二百七十二頁目
色々済ませてさっぱりしたところで、シャワー室に置いてあった布の服に着替えてフローラのところへと戻ると既に彼女はここを飛び立つ準備が万全と言わんばかりに支度を済ませてあった。
もちろん卵も落とさないようにしっかりとアルケン君に下げている荷物袋に入れてあって……しかし不思議なことにあの洞窟で手に入れたアーティファクトだけは腕の中に抱えてあった。
何でもアルケン君やタヴィちゃんに渡そうとしても嫌がって受け取ってくれないのだそうだ……実際に俺もティラノを含めてこの場にいる動物たちに渡そうとしても確かに拒絶されてしまう。
考えてみればあの洞窟内でも、このアーティファクトは動物たちに攻撃されることなく鎮座していた……この自ら発光している仄かな輝きにはそう言う効果があるのかもしれない。
とにかくアーティファクトは俺かフローラが持っていくしかないようだ……しかしフローラはその輝きに魅了されているのか自分が持つと主張してくる。
元々この洞窟の攻略自体が彼女の提案で行った事なのだから異論をはさむ理由もなくフローラへと手渡し、改めて俺たちは鳥に跨りこの島を後にした。
色々あったけれど、洞窟からアーティファクトも回収した以上はこんな危険な肉食島にはもう戻ることはないだろう……さらば肉食島。
二百七十三頁目
とりあえず畑も気になるからと比較的近くにある山肌の拠点を目指して飛んでいる最中、傍を飛んでいるフローラが謝罪してきた。
どうもあの洞窟での出来事を反省しているようだ……お互いに病気にかかり死に掛けたのだから流石に思うところがあったようだ。
一応この島ではあんな危険が幾らでもあるから注意するように言い含めながらも、結果的に助かったのだから気にしなくていいというとほっとしたように笑顔を見せてくれるフローラは相変わらず可愛かった。
やっぱりドキッとしながらも、ごまかすように俺はこの後の行動の予定について相談することにした。
仮にも一つめの洞窟を攻略してアーティファクトを手に入れた今、また比較的安全そうな洞窟を探して攻略を試みるのもいいし、手に入ったアーティファクトを実際にオベリスクへと持って行って反応を見てもいいと思う。
だけどフローラは何を置いてもこの卵を孵化させたいという……女の子だからなのか、子育てに物凄く興味津々なようだ。
しかしこの島で……無限にどこぞから生き物が湧き出てくる島で繁殖行動が可能だとは思わなかった。
もちろんそれならば同じく作り出されたであろう俺たち人間も可能ということで……何やら妙な気持ちが湧き上がってきそうで、このことは深く考えないようにしよう。
【今回名前が出た動物】
アルゲンタビス(アルケン君・タヴィちゃん)
ティラノサウルス