累積経験値10万を超えた私の乙女ゲー攻略日記   作:楠ノ桶

31 / 43
誤字報告ありがとうございます。


31話 見えないってね

祭壇の水晶。

 

それが重要な意味合いを持つと直感的に分かった。

 

 

 

「試しにとれないかと思ったけれど、盗人対策は万全ね」

 

 

 

魔法を込めた右手で水晶に力を込める。だが、僅かな罅すら入らず、光沢は薄れない。

 

やっぱり、この迷宮では魔法を用いた力は通用しないようだ。それを思えば、何故こんな所に精霊が居るのとかという疑問が生まれる。

 

 

 

精霊が自然にこの場で誕生した。その可能性は低いけれど、あり得なくはない。

 

でも、自我を持つほどの精霊となると、話は別だ。生まれながらに自我を持つ精霊は高位精霊と呼ばれている。その数は限りなくゼロに近く、全精霊の中でも、0.000が続く程に稀な存在だ。そんな精霊が地下迷宮で生まれたとは考えづらい。

 

 

 

あるとすれば、この地下迷宮がただの迷宮ではないこと。

 

人為的な手を加えられた痕跡から察するに、遥か昔の文明において、最重要施設であること。

 

それならば、封印のような形で精霊が閉じ込められており、それが開いた。

 

その可能性ならあるかもしれません。

 

 

 

でも、それが本当ならゲーム知識には無い、未知の情報だ。

 

勿論、ここがゲーム世界にすごく似ているだけで、別世界だという可能性も残っている。

 

その場合、私は憑依をした存在であり、この世界にとって異物その物だろう。

 

 

 

もしかしたら、私の存在が邪魔と判断されれば、自我は消える恐れもある。

 

それこそ、この世界の創造主が存在すればという話だが。

 

 

 

「――それにしても、よく分からない部屋ね」

 

 

 

見たこともない絵画、それに水晶が埋め込まれた台座。

 

これが何か意味を持つのか、それがトリガーになるのか、考察する必要があるかもしれない。

 

 

 

「とりあえず、この台座に何かがあるのは確かなはずね」

 

 

 

台座周辺に手を触れ、調べてみる。

 

材質は石のような感触だ。試しに手で叩くも、少し痛みがあるだけで、何も起こらない。

 

鍵穴のようなものもなく、ただの台座だ。

 

 

 

「こんなことしても、意味なんてないのかもしれませんね……」

 

 

 

疲労困憊の身体を思わず、台座に預けてしまう。

 

火照った身体をヒンヤリとさせる感触が気持ちいい。それに、何だか、身体が倒れていくような……ッ⁉

 

 

 

「――え、え、ええええええええ」

 

 

 

思わず、大声をあげてしまう。

 

それ程に、予期せぬ事態だ。身体を預けた台座。それが横滑りしていく。

 

今は魔法を使ってはいないにも関わらず、何の抵抗もなく、ズレる。

 

 

 

そして一定の所で止まり、私の身体が浮遊感を感じる。

 

何が起きたのか、転がり落ちていく。

 

 

 

当然、全身を叩きつけられて痛い。

 

何かに掴もうと手を空へと伸ばす。だけど、何一つ手に触れない。

 

 

 

「きゃああぁぁぁあああああああああ――!」

 

 

 

叫び声と共に落ちていく。

 

そして、最後の階段を通ったのか、硬い地面へと身体が投げ出された。

 

痛みが全身からあり、涙目で周りが見えない。それどころか、指先すら動かない。

 

 

 

「…………」

 

 

 

声が出ず、助けすら呼べない状況ね。

 

それに、現状に思考が追いつかない。

 

 

 

ああ、どうやら私は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『助けないと……ワオ……ひどい』

 

 

 

 

 

どこか遠くから小さな子供の声が聞こえた。

 

そして、よく分からないが、謎の感触が私の前身を覆う。人の手ではなく、石でもない。

 

まるで、全身に魔法を覆ったような感覚。

 

 

 

全身強化より、フィアナの回復魔法に近い。

 

それに、おそらく気を失う前の激痛が和らいでいく。

 

 

 

魔素の量に変化はない。

 

だから、私が回復魔法に目覚めた訳ではないようだ。

 

それに、カノンと光の精霊によって、回復を受けた訳でもなさそう。

 

それなら、これは?

 

 

 

立った今、私の前身を覆うこの力は一体どこから……?

 

視界は暗闇が広がっている。魔法で明かりをつけることは難しい。

 

 

 

それに、今ここで声を出すと謎の存在が逃げてしまう気もする。

 

だから、今は気を失ったふりを続けて、少しでも多くの情報を知るべきでしょうね。

 

 

 

『――戻って……もっと、もっと』

 

 

 

声を聞くも、断片交じりで何をしているのか分からない。

 

けれど、私の大怪我を心配し、治す為に必死に魔法を使おうとしているのは分かる。

 

既に、起きているのを黙っているのは申し訳ないけれど、まだ、足首が曲がっている。

 

これでは、歩けない。だから、もう少しだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の存在による回復が起きて数時間程、経過した。

 

前身の痛みは消え、体力も全回復したようだ。

 

これなら、もう問題ないでしょうね。

 

 

 

『どうしよう……ぼく、治したのに……消えちゃうのはヤダよ……』

 

 

 

この状況で、どう話しかけようかしら。

 

やっぱり、今目を覚ましましたっていう対応が一番かしら。だけど、まるで私が亡くなったような対応をされている中、それをすればゾンビ扱いされないかしら?

 

 

 

少なくとも、自我がある存在みたいだけど、これだけの回復魔法を使えるのなら、攻撃魔法だって使えるかもしれない。少しでも不審な動きを見せれば、吹き飛ばされるかも。

 

 

 

ああ、どうしようかな。

 

何を選んでも失敗する気がする。

 

 

 

「――――ここは……。」

 

『ひっ――! お、起きたの? ど、どうして――?』

 

「――汝の声が私を呼んだのです。貴方が私を呼ぶものですか?」

 

 

 

客観視すれば、痛い発言をする少女だ。

 

だけど、今この状況では違うはずね。

 

上手く、勘違いしてくれないかしら?

 

 

 

『復活するなんて、あなたは。貴方様は……』

 

 

 

そうよ、聖女とでも勘違いしなさい。

 

聖女なら並外れた回復力をもっていてもおかしくはないわ。

 

 

 

「せ、」

 

 

 

そう、私は聖――

 

 

 

『世界の女神様ですね!』

 

「は、はい⁉」

 

 

 

女神?

 

誰が?私が女神?

 

 

 

何を血迷ったことを言うのかしら。

 

――どうやら私以上におかしな子に出会ってしまったようです。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。