いつもの昼休み食堂にて
「はい、楯無さん。あーん」
「一夏君。私1人で食べられるんだけど……」
「あーん」
「あ、あーん」
「どうですか?」
「え、ええ。美味しいけど……」
「どうしました?」
楯無さんは何故か辺りを見回していた。どうしたんだ?
「どうして私はここにいるのかしら?」
「ん?彼女と一緒にお昼を食べたいからですよ。おかしいですか?」
「そこはまだいいのよ……何で私は一夏君の膝の上に座っているの?」
「俺がそうしたいからです」
「周りが物凄い見てるんだけど……いいの?」
「何言ってるんですか?見せ付けてるんですよ」
「何で!?」
俺の言葉に楯無さんは声をあげるが気にしない。
今の俺は毎日が充実しているから気分がいい。だって最高の彼女を手に入れたからだ。まあ、付き合うまでは色々とあったけど……それもいい思い出にしよう。
「ごふっ……あ、甘いわ……」
「ぶ、ブラックコーヒーを……」
「ガハッ……!」
「ああっ、砂糖を吐いて倒れた!?」
「だ、誰か衛生兵!衛生兵!」
何故か俺達の周りが騒がしいけど気にしない気にしないっと。
「「「「「ぐぎぎぎぎ………」」」」」
一方、離れたところでは箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラは血の涙を流しながら呪い殺さんと言わんばかりに睨み付けている。
「さ、寒い……」
「あ、暖かい物を……」
「あ……急に眠く……」
「ね、寝たらダメよ!しっかりして!!」
普段の気温とは違う寒さに震え出す女子達。片や激甘空間片や極寒空間を展開しているので落ち着かない上に食べられない。
女子達は思った誰かこの状況を打開して欲しいと願った。
とそこへ―。
「これは一体何の騒ぎだ!」
この学園の救世主が現れた。世界最強の織斑千冬である。
「織斑先生?」
「どうしました?」
「生徒達から苦情があって来たのだ………まあ、待て」
そう言い千冬は徐にチョークを取り出してある一角に目掛けて投げた。
スコーン!!
「「「「「ひぎゃあああああっ!!?」」」」」
ドンガラガッシャン!!
千冬が投げたチョークは箒達の額に命中し断末魔の悲鳴をあげながら、床に倒れ込み痛さでのたうちまわる。
「うむ、まずは苦情の1つを片付けたな。次はお前達だ」
「俺達ですか?」
「そうだお前達がイチャついているから落ち着いて食事が取れないと苦情が来ているのだ。何か弁論はあるか?」
「べ、別にイチャイチャしている訳では―」
「はい、イチャついてました。すいません」
「ちょっと!?」
一夏が謝り、焦る楯無。彼女の脳裏には出席簿の痛みがちらついた。
「そうか、ほどほどにするんだぞ」
「わかりました」
「………あれ?」
千冬の対応に楯無は唖然とした、いつもならここで出席簿が振り下ろされる展開を覚悟していただけに驚きを隠せない。
「大丈夫ですよ。織斑先生にちゃんと誠意をみせれば怒りませんし、注意で終わりますよ」
「そ、そう……」
「お前の場合は逃げてばかりだったからな、潔くしてればまだマシだったのだぞ」
「は、はあ……」
楯無は自分の行いを思い返す瞬間であった。
「とりあえず織斑、更識を下ろせ。まずはそこからだ」
「えー、ダメですか?」
「ダメだ。イチャつくなとは言わんが場所を考えろ」
「わかりました。それじゃ失礼します」
千冬に言われて渋々従い楯無をお姫様抱っこして立ち上がり隣の椅子に座らせた。
「あっ……」
「随分と残念そうな声を出すのだな、更識は」
「ち、違います!こ、これは……」
「ふふ、お前のそんな顔を見れて私は気分がいいぞ」
「で、ですから――」
「ははは」
「一夏君は笑わないで!」
楯無は顔を紅くして弁論するが叶わず、織斑姉弟にからかわれてお昼休みが終わるのだった。
――――――――――――
「はあ……」
次の日になり、ちょうど1時間目の授業が終わっての休み時間楯無は頬杖をつきながらため息を吐いた。
「どうしたのたっちゃん?」
「あ、薫子ちゃん」
「元気がないな〜。まさか織斑君と喧嘩したの?」
「してないわよ………ただね……」
「うん」
「私、ちゃんと一夏君の彼女になれてるかしら?」
「はい?」
楯無の言葉に薫子は耳を疑った?周りが羨むカップルなのに悩む必要があるのかと……。
「それってどういう事?」
「いやね、一夏君が私に色々尽くしてくれてるのよ。そこはありがたいんだけど………私のやる事がないの」
一夏と恋人同士になり最初は楯無自身舞い上がっていたが、付き合ってからは一夏が色々と自分に尽くしてくれるので助かってはいるがこのままではいかないと思って、恋人に何かしてあげたいが完璧過ぎてつけ入るスキが全くない為、何も出来ない。
「贅沢な悩みだね〜」
「あのね〜、私だって一夏君に何かしてあげたいのよ。何かある?」
「そうだね〜、一番手っ取り早いのは体かな?」
「何よそれ?」
「だって、たっちゃんナイスボディの持ち主じゃん。織斑君なら大喜びでしょう」
「それはやめて………泣きたくなるから……それしかないみたいになっちゃうじゃない」
「そ、そう……」
薫子の言葉にガックリと肩を落とす楯無。
「と、とりあえず他の事を考えよう」
「そうね、そうしましょう」
「ところでたっちゃんの今日の下着の色は何かな?」
「いきなり何聞いてるのよ!?」
「彼氏持ちのたっちゃんだもん。気になって仕方ないのよね」
「それとさっきの事とどう繋がっていくのよ!」
「今度の新聞の特集にしようかなと。ねっ、お願い」
パンと手を合わせて頼み込む薫子。
「いやよ、誰が教えるものですか」
「え―っ?ケチ……」
「ケチで結構」
「話は聞かせてもらったわよ!」
「「えっ?」」
突然の声に楯無と薫子は声をあげる。
「会長の下着チェックをするなら私達も手伝うわ」
「ちょ、ちょっと……」
「彼氏の為にえっちぃ下着を着けてるんでしょう」
「ち、違うわよ。今日は普通の……って、何言わせるの!」
クラスメイト達の言葉に楯無は思わず言いそうになるのを赤面しながら慌てて言葉を止める。
「あー、あやしい〜」
「皆、やるわよ〜」
「脱がせ脱がせ〜!」
「剥け〜。身ぐるみ置いてけて〜」
「きゃあああっ!?やっ、やめっ……引っ張らないで!?」
女子達の手を何とか振り払いながらも最低限は守る楯無。学園最強であるにも関わらず暴走するクラスメイトに手を焼くだけである。
「か、薫子ちゃん助けて!」
流石にヤバいと感じた楯無は隣にいた薫子に助けを求めたが―。
「カメラはばっちりよ!皆お願い!」
「裏切り者―――!!」
カメラを構えてシャッターチャンスを伺う薫子に思わず叫ぶ楯無。
「ありがとう黛さん」
「流石新聞部のエース」
「心強い援軍よ!皆、後一押しよ」
「いやあああっ!?」
薫子の裏切りにクラスメイト達の士気が上がり、楯無の攻撃に勢いが増していく。
(マズイわね……)
楯無は思わず冷や汗が流れた。このクラスメイトの追撃をかわす正直自信ない、ISを使えば問題ないが一般生徒相手にそんな事は出来ない上に生徒会長が校則違反は問題外だ。
(ど、どうしよう……)
楯無は焦る、このままで身ぐるみ剥がされて下着姿を見られてしまう事は確実だ。楯無は祈る誰かこの場を解決出来る人物が来て欲しいと―
「失礼します。楯無さんいますか?」
教室のドアを開けて声を掛ける人物がいた。一夏である。
「えっと……取り込み中ですか?」
「う、ううん。何か用?」
楯無は助かったと内心ホッとしながらも一夏に駆け寄る。
「はい、お弁当です。お昼は忙しいって言ってたので作って来ました」
そう言い、一夏はお弁当を楯無に手渡した。
「あ、ありがとう」
「それじゃ、俺はこれで放課後にまた会いましょう」
「ええ。また後でね」
手を振りながら一夏を見送る楯無。
「一夏君……」
一夏の気遣いが嬉しく楯無は思わずにへらと頬が緩む。
がしかし―
「諸君、これより更識楯無の異端審問会を行う!異論はあるか?」
「「「「「ありません!!」」」」」
「はあっ!?」
クラスメイト達によって、幸せに水を差す展開に変わる。
「では、検察官罪状を述べよ」
「ち、ちょっと…」
「はい、このクラスの生徒会長である更識楯無は唯一無二の男性操縦者である織斑一夏に手作り弁当を受け取り―」
「ええい、話が長い!簡潔にまとめよ!」
「彼氏の手作り弁当をもらって羨ましいであります!」
「うむ、わかった。私もこの目で見ていた。判決は有罪!」
「何でよ!?」
「黙らっしゃい!彼氏のいない私達の目の前でイチャイチャされてムカつくんじゃあ――――!!」
「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
裁判長の役割をする女子の言葉に同意する女子達、この時クラスの女子達の心は1つになっていた。
「では、下着チェックと彼氏のお弁当皆で試食会の刑よ」
「はあ!?ちょっと!!」
「それでは、刑執行だあああっ!」
「「「「「お――――っ」!!」」」」
掛け声と共に一斉に楯無に襲いかかるクラスの女子達。
「何でそうなるのよ―――――!!!」
一夏に貰ったお弁当を抱えながら必死に逃げようとかわしていく楯無。
女子達の嫉妬と怒りと憎しみは学園最強を追い詰めるだけの力はあると――この時、楯無は悟った。
「失礼します。すいません大事な用を忘れてました」
再び一夏が教室に戻ってきた。
「あ―……お取り込み中ですか?なら、後でも―」
「大丈夫!聞くから今すぐお願い!」
一夏は空気を読んで帰ろうとするのを楯無は慌てて駆け寄り引き留める。
「は、はあ……」
楯無のあまりの必死さに一夏は驚いた。
「クッキーを焼いたんですよ。クラスの皆さんでどうぞ」
『っ!!』
一夏の言葉にクラスの女子達の視線は手に持っている袋に集まる。
「わかったわ、ありがとう皆でいただくわ」
「はい。じゃあ今度こそ失礼します」
そう言いパタパタと走っていく一夏。
『…………』
「こ、これはあげるから見逃して!」
『っ!?』
ポイッとクラスメイトの女子達にクッキーの袋を投げた。
「ちょっと、あんた食べ過ぎよ!」
「ふふん、早い者勝ちよ!」
「私はまだ食べてないのよ。1枚寄越しなさいよ!」
「嘘つけ!すでに5枚も食べてるじゃない!」
等々、女子達は一夏のクッキーを1枚でも多く食べようと取り合いに発展してしまい阿鼻叫喚な様子に変わる。
「た、助かったわ………」
そんな様子を見ながら、楯無は安堵しながらもいとおしそうにお弁当を抱き締めていた。
結局、この争いは担任が来るまで続きお説教を喰らうのでした。
――――――――――――
「はあ……」
放課後になり、生徒会室に向かう楯無は思わずため息を吐いた。
(結局、さっきの件はうやむやになっちゃったな……)
楯無は一夏に何かしてあげたくて薫子に聞いてみたがいい答えは返って来なかったので頭を悩ますのであった。
「あっ、お姉ちゃん」
「簪ちゃん」
そんな楯無の目の前に最愛の妹である簪と出会った。
「……元気ないね。一夏と何かあったの?」
「ううん、何もないわよ」
「ため息ついてたから、何かあったの?」
「ええ、実はね―」
楯無は簪に悩みを話した。
「って訳なの、何かない?」
「え、えっと……」
「うん」
「か、体かな……?」
「簪ちゃんまで同じ事言わないで……」
まさか妹まで親友と同じ答えを聞いて泣きたくなる楯無。
「ご、ごめんなさい。相談に乗れなくて……」
「いいのよ……体って言われたら、飽きたら捨てられるイメージしかないわ……」
「い、一夏なら大丈夫だよ。そんな事はしないと思うし!お姉ちゃんの事見捨てないよ!」
遠い目をし出した楯無におろおろしながらもフォローする簪。
「それに体って言われてもねえ……凄いのよ一夏君は」
「えっ?どういう事?」
「あのね」
楯無は簪に近付き耳打ちする。
「えっ?ふええぇぇ――っ!!」
楯無から聞かされる内容に耳まで顔を真っ赤にして叫ぶ簪。
「す、凄いね……一夏」
「そうよ。あっちまで主導権握られたら、私何も出来ないじゃない」
「そうなると打つ手ないよね……」
「ええ……このままだと織斑先生みたいになりそうで怖い……」
「ほう……私みたいとはどういう事だ?」
「「っ!?」」
突然、背後から声が掛かり、楯無と簪はビクッと反応する。
「「お、織斑先生!?」」
血管を浮き上がらせた千冬がいた。どうやら怒り気味である。
「更識姉、さっきの発言はどういう事だ?」
「い、いえ別に何でもありません」
「ほう、ではゆっくりと話し合う事にしよう。拳を交えてな」
そう言い千冬は楯無の襟を掴み引き摺る。
「ごめんなさい!悪気はなかったんです」
「はっはっは、何を言ってるかわからないな」
「いやあああっ!助けて――!殺される――!」
「大袈裟だな。調教じゃない話し合うだけだ安心しろ」
「今、調教って言ったあ!?か、簪ちゃん、一夏君を!一夏君を呼んで!私、織斑先生に殺されちゃうから!!」
「さあ、逝くぞ。今なら第一アリーナだな」
「いやあああっ!」
泣きながら許しをこう楯無に千冬は耳を貸さずにズルズルと引っ張っていくその表情は嬉々としていた。
「あわわ……」
自分の姉が地獄の門番に連れ去れていくのおろおろしながら見送るしか出来ない簪でした。
その後、第一アリーナに訓練でやって来た生徒達は正座して唯一無二の男性操縦者から説教を受ける世界最強と泣きながら男性操縦者の背後に隠れる学園最強の姿を目撃するのでした。
――――――――――――
「ふう……」
夜になり、夕食を済ませた俺は部屋に戻りゆっくりとしていた。もちろん膝の上に楯無さんを座らせている。
付き合う事になって、部屋を一緒にしてもらっているので本当にありがたい。
「はあ……」
「どうしました?」
俺としては嬉しいが楯無さんは元気がなかった。
「いや、ねえ…」
「何かありました?話せない事なら無理に聞きませんが……」
「私、一夏君の彼女になれてる?」
「はい?」
楯無さんの質問に首を傾げた恋人同士なのに何故そんな事を聞いてくるのかわからなかった。
「いつも一夏君に色々してもらってるでしょう。私も何かしてあげたいんだけど……何も出来ないのよ」
「あー」
なるほど。そう言われれば確かに俺が色々と楯無さんにしてあげても楯無さんから何かしてあげてもらってはいなかったな……。
「だから、尽くしてもらってばかりで不安になるのよ。何も出来ないままでいつか捨てられちゃうんじゃないかってね」
「そんな事ないですよ」
不安げに落ち込んでいる楯無さんを抱き締めた。
「俺が楯無さんにしてあげたいからそうしてるんです。気にしすぎですよ」
「そうかしら?」
「それに責任は取るって言いましたし、見捨てる事はしませんよ」
これは本心からだ。最初は嫌な思いはしたが徐々に惹かれていってあの修行で楯無さんの見る目が変わったな〜。
「ありがとう一夏君。少しは気持ちが楽になったわ」
「そう言ってくれると嬉しいです刀奈さん」
「もう……そこで本名を呼ぶのはやめてよ」
口ではそう言うが嫌な表情はしていなかった。
「一夏君………」
楯無さんは潤んだ瞳で俺にキスをかわす。
「もしかして甘えたくなりました?」
「うん。いっぱい可愛がって愛をちょうだい」
と両手を広げて誘ってきたので俺は楯無さんをお姫様抱っこしてベッドに連れていき情事に展開するのだった。
「〜♪〜♪」
次の日の朝、楯無さんは嬉しそうにして鼻歌を歌っていた。
「今日は元気ですね」
「もちろんよ。目一杯可愛がってもらったし、悩みも解消できたから体が軽いのよ」
「それは良かった」
うんうん。彼女が元気な姿は俺も嬉しくなるな。
「私も少しずつだけど一夏に尽くしてあげる」
「そうですか」
「だから今日の夕食は私が作るから期待しててね」
「はい、楽しみにしてます」
「じゃあね、一夏君」
楯無さんは軽く俺にキスして自分の教室に向かっていった。
「楯無さん……」
キスした唇を触れて笑みがこぼれる、本当に楯無さんを彼女にして良かったな〜。
「「「「「ぐぎぎぎぎぎ………」」」」」
何故か角の向こうから箒たちが血の涙を流して睨んでいるが気にしない気にしないっと
さあ、今日も頑張ろう!
更に続くかな?