累積経験値10万を超えた私の乙女ゲー攻略日記   作:楠ノ桶

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19話 私の本気ってね

 

 

「――――“サウンド・ベール”」

 

 

 

刹那、空間に歪が走る。

 

空気を割き、魔素を振動させていく。

 

 

 

“レコード”。

 

音魔法の中で平凡な魔法だ。

 

音を魔素として録音し、解き放つだけ。

 

如何に大音量であろうと、もとの音量に依存する為、空間を歪める程には至らない。

 

眼下で爆発音を目の当たりにしたのに比べれば、衝撃しか無いのと同じ。

 

飛び散る破片、熱量は無く、猫騙し程度の魔法。

 

 

 

だが――。

 

それを改良した魔法がある。

 

私の友達がコンテストに応募した魔法。

 

惜しくも選考には選ばれず、認められなかった。けれど、その威力は、効力は理解すれば、とんでもないものだ。

 

 

 

四精霊とは異なる系譜。

 

名を、“サウンド・ベール”。

 

――衝撃力に特化した魔法。

 

 

 

「食らいなさい……ッ!」

 

『無駄だ』

 

 

 

魔法が発動し、周囲の空気を切裂き、轟音となって宙を掛ける。

 

そして、精霊へと伸びる。

 

 

 

「我に魔法は効かん……は、ぁぁぁぁあああああああああ⁉」

 

 

 

確かに魔法は効かないのだろう。

 

魔素を持つものは全て、打ち消すのだろう。

 

だが――これは……

 

 

 

「油断した貴方の負けね」

 

 

 

精霊を強く弾き、天へと吹き飛ばす。

 

何度も衝撃音が響き、精霊が天へ空へと舞う。

 

 

 

「魔法が聞かないのは分かった。それなら空間ごと打ち上げるだけ」

 

『あ、あが、ガぁぁぁアアアアアアアア』

 

 

 

精霊の悲鳴が飛ぶ。

 

縦横無尽に空を飛ぶ精霊は、何かに強く打ち付けられる。

 

 

 

「ね、姉さま。あの魔法はいったい……? ただの音魔法には思えません。そもそも、大精霊様には魔法は効かないはずじゃあ?」

 

「そうね、魔法であればね」

 

「で、では、あれは魔法ではないのか? だが、そんなこと、流石のレミリアでも不可能だろう?」

 

 

 

フィアナとレイフォード様、どちらとも困惑している。

 

途中まで、私の攻撃が何一つ通用していなかったのだ。それに加え、旧帝国の魔法を使えない呪いまである。

 

困惑してしまうのも無理は無いだろう。

 

 

 

「あれは、魔法というよりは、ただの風よ」

 

「風……?」

 

「ええ。大精霊は周囲の魔素を分解できるのでしょうね。だけど、その距離は無限ではない。もしそうなら、最初から私の魔法を潰して、絶望でもさせられたはずよ」

 

「確かに、姉さまの魔法は発動していました」

 

「であれば、魔法自体の使い方を変えれば済む話という訳か。だが、どうやって――」

 

「簡単ですわ。空間ごと、閉じ込めただけですわ。空気丸ごと、広範囲を封じ込め……例えるなら、風船の中にでも閉じ込めたってところでしょうか」

 

 

 

もとの世界なら実現が難しいだろう。

 

風船のように、内部に閉じ込めても重量がある分、空気よりも重たい分、大精霊が浮くはずがない。だが、この世界には魔法がある。

 

例え、人サイズであっても、風魔法を駆使すれば、一人分くらいは何とかなった。

 

 

 

「なるほど。私のバリアのようなもので、相手を囲み、内部の空気ごと、上空に吹き飛ばしたのですね。そんなことが可能なのですね」

 

「ええ。精霊の力を借りてね」

 

「だとすれば、あの内部は……」

 

「ええ。上空にあげる代わり……内部の圧力は相当でしょうね」

 

 

 

精霊は中心からずれていない。それはひとえに、内部の圧力が中心へと向かっているからだ。

 

外から空気を圧縮し、閉じ込める。

 

もしも、人相手に使えば、身体中が砕け、原形を保てないはずだ。

 

だけど、魔素で顕現した精霊には関係ない。

 

 

 

いくら、魔法が強かろうと、内部の魔素はそれよりも頑丈だ。

 

故に未だなお、悲鳴を上げて飛び続ける。

 

 

 

「あ、あれは、いつまで続くのでしょうか?」

 

 

 

もはや、米粒サイズにまで遠く離れた大精霊。

 

――そろそろ、切れるはずですね。

 

 

 

「フィアナ、悪いけど、この辺り周辺に強力な防御魔法をお願いできるかしら? そうね、特にこの闘技場の中心は隕石が落ちても問題ないようにしてほしいかな」

 

「は、はい」

 

 

 

私のお願い通り、作中最強の防御結果が闘技場を埋め尽くす。

 

勿論、二人とも、結界の外に居るから、衝撃波が当たることは無いだろう。

 

 

 

『………………、…………、……、……、ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁあああああああああああ』

 

 

 

 

 

空から大精霊が悲鳴と共に落ちてくる。

 

人であれば気を失ってもおかしくはない高さからのバンジージャンプ。

 

表情は困惑し、身体がブラブラと激しく揺れている。

 

 

 

「……お帰りなさい。そしてお休みなさい――――“ストーン・フォルム”」

 

 

 

地面に落ちる寸前魔法を解除する。

 

そして、右手に石魔法を纏う。

 

 

 

「これでもくらいなさい……ッ‼」

 

 

 

大精霊の顔面目掛け、石魔法で構築された剛腕が正面から対峙する。

 

刹那の時が過ぎ、轟音が闘技場を超え、王城へまで揺らめく。

 

だが、防御魔法によって、衝撃波は抑え込めているようだ。

 

 

 

「………ッ」

 

 

 

当然、私へ向かう衝撃波。

 

それを石魔法にてガードするも、強い衝撃が全身に襲い掛かる。

 

 

 

「う、うう……」

 

 

 

それでも、予め準備しておいた洞穴に飛び込むことで、大部分の衝撃を躱している。

 

 

 

『ぁ……ぁ、ぁあ』

 

 

 

砂煙が飛び散り、視界は悪い。

 

それでも、空と地から殴りつけられた大精霊が遠くで呻く声が聞こえる。

 

そして、バタっと倒れる音が僅かに聞こえる。

 

 

 

「はぁ、はぁぁ……ど、どうやら私の勝ちのようですわね」

 

 

 

全力を掛けた戦いは、私の勝利で幕を閉じた。

 

――二度と戦いたくはないという強い気持ちとともに。

 

 

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