ARK とある青年の日誌   作:車馬超

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第92話

二百六十九頁目

 

 意外にもフローラと離れたところ、半日ほどで体調はあっさりと改善してしまった。

 それでも念には念を入れてもう一日休むことにする。

 恐らく二日ぐらいならばあの赤い個体は出ないだろうと判断してのことだ……尤も外からは常に仲間のティラノが暴れる音がしているが 。

 

 やはりこの島は危険すぎる……早いうちに山肌の拠点かあの草食島に戻りたいものだ。

 見えない距離にいるフローラにもその旨を伝えると、予想以上に素直な返事が返ってきた。

 てっきり彼女のことだから、もう少しあちこち見て回ると言い出しそうなものだが……。

 

 しかしこうして彼女の顔が見れない時間が続くと何やら寂しく思えてしまう……まだ半日程度しかたっていないというのにどうしたのだろうか俺は?

 

二百七十頁目

 

 もう一日寝て完璧に健康を取り戻した俺は、真っ先にフローラの元へと顔を出した。

 しかし彼女は毛布を頭からかぶって顔を見せてくれない……水浴びをしなければとても顔を見せられないというのだ。

 年頃の女の子らしいお願いだが、確かに病気の恐ろしさを再確認した今となっては清潔さにも気を配ったほうがいい気がしてくる。

 

 だから突貫工事で石のパイプで海水……にしか見えない真水を吸い上げて拠点内まで引っ張ってくると、すぐにフローラが大きめのシャワー室を作って立てこもってしまう。

 俺も後で入ろうと思いながらも、とりあえずこの場を飛び立つための荷物整理を始めておく。

 ティラノが食い散らかした敵の死体に残っている皮や肉を回収して、あの洞窟で手に入れた道具をしっかりタヴィちゃんとアルケン君に持たせ……ようとしたところで俺は目を丸くしてしまう。

 

 何故なら、タヴィちゃんの脚の付け根に……身体で覆い隠されたその下に……とても大きな卵が幾つか転がっていたからだ。

 

二百七十一頁目

 

 どうも俺たちが同じ場所で待機させすぎた弊害というべきか、或いは雄であるアルケン君と雌であるタヴィちゃんを近くに置き過ぎたせいだろうか。

 とにかく三つ転がっている卵にそっと手を伸ばしてみると、うち二つは冷たいというかまるでお店で売っているような卵のように感じられた。

 ただ残る一つは何やら妙に温かいような気がして……それこそ温もりで周囲の空気が歪んでいるような、そんなオーラじみたものを纏っているように思われた。

 

 何よりこの卵を持っている俺をアルケン君もタヴィちゃんも物凄く見つめてくるのだ。

 いったいどうしたらいいのか迷っていると、そこへ新品と思われる布の服を着て妙にさっぱりした顔をしたフローラが駆け寄ってくる。

 そんな彼女に軽く卵について説明すると、一瞬驚きながらもすぐに慈愛の笑みを浮かべて卵を抱きしめ始めた。

 

 どうするべきか迷う俺に対して、フローラはこちらをまっすぐ見つめながら迷わず育てようと力強く言い切った。

 そしてすぐに卵をタヴィちゃんの足元に返しつつ、この場所は子育てに良くないからと俺がシャワーを浴び終わり次第移動しようというのだった。

 もちろん逆らう理由もなく頷いた俺は、すぐにシャワーを浴びようとフローラが作ったシャワー室に入って……何やら妙に小さい個室があることに気が付いた。

 

 ドアを開けてみれば石のパイプに繋がれたトイレが……道理で彼女は妙にさっぱりしていたわけだ……俺も少し我慢していたし、使わせてもらおう。




【今回名前が出た動物】

ティラノサウルス
アルゲンタビス(アルケン君・タヴィちゃん)
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