかね?」

「いや俺が居なくても大丈夫だと確信しているからこそですよ」

 

 チラリと視線を俺のために動物を移動させている皆に向けながら呟いた言葉にも即座に答えを返す。

 巨体なワイバーンとゴーレムとオマケのユウキィ二世と豚をオベリスクの転移範囲に収めるのは一苦労だった。

 しかしこの後で強敵との戦いを控えている俺に余計な苦労は少しでもさせない方がいいとモーリツさんの提案で彼らにやって貰うことにしたのだ。

 

 その間にモーリツさんは俺と二人で装備や道具の忘れ物がないか最終チェックしよう、とのことだったがどうも本当のところは俺を思いとどまらせる説得をしたかったのだろう。

 

(他の皆はもう納得してるから名残惜しそうにこそすれど、下手にモーリツさんが引き留めようとするのを聞いたら止めに入りそうだからな)

 

 相変わらず抜け目のない采配であるが、逆にそんなモーリツさんが協力してくれているのだから余計にもうみんなは大丈夫だと確信できてしまう。

 

「……やれやれ、初めて会った時は仲間のことを口にすれば何でも要求を通しそうな甘い男に見えたというのに、一皮むけたようだな」

「良い意味でか悪い意味でかは自分でもわかりませんけど、少なくとも覚悟は決まりましたから」

 

 わざわざ手の込んだ状況を作ったというのにモーリツさんは説得を早くも断念したようだ。

 ここに来る前もここに来てからも多くの人を見てきたであろう彼だからこそ俺の決意が決して覆るものではないとわかってしまったのだろう。

 

「それと言わせてもらうならモーリツさんの方も初めて会った時とは全く違う印象になってますよ、一皮むけたというか化けの皮がはがれたというか……」

「ふん、当たり魔だ……私は『モーリツ・ベニョヴスキー』などと言う人間ではないのだからな」

「……え?」

 

 予想もしなかった返事に俺は思わず間抜けな声を出してしまう。

 

「やはり全く気づいていなかったのだな……そっちから情報を仕入れるまで私はここを地球上のどこかで誰かにさらわれた可能性を視野に入れていたのだぞ? そんな状況で軽々しく本名を名乗れるものか?」

「あ……え、えっと……つまり警戒して偽名を使ってたってこと……?」

「ルゥ女史を操っていた輩のセリフではないが、何ともまあ察しの悪い……そんな調子で本当に一人でやっていけるのかね?」

 

 ニヤリと笑いながら再び俺を引きとめる方に会話を持っていこうとするモーリツ?さん。

 もちろんそんなことでオベリスクの守護者に挑むのを辞めたりする気はないが、彼が偽名を名乗っている可能性に気づけなかったことはショックだった。

 

(そ、そうだようなモーリツさんぐらい知恵が回って警戒心が強い人なら偽名を名乗ってても不思議じゃ……と、というか本当の名前はなんなんだ!?)

 

 もう当たり前のようにこの砂漠において、俺だけでなく他の仲間や果ては他のトライブの人達まで彼の事をモーリツさんと呼んでいる。

 だからこそ余計に彼の本名が別だと言われても理屈では理解出来ていても違和感の方が強い。

 

「全く……だが俺達を扇動して船に乗せておいて少し不満が出たら無人島に置き去りにするような最低最悪な詐欺師だった本物のモーリツのヤツみたいに抜け目も無ければ人の心も無い様な輩よりはずっとマシだろうが……」

「……そ、そんな人の名前をどうして?」

「自分自身の戒めのためだ……いやこういう環境で生き延びるにはああいう性格の奴の方がいいと思ったというのもあるがな……だが、まあ見ての通り結局私は誰かに騙されて厄介な仕事を押し付けられるお人好し側のままだったようだな」

 

 彼はまるで自虐するように呟いた。

 恐らくそれは俺の代わりにこのトライブを、と頼まれたことに対する皮肉も混じっているのだろう。

 ただ言葉とは裏腹にそう語る彼の顔は、むしろ重荷を下ろしたかのようにさわやかさすら感じさせた。

 

「……改めて考えると俺達結構、貴方に頼ってたかもしれませんね……色々とすみません」

「今更だ、そんなことを言うぐらいならそれこそここに留まり私を含めた皆を先導する立場に……というわけにはいかないのだろうな」

「ええ、それだけは……みんなも掛け替えのない大切な仲間ですけれど俺にとってフローラは……」

「ああ、もういい……惚気話など聞いてはおれん……ほら、準備も済んだようだし留まる気がないのならばさっさと行ってしまえ」

 

 そう言ってヒラヒラと手を振る彼の手には、話している間にもしっかりチェックしてあるアイテムリストがあった。

 高品質アサルトライフルとホーミングミサイル発射用のロケットランチャーをそれぞれ複数本に加えて弾薬とメディカルブリュー、サボテンスープを持てる限り。

 防具はこの砂漠用の高品質装備に加えて万が一にも転移した先の気温が変動していた時に備えての修繕した高品質毛皮一式。

 

 更には虫よけの薬や昔話の伝承から空想生物の毒に備えるための解毒薬や精神的な何かに対抗できるかもしれないと用意された興奮剤。

 また戦闘が長引いた時のために何かに使えるかもしれない採掘道具一式やカスタム料理などを持ち込むのも忘れない。

 

「ええ、行きます……本当にありがとうございましたモーリツ……じゃないんですよね本名? 教えてもらえますか?」

「……そうだな教えようか……また無事に戻ってきて再開することができたその時にでも、な」

 

 真面目な顔で頷きかけてくる彼……多分生きて帰って来いと激励してくれているのだろう。

 本当は頷くべきだとわかっていたけど、だけど俺の脳裏にチラつくルゥちゃんを操っていた黒幕の影がそれを許してくれなかった。

 

「ええ、その時が来たらぜひ……」

「そんな気弱な顔でどうする? これから化け物と戦おうと言うのだからもっと景気のいい顔をしていきたまえ! ほら無理にでも笑って進め、自分で選んだ道だろう!」

「あ……はい、じゃあ行ってきます!」

 

 激励する彼の言葉に今度こそ頷くと、俺はオベリスクの中央にある操作盤へと向かっていく。

 既に皆は巻き込まれないよう少し離れた丘の上に待機している。

 早速、起動するとはめ込んであったアーティファクトが消滅し俺と周りにいる動物達を囲むように転移装置が起動していく。

 

「ハンスさん! ルゥちゃん! ソフィア! キャシー! シャルル君! オウ・ホウさん! みんな今までありがとう!」

「こ、こちらこそありがとうと言いたい! 初めて会った時からずっと……ま、また会える日を待っているぞ!」

「またあいたいから……しなないで……わたしもちゃんといきぬくから……」

「き、気を付けてくださいよ! また会えないと嫌ですからね!」

「絶対に再会しまショウ! フローラさんと一緒に会いに来る日を待ってますよ!!」

「貴方の旅の無事を祈っております! そしていつの日かまた一緒に語り合いましょう!」

『無茶だけはしてくれるなよ! 無事に帰ってくる時を心待ちにしているからな!』

 

 彼らに向かって叫ぶと向こうも負けじと大声で返してくる。

 そんな皆とは少し離れたところからモーリツ?さんはもう胡散臭げな表情ではなく、素直にほんの少しだけれど寂しさをにじませた顔で手を振っていた。

 

「みんなも元気で! じゃあちょっと行ってくるよ!」

 

 ワープする寸前、最後の最後に彼らを心配させまいと俺はあえてそういう言い方をした。

 本当はちょっとになるわけがない……むしろこれが根性の分かれになる可能性の方が高い。

 だけど今だけは、あんな風に心の底から見送ってくれる皆の前でだけは自分の言葉を自分でも信じたいって思うことができた。

 

 そして次の瞬間、久しぶりだが覚えのある視界が反転する感触と共に目の前の光景が一変するのだった。

 

*****

 

(……取り合えず環境は変化なしだな)

 

 転移した先が更なる灼熱の地だったり真逆の極寒地帯だったりで環境に悩まされる……そんな罠も警戒してただけに少し拍子抜けする。

 尤も気を抜くと何が起こるのが分からないのがARKであり、特に守護者との戦いは一瞬の判断の差が生死が分かれることも多々ある。

 だから即座に乗っていた青いワイバーンにしっかり騎乗し直して手綱を握りつつ、周囲を見回して敵を探す。

 

「グオォオオオオ!」

「あいつか!」

 

 果たしてすぐに目の前にある縦に細長く伸びる巨大な岩山の頂上に奴は鎮座していた。

 ライオンに似た顔と身体に大きな翼が生えており、その尻尾はサソリのごとし……まさしくこれまで砂漠のあちこちで見かけていた石像やら壁画に描かれていた姿そのものであった。

 そして奴はその出鱈目な巨体を羽ばたきで空中に持ち上げると獲物に目を付けた猛禽類のように空を旋回し始めた。

 

(ビンゴ! ワイバーン重視にして正解だったぜ!)

 

 もしゴーレム重視編成で来ていたらこの時点で向こうが着地するまで手も足も出なくなるところだった。

 そうなれば一気に向こうのペースに持っていかれていつぞやのドラゴンのように弄ばれるだけだっただろう。

 しかし今回は違う、何せこっちには戦闘力も素晴らしい飛行生物を連れて込めているのだから。

 

「よし、行くぞワイバーン軍団!」

「「「グォオオオオ!」」」

 

 ワイバーンに指示を出し自らも乗っているワイバーンの手綱を引いて空へと浮かび上がる。

 そして向こうが旋回行動をとっている隙に早速猛攻を仕掛ける。

 

「やれ!」

「「「シャァアア!」」」

「グォオオオっ!?」

 

 十数匹の青いワイバーンが一斉に雷のブレスを放ち、敵の全身を打ち貫いていく。

 凄まじい紫電の迸りに頑丈なはずの向こうは思わず悲鳴を上げて回避行動に移り始める。

 お陰でただでさえ当たりにくい雷のブレスは外れやすくなるが、俺の操る個体だけはしっかり狙いすまして奴の身体をスタミナが続く限り的確に貫いていく。

 

 また他の個体も数の暴力もあってそこそこ被弾させており、それもあって結構相手は苦しんでいるように見えた。

 この調子で攻撃を当て続けられればあっさり倒せてもおかしくはないが、そう上手い話があるはずもない。

 

「グォオオオオ!!」

「くっ!! 流石に早さは向こうの方が……ん?」

 

 戦場が狭いこともあって雷のブレスの効果範囲から逃れきれないと判断した奴は一転してこちらに襲い掛かってきた。

 速度も差もあって攻撃を躱すこともできず正面からすれ違いざまに一撃食らう羽目になった……のだが、思ったほどワイバーンの身体は傷ついていなかった。

 サドルが付けられないから防御力は低い方だと言うのに、だ。

 

(な、なんか弱くないかこいつ?)

 

 十数体の雷のブレスを受けてピンピンしているところからして普通の生き物より遥かにタフで厄介なのはわかる。

 だけどドラゴンや管理者のような格別な的と比較して準備を済ませていた身としては正直拍子抜けすると言っていい。

 逆に言えば巨大蜘蛛や巨大ゴリラと比べるとちょうどいい塩梅になっているような気さえする。

 

(……というか俺が警戒しすぎてただけでこれが普通なのか?)

 

 攻撃を続けるうちに雷のブレスで穿つ部分にはっきりと傷跡が残り始めている。

 ダメージもしっかり通っているようであり、頑丈さにしてみても特にヤバさは感じられなかった。

 また更なる反撃手段として毒針のようなものを飛ばしたりもしてくるが、こちらもやはり大した威力ではなく、この調子ならこちらが倒れる前に何も問題なく向こうを倒せてしまうだろう。

 

(やっぱりか……どうやらルゥちゃんの黒幕がヤバい奴らと肩を並べる強さだったせいでちょっと深刻になり過ぎてたみたいだな……)

 

 或いはワイバーン軍団が反則級の能力だと言うのもあるかもしれない。

 実際にもしもゴーレム軍団だけならば、空を飛べないから一方的に毒針を受け続けてじり貧になっていたかもしれないのだから。

 

(……いや気を緩めるな! ARKの設計の底意地悪さを考えたら絶対に何かあるはずだ!)

 

 そう思いながら戦闘を続けていると、地面の方から争う物音が聞こえ始めてきた。

 空に守護者が居るのに一体何が、と思って視線を向けてみれば念のために連れてきた壁役のゴーレムと補助要員のユウキィ二世と豚がサンドワームと殴り合っているではないか。

 

(げっ!? サンドワームが湧いてくる場所なのか!? マジで空を飛べる生き物連れてこなかったらヤバかったかも!!)

 

 あのサンドワームが定期的に湧いてくるのかはまだ分からないが、もしそうだとすればサンドワームを相手にしつつこいつと戦うとなったら難易度は劇的に上がった事だろう。

 それこそ下手しなくてもドラゴン並みの厄介さだったかもしれない。

 

(なるほど、攻略法が正しかったから楽に感じるだけでちゃんと厄介な点はあったわけか……逆に言えばそれをスルーできた以上はもう恐れる事なんか何もない、のか?)

 

 これまで何度も煮え湯を飲まされてきた経験からついつい不安になりそうになる。

 しかしとにかくこのまま攻撃を続ければ問題なく勝てるはずだと自分を鼓舞して、警戒だけは怠らないように戦闘を続行するのだった。

 

*****

 

(や、ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいぃいいいい!!)

 

 向こうはもうボロボロで死にかけだが、俺は焦りで胸がいっぱいだった。

 奴を追いかけるワイバーンは既に残り数匹になってしまっている。

 他の個体は全滅……したわけではないが地面の上で力なく横たわり、どいつもこいつも寝息を立てている。

 

(ま、まさかこいつの攻撃の殆どに麻酔効果があるだなんて!!)

 

 大した威力ではない向こうの攻撃だが麻酔効果だけはかなりの威力があったらしい。

 お陰で傷こそ深くないのに唐突にワイバーン達がバタバタと地面に落ちていきはじめたのだ。

 しかも相変わらず嫌な予想だけは当たるようでワイバーンは無制限に湧いてくる上に、ある程度傷ついたところでゴーレムまで出てきたではないか。

 

 こいつらの攻撃力は純粋な威力だけで見れば守護者以上であり、何より眠って無防備なところを一方的に殴られたら持つはずがない。

 お陰で地上部隊は壊滅寸前だし、地面に落ちたワイバーン達も片っ端から止めを刺されている。

 

「グォォォオ……」

「くっそっ! いい加減死ねよ!」

 

 叫びながら俺は最初に守護者が居た岩山の上でロケットランチャーに弾を込めながら、まだ無事なワイバーンに指示を出し続けている。

 俺の乗っているワイバーンが眠りに落ちる寸前に、サンドワーム達に襲われないようここへ退避した……のは良いのだが混戦状況では他のワイバーンを呼び寄せるわけも行かず孤立状態になってしまったのだ。

 それでも何とかホーミングミサイルのロックオン機能を使って強引に攻撃を当てているが、雷のブレスを正確に当てられなくなったことで目に見えて与えられるダメージ量は落ちてきている。

 

(た、頼む! いい加減に死んでくれ!)

 

 祈るような気持ちで再び装填したホーミングミサイルを構えてロックオンした守護者へ向けて撃ち放つ。

 複数本の雷のブレスを避けるのに必死な向こうは流石に誘導してくるミサイルを躱す余裕はない。

 正面から胴体にぶち当たり大爆発を起こすも、少しすると爆炎の中から正確にこちらへ向かって毒針が放たれてくる。

 

「がっ!? く、くそ……っ」

 

 ほんの一発がかすめた程度なのに一瞬で眩暈がするほどの睡魔が襲い掛かってくる。

 即座に興奮剤をがぶ飲みして無理やり意識を覚醒するが、これもそろそろ限界だ。

 

(そ、ソフィアが興奮剤持たせてくれなかったヤバかった! ああ、くそ! やっぱり守護者はどいつもこいつも油断ならねぇ強敵ばっかりだ!)

 

 最初のうちに大したことがないかもと決めつけかけた自分を恨みながら、俺は眠気でかすみそうになる視界の中で必死にホーミングミサイルを装填する。

 

「「しゃぁぁ……っ」」

「グォオォォ……」

「く、くそ……いい加減落ちろぉおおお!!」

 

 遂に残っていたワイバーン達も地面に落ちる中、ヤケクソ気味に俺は再びホーミングミサイルを撃ち放つ。

 同時に砲塔が耐えきれず壊れたのを見て地面に投げ捨てるとアサルトライフルに変えて、爆炎から放たれてくる毒針の位置に向けてマガジンの弾を全弾ぶち込んでやった。

 

「こ、これでどう……うぐぐ……っ」

「ぐ、ぐぉぉ……」

 

 逃げ場の少ない岩山の上では大した回避行動もとれなかったために遂に毒針の一本が俺の身体に直撃して、これまでとは比べもにならない睡魔が襲い掛かってくる。

 同時に向こうの悲鳴に似た声も聞こえた気がしたが、余りに眠くて目の前の視界がかすんでくる。

 

(こ、興奮剤……こ、これが最後の……だ、だめだ眠気がおさまらな……)

 

 興奮剤を飲み切るも猛烈な勢いで襲い来る睡魔は収まらない。

 それでも最後まで抵抗しようとアサルトライフルを手に歪む視界の中で敵を探して、そこに向かって引き金を引く。

 しかし聞こえてくるのはカチカチという弾切れの合図だけであることに気づくのに結構な時間がかかった。

 

(あ……た、たまをかえないと……たま、どこにたま……あぁ……ね、ねむ……しずかで、もうねても……し、しずか……?)

 

 寝ては駄目だと思うのに瞼が余りに重くて耐えられない。

 何より戦場だと言うのに余りに静かなせいで気を紛らわすこともできない。

 ……しかし遅れて、余りにも静かすぎる事に気がついた。

 

 次いで先ほど弾切れした銃で狙いを付けた守護者が地面の上で横たわったまま動いていないことと、左手首にホログラムが浮かんでいることにも遅れて気が付いた。

 

(こ、れは…………な、なんだっけ……わからない、ねむい……ねむいよふろーら……ぁぁ…………)

 

 遂に身体を支え切れなくなり地面に仰向けに寝転がったところで、空に何かが描かれているのが目に入ってきた。

 どうやらいつの間にか何かが起こっていたらしい。

 地球に似た星の周りに何かが浮かんでいるが、そのうちの一つが異常を訴えかけるように赤く点滅している。

 

 しかしもうそれが何を意味しているのか理解することもできないまま、俺は睡魔に飲まれて暗闇へと落ちていった……はずだった。

 だけど次の瞬間、身体に感じていた重さが抜けたかと思うと浮遊感と共に意識がはっきりしたかと思うとどこかへと猛烈な勢いで引っ張られていく。

 

(えっ!? な、何が起き……こ、これはまさかARKを攻略した時の!?)

 

 思わず目を開いたところいつぞや見たのと同じような光景が広がっていた。

 宇宙空間からさっきまでいたであろう砂漠の大地が広がるARKを見下ろしている。

 どうやら俺はあのARKを攻略できたようだ。

 

(そうか、最後の一撃で倒せてたんだな……みんなやったよ)

 

 遠すぎて見えないけれどそこに居るであろう仲間達に向けて心の中で呟く。

 するとそれを待っていたかのようにいつぞやと同じように不思議な力で俺の身体は引っ張られて砂漠からどんどん離れていく。

 そして名残惜しさを感じる間もなく離れたところに赤くロックされている別のARKが見えて来て、俺の身体は他のARKの近くを経由するようにしてそこに向かって引っ張られていく。

 

 遂に目の前までそのARkが迫ったところで左手首のインプラントも反応し始め……たというのに、何故か目前で急激に軌道が変化した。

 

(な、なんだっ!?)

 

 まるで何か別の力に吸い寄せられるように俺はブレる視界の中で、周囲を守る柱の壊れたARKへと向かっていく。

 いや本当に吸い寄せられているのかもしれない……そのままの勢いで俺の身体はその壊れたARKに空いている穴の中へと飛び込む羽目になったのだから。

 

『うっふっふっはっはっはっはっ』

 

 その瞬間……そんな薄気味悪いけれど聞き覚えのありそうな笑い声が聞こえた気がしたのは気のせいだったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああ、またこの空間か」

『待っていましたよサバイバー』

「あんたか『待つ者』……結局アンタは俺に何をさせたいんだ?」

『して貰いたいことはただ一つ、ですが今回に関しては私個人の願いです……どうか彼を……』

「何を言って? いやそれよりフローラは……?」

『彼女の意識はもう先に行っています。目を覚ませばすぐに会えることでしょう』

「なっ!? そ、それはどういう…………っ」

『サバイバー……信じています……どうか失敗し続けているこれまでの先達者達の道を紡いで……そしてあの道を誤ってしまった先達者を……彼をどうか……』




今回名前が出た動物

ライトニングワイバーン(青いワイバーン)
ロックエレメンタル(ゴーレム)
ユウティラヌス(ユウキィ二世)
ダエオドン(豚)

ブレードマザー(巨大蜘蛛)
メガピテクス(巨大ゴリラ)
ドラゴン
監督者(ARKの管理者)
マンティコア(このARKの守護者)


本当に長くなりましたがスコーチドアース編はこれで終了です。
ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。
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