累積経験値10万を超えた私の乙女ゲー攻略日記   作:楠ノ桶

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29話 存在消失ってね

 

地下迷宮のような場所を私とカノンは足を進める。

 

ジメジメとした空間は歩くだけで体力を奪い、喉が渇く。

 

そして、先ほどからずっと黙り続ける私たち。

 

 

 

何を話せばいいのか、カノンが何を考えているのか見当もつかない。

 

そもそも、何か思い違いの連続により、自爆したようなものだ。だから、私から何か問い質せばボロが出る可能性が高い。

 

 

 

まあ正体は割れてしまった後だから、多少ばれても問題はないけれど。

 

光の精霊についての情報は可能な限り知りたい。ゲームでは、ほとんど情報の無い精霊。

 

もしかしたら、魔界に行くための魔法や魔術を知っている可能性もあるかもしれない。

 

 

 

 

 

歩き続けるも、地下へと階段は続く。

 

光景は何一つ変わらない。既に100mは降りてそうだ。

 

ここまで巨大な迷宮であれば、既に攻略されていてもおかしくない。

 

だけど、私の知る限り、学院の地下にはなかったはずだ。勿論、ゲームのストーリーに関係なかったから登場していない可能性もあるけれど。

 

 

 

「それにしても暑いですね。カノンは大丈夫……?」

 

「うん。大丈夫」

 

「そう」

 

 

 

先程から短い会話しか続かない。

 

そもそも、私が先導しているから、カノンがどんな表情を浮かべているか分からない。

 

もしかしたら、怒りの表情で私を見ているのだろう。それとも、絶望?

 

どちらにせよ、普段のカノンの様子からは想像もできない姿には違いない。

 

 

 

妹であるフィアナと話すときは年相応に朗らかな表情を見せるカノン。

 

時折、兄に向けて呪詛を放つ姿も可愛らしい。

 

そんな、彼女が今、何を思っているのか。

 

1つだけ、言えることは私とカノンの関係は修復できないほどに、縺れてしまったかもしれないということ。

 

 

 

光の巫女であるシルフィアはゲーム内で、多数登場していた。

 

今、思い返せば、シルフィアとカノンが同時に登場することは無かった。

 

もしかしたら、裏設定で作られていたのかもしれないわね。

 

 

 

私が開発陣なら、それを知れたのに。

 

デバックのバイトしか出来なかったのが痛いわね。

 

まあ、隠しキャラを多数見つけて攻略できたけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから長い間歩き続けている。

 

流石に何かおかしく感じる。それはカノンも同じようで、光の精霊に小さな声で話しかけている。いつもなら、微精霊が気を利かせて声が聞こえるのだが、地下には居ないのか聞き取れない。

 

 

 

秘密を知った私を葬る事さえ、ここでは可能です。

 

まさかカノンがそんな非道な事をしないとは思いますが。光の精霊が何か囁いているかもしれない。だって、先ほどから「うん」「はい」とか肯定しかしていない。

 

 

 

まるで、カノンの意思がないみたい。

 

もしかして、操られている?

 

 

 

光の精霊。

 

回復魔法に優れた精霊。そんな精霊が人を傷つけることはない。

 

そして、カノンがいい子だとは私が一番知っている。

 

 

 

……悪いことばかり考え過ぎね。

 

それ程までに、光の巫女という存在を私は敵視しているのだろう。

 

 

 

いつか、魔界を亡ぼす定めを作る少女を。

 

ゲームプレイ時からずっと恨み続けてきた私にとって。

 

 

 

シルフィアは嫌いな存在だ。

 

だけど、カノンは大好きだ。

 

 

 

だからこそ、考えが纏まらない。

 

カノンとシルフィアが同じ人物だとは思いたくはない。

 

 

 

(それこそ、勝手ね)

 

 

 

私の感情を押し付ける。

 

それでは、癇癪に耐えられない子供だ。

 

 

 

(今は、それは置いておくしかないのにね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは幻影かしら……?」

 

 

 

先程から終わらない道。

 

ぼんやりと考え事をしていたけれど、それにしては変だ。

 

そもそも、ずっと歩き続けているのに疑問にすら感じない。

 

 

 

後ろのカノンも同様だ。

 

それはあまりにも不可思議だ。

 

 

 

だからこそ、気づけた。

 

これは幻影だと。

 

 

 

 

 

いつから、幻影を見ているのか。

 

カノンの正体を知ったとき、あれは現実だ。だからその後。

 

光の精霊の力を借りて、魔術を放った時。

 

 

 

一瞬視界が眩んだ。

 

そして、何も見ることが出来ていなかった。

 

 

 

もし、あの瞬間。

 

何かが起きていたとしたら。

 

 

 

それが終わりのない道を歩き続けることに繋がっているとしたら。

 

 

 

――この道は一生終わらない。

 

死へと導くロードだ。

 

 

 

体力が尽き果てるまで歩き続ける道。

 

 

 

「たとえ、これが幻影でも魔法は使えるはずね。……カノン。少しいいかしら?」

 

「なんでしょう……?」

 

 

 

そこで初めて、私は後ろを振り向いた(・・・・・・・・・・)

 

 

 

そこには、誰も居なかった。

 

聞こえたはずの声は無かった。

 

 

 

ああ、最悪ね。

 

私とカノンは分断されていた。

 

それも一番最初から。

 

 

 

 

 

カノンは多くを語らなかった。少し、頷いて肯定するだけ。

 

それは、私がそれ以上知らないからと考えられる。

 

 

 

私が知らないことを吹聴することはできない。

 

つまり、これは迷宮の試練だろう。

 

 

 

迷宮には試練が存在していた。

 

ほとんどは、強さを求める為に、ボスモンスターのようなものを配置し、勝てば迷宮クリアとなる。つい最近、アンリと潜った迷宮が典型的だ。

 

だけど、迷宮の試練は多岐にわたる。

 

 

 

だからこんな試練があるのかもしれない。

 

 

 

人攫いの迷宮(ハーメルン・ラビリンス)

 

――全てを分断する迷宮が。

 

 

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