ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第902話

七頁目

 

 実際問題、洞窟の中からスタートする環境で光源が確保できないのはきつすぎる。

 それはARKの設計者もわかっていたのか、珍しく解決方法が用意されていた。

 まさかフローラに言われて左手首の鉱石を見て考えてみたら、これまたいきなり新しい物の作り方が思い浮かぶだなんて。

 

 いわゆるサイリュームやケミカルライトというもので、棒状のものの中にある液体とかの化学物質が反応することで一定時間発光する代物だ。

 俺がそんなお洒落な物の名称を知っているわけもなくフローラに教えてもらったわけだが、とにかくこれが先ほど採取した緑の宝石と普通の水晶を組み合わせることで作ることができたのだ。

 しかも粘着質な性質もあるため背中に張り付けることで両手を自由にしたまま光源と一緒に移動することもできる優れものだ。

 

 更に投げつけた先に張り付かせることでも光源として使えるし、何より小型で小さいからかさばらず松明と違って一度に複数個をセットにして持ち運ぶことができる。

 まあ松明より発光時間は短いし再利用可能な松明と違って一度使ったらそれっきりであるが、使い分けするには十分すぎるほどの性能がある。

 何より僅かな素材からそれなりの量を作れることも魅力で、どうせ水晶は最初の内は使い道がないこともあり、早速暗くならないうちに可能な限り制作してあちこちの草木や壁に貼り付けるように投げることで一定距離の視界を確保することに成功するのだった。

 

『赤い光で目に優しくなさそうなのが気になるけど、いつか塗料を作る余裕が出来たら表面の色を変えて発光色が変わるか試してみたらお洒落でいいと思わない?』

 

八頁目

 

 改めて採取し続けた素材で最低限の藁の家と寝床を作り、その中で落ち着いて現時点で最も使える武器である弓矢を作り上げていく。

 作業机も金属のインゴットも無しで製作可能であり、それでいて遠距離武器なので立ち回り次第で大型の生き物だって討伐可能になりうる代物だ。

 近いところからずしずしと足音が聞こえている辺り、まだ大きく探索していないから姿は見ていないが恐らく重量級の生き物がいるはずだ。

 

 激しい戦闘音が聞こえない辺り草食系であり、前に見た事のある生き物ならばブロントか前の島で移動拠点として利用していたパララ君、或いはそれらに似たここ固有の生き物がいるはずだ。

 上手いこと高低差で嵌められそうな場所があればそいつを狙って一気に生肉と皮を手に入れてもいいし、駄目だとしても最初に見たステゴ辺りは移動能力に難があるから旋回するように誘導しながら弓を撃ち続ければ今の時点でも狩るのは難しくない。

 皮さえ手に入ればまた作れるものの幅も広がるし、生肉は食事にもなれば腐らせて重要物資の一つである麻酔薬の精製にも繋がってくる。

 

 何せ麻酔薬は動物を仲間にする基本的な手段としても役に立てば傷をいやす不思議な薬であるメディカルブリューの精製にも役立つのだから。

 ……俺の旅路にはどちらも必要不可欠だった代物だが、特にメディカルブリューには何度命を救われたか数えきれないほどだ。

 本当にこれの作り方を見つけて記録に残しておいてくれたロックウェル氏には返しきれない恩があると思う……だからこそ俺は真実が知りたい。

 

 ルゥちゃんを操った黒幕が名乗りかけた名前がロックウェル氏の署名と一致していた事が何を意味しているのか、最も尊敬する偉大な先達者だったはずのロックウェル氏がどんな生き方をして最終的にどうなってしまったのか。

 ここのARKにもありそうな先達者様の日記を探したら答えが出るのだろうか?

 ……不思議だな、何の根拠もないのに……本当に何となくだけど、全ての答えはこのARKにあるような気がして仕方がない。

 

『……あの人の薬があったから貴方の今があるの……だからもしあの人がどうにかなってしまっていたとしてもその点だけは私、ずっと感謝し続けると思うな……』




今回名前が出た動物

ブロントサウルス
パラケラテリウム変種(パララ君)
ステゴサウルス変種
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