二百七十四頁目
山肌の拠点に戻ったフローラは、その拠点の屋根が平らであることを活かしてそこへわらで作った専用の孵化部屋のようなものをササっと作ってしまう。
もちろん外から攻撃されないように大きめの門を付けて屋根で囲んだそこに入り、卵とアルケン君&タヴィちゃんを安置すると梯子を付けて人間が出入り可能な状態にまで持って行った。
次いで作ってあった菜園用の部屋へと入って行き、もう既にある程度育っていた植物から果実を採取し始めた。
テキパキと動くフローラに対して、特にやることも無い俺は久しぶりにテリ君に乗って山頂を目指し、また沸いている金属鉱石と水晶を回収するだけ回収しておくことにする。
流石にティラノほどではないがテリ君は頼りになる……山頂付近でまたサーベルタイガーやアルケン君の同種に襲われたりしたが、その全てをあっさりと返り討ちにして皮や肉も手に入れることができた。
そうして拠点に戻った俺を、フローラは何故か興奮した様子で迎え入れてくれたが、その両腕の中には見慣れた食物が抱え込まれていて俺も驚いてしまった。
トウモロコシにじゃがいも、にんじんにレモン……まさかこんなところでかつて食べていた食材にお目に書かれるなんて、何だか無性に胸が高鳴り、理由も分からないが何やら涙すら零れて来そうなほど感動してしまう。
もしも生きて帰れたら……いや帰る場所が残されているのならばその時は……やっぱりどんなことをしてでも帰宅して、懐かしの料理を思いっきり味わいたい。
その際に、できればフローラにも家までついて来てほしいと思ってしまうのは……やっぱり傲慢なのだろうか?
二百七十五頁目
早速取れた材料を使って料理を作るフローラ……尤も俺から受け取った霜降り肉と合わせて茹でるぐらいしかできないが、それでもそれなりに美味しそうなご飯に仕上がっているから不思議だ。
何より食材その物の基本的な味は殆ど変わらないから、口に含んだ途端また懐かしさのあまり涙が零れてしまった。
フローラもまた感激しているようで、彼女も涙を流しながら次から次へと食事を掻き込んでいく。
尤も彼女の場合は自分で育てた食材だからという理由もあるのだろうけれど……とにかく俺たちは夢中で懐かしい味を貪った。
おかげでお腹いっぱい以上に食べてしまい、またトイレに篭る羽目になってしまう。
だけどこういうのも何か幸せというか、ほんの少し楽しいと思えるのが不思議だった。
案外俺はこの場所に適応してきているのかもしれない……それともやはりフローラが居てくれるからだろうか?
きっと彼女が居てくれなかったらこの味を懐かしんで、だけど二度と元の場所に戻れないかもしれないという現実に虚しくなり自らの人生を儚んでいたかもしれない。
本当に彼女に出会えてよかった……フローラも俺のことをそう思ってくれていたら嬉しいのだけれど……。
【今回名前が出た動物】
アルゲンタビス(アルケン君・タヴィちゃん)
テリジノサウルス(テリ君)
ティラノサウルス
サーベルタイガー