「はあ……」
放課後の生徒会室、今日の仕事を終わらせて楯無さんとゆっくりする為の時間を長くする為に頑張ろうとしていたが……。
「はあ………」
今日は虚さんが元気がない……どうしたんだ?
「はあ……」
さっきからため息を吐いてばかりで仕事がはかどらないな。
「あの、虚さん」
「はい。何でしょうか?」
「何かありました?」
「何か、と言いますと?」
「いや、さっきからため息を吐いてばかりいるんで気になるんですよ」
「す、すみません……」
俺の指摘にあたふたしながらペコペコ頭を下げる虚さんを見て、悩んでますって態度を取っているのはまるわかりである。
「悩み事があるなら聞くわよ虚ちゃん」
「そうですよ。話したら楽になるかもしれませんよ」
「わ、わかりました……お話します……」
俺と楯無さんの言葉でどうやら話してくれそうだ。
「あの、一夏さん」
「はい」
「私は魅力がないのでしょうか?」
「はい?」
虚さんの悩み事に首を傾げた。知的美人のお姉さんタイプの虚さんに魅力がない訳がない、それに楯無さんには負けるがスタイルは悪くないし、普通の男なら声を掛けるくらいなのにな……。
「そんな事は無いと思いますが……何でそんな事聞くんですか?」
「実は先日、弾さんとデートしたのですが………その……」
「まさか進展がなかったとか?」
「はい……」
俺の疑問に頷く虚さん。
「えっと、確認しますが弾と虚さんは恋人同士で間違いないですよね?」
「はい、間違いありません」
「デートも何回もしてますよね?」
「はい何回もしてます」
「具体的にどのくらいまで進んでますか?」
「そ、その……腕を組むまでです」
「えっ?」
人差し指をちょんちょんと合わせて言う虚さんに俺は驚いた。
「それ以上はないって事ですか?」
「え、ええ……キスすら出来てません………」
「マジかよ……」
虚さんのカミングアウトに思わず天を仰いだ。こんな魅力的な女性に手を出さないなんて……どうかしてるぜ!
「おかしいな……弾なら虚さんは好みのタイプなはずなのに手を出さないなんて……」
「確かにおかしいわね……キスくらいならしてもいいんじゃない?」
「そ、そうですよね!わ、私だって年相応の憧れはあるんですよ!なのに……」
「全く、手を出してこないか……」
「困ったわね……」
うーん、これは困った。聞いてしまった手前ほっとく訳にいかないな……。
「とりあえず弾に電話を掛けましょう。原因を聞いて一緒に考えてみますか?」
「それがいいわね」
「お願いします」
俺は携帯を取り出して、弾に電話を掛けると数回のコールの後に弾が出た。スピーカーモードにしてっと。
『はい』
「よう、同じ年上彼女を持つ同士よ。元気にしてるか」
『元気にしてるよ、ったく何の用だよ?』
俺のお茶目なジョークかましたのに随分と不機嫌だな……。
「虚さんの事について何だが……」
『虚さんがどうしたんだよ?』
「最近元気がないんだよ。このままだとこっちにまで影響するんだよ。何か原因はわからないか?」
『さ、さあ……わから』
「わかってるな、さっさと話せ」
『おい!?』
弾の言葉を遮り、俺は強引に進めた。あからさま態度がバレバレだっつうの。
『いやさ、この前の休みにデートした訳だよ』
「ああ」
『その時の虚さんの格好に戸惑っちまったんだよ……』
「格好?どんな?」
『その……ミニスカに胸元が開いた服を着ていたんだ』
「えっ?」
弾の言葉に思わず虚さんを見ると顔を真っ赤にして俯いていた。
『いやさ、いつも清楚な服装してたから急に変わってしまって、俺の事遊んでんのかと疑ってしまったんだよ……』
なるほどな……、虚さんは弾の仲を進展させたくて勇気を出して露出をしてみたが弾には逆効果だった訳か………。
「お前、バカだな〜。多分虚さんはお前に手を出して欲しくそういうの着たんじゃないのかよ」
『そ、そうなのか?』
「俺だったら、そのまま抱き締めてキスするくらい嬉しいぞ」
『お前は進展し過ぎなんだよ!もっと清いお付き合いをだな』
「お前にしては随分と古風だね〜。中学の時は散々彼女欲しいってボヤいていたのにな〜」
『だああっ!?過去を蒸し返すなよ!恥ずかしいだろうが!!』
「それにあんな事やこんな事をしたいって言ってたよな」
『悪いかよ!』
「悪くねえよ、そんな願望ある癖に何でやらないんだよ?」
そう、俺は弾の事をある程度知っているだけに全くの逆方向な展開に正直驚きを隠せない。
『その、なあ……怖いんだよ……』
「怖い?」
『虚さんの事は好きなんだけどよ。本当は手を出したいんだよ、ただがっついて嫌われたりしたら嫌なんだよ』
ヘタレな解答キタコレ!やれやれこれでは進展は望めないな………虚さんが勇気を出しても弾が萎縮しては正直無理だな……。
「それじゃ、ダメだろうよ……」
『わかってるよ!そんくらいわ………』
「やれやれ………」
ちらりと隣の方を見ると俺と弾の会話を聞いて、落ち込む虚さん。進展したいけど弾は手を出しにくいか………弾にとって虚さんは高嶺の華なんだな……仕方ないちょっと演技しますか。
「弾。このままじゃ虚さん可哀想じゃねえかよ」
『わかってるよ!だから俺も悩んでるんだ』
「よし。俺、虚さん口説くわ」
『はあ!?何言ってるんだよ!』
「だってよ。今、チャンスじゃん傷心中の虚さんに優しく口説いて俺の彼女にしようかな?」
『待てやコラ!お前には既に彼女いるじゃねえかよ!何言ってるんだよ!?』
クククッ。かかってるかかってる餌にかかってる。
「俺さ、虚さん好みのタイプなんだわ。知的美人でスタイルもいいし、それに芯の持った女性だから悪くないし、両手に華ってのは良いよな〜」
『ふざけんな、コノヤロー!テメエなんかに虚さんはやるか!虚さんは俺の女だ!!』
「だそうです。虚さん」
『………はい?』
クククッ……ああ、笑いが止まらない。電話の向こう側からきょとんとした顔が想像出来るな。
「だ、弾さん……」
『えっ?何?これ虚さんに聞かれてた?』
「ばっちり、聞こえてるぞ。しかもスピーカーモードだ」
『謀ったな!?シ〇ア!!』
「はっはっは、何の事かな五反田君?」
『くそぉ!パ〇―ジのくせに生意気だぞ!!』
「くせにって何だよ……」
まあ、弾の本心が聞けてこちらとしては収穫かな?虚さんは顔を真っ赤にしてるし、さてもう一押しかな?
「んじゃ、今度の休みにダブルデートしようぜ」
『だ、ダブルデートだと!?』
「そうだよ。せっかくの機会だし楽しまねえとな」
『……何か裏あるな?』
「もちろんだ。今度のダブルデートで進展なかったら」
『な、なかったら?』
「俺が虚さんをもらう。いや、強奪してやる!」
『なにいぃぃぃっ!?ふざけんな―――!!』
「ふざけてない。本気だ!」
『尚更悪いわ!絶対に渡さないからな!』
「ふっ、甘いな……弾」
『な、何だよ……』
俺の余裕の言葉に弾は狼狽えてるな。でも手加減はしないぞ。
「虚さんとは毎日会うんだ。チャンスはたくさんあるんだぜ」
『し、しまった―――!!』
「だから、俺はいつでも口説ける訳だ」
『く、くそぉ……っ!』
「悔しかったら、ちゃんと虚さんの心をしっかり掴んでおけよ。でないといつでも奪ってやるからな(笑)」
『ああ、やってやる!やってやるからな!!覚悟しておけ!』
「はいはい、じゃあ今度の休み楽しみしてるぞ」
『ああ、じゃあな』
弾との電話は終了っと、これくらいやれば大丈夫かな?
「という訳で今度の休みは期待しててくださいね」
「あ、ありがとうございます」
きっかけを作ってくれて嬉しいのか虚さんは何度も頭を下げてきた。
「ねえ一夏君」
「どうしました?」
「虚ちゃんは好みのタイプなの?」
「はい?」
今まで黙ってた楯無さんがこんな質問をしてきた。
「えっと、上手くいかなかったら虚ちゃん口説くって言ってたじゃない。本気なのかなって?」
「あー……」
「お嬢様!?一体、何を!」
「もし、そうなったらどうしようかなって……両手に華状態になったら平等に愛して欲しいな、虚ちゃんとは喧嘩したくないし……」
「あの、もう私を一夏さんの恋人になってる前提で話すのやめてもらえますか?」
「だって、一夏君。女性の扱い上手いし、虚ちゃんならコロッていきそうなんだもん!」
「どんだけ私を一夏さんとくっ付けたいんだアンタは!?私は目移りしないし、揺らがないわ!!」
楯無さんの言葉に思わずツッコム虚さん、微妙に口調が変わっていた。
「楯無さん、確かに虚さんは好みのタイプですよ」
「ほらね」
「なあっ!?」
「でも、俺の中での一番は楯無さんですよ」
俺は楯無さんの手を取り、目を見詰めながらそう言った。
「本当に?」
「もちろんですよ」
「良かったあ〜」
俺の言葉にパアッと明るくなる楯無さん。
まったく……可愛いな。無意識に俺は楯無さんを抱きしめていた。
「い、一夏君?」
「もう、可愛い過ぎる楯無さんが悪いんですよ」
「えっ?な、何を……ひゃん!?い、一夏君。お尻、お尻触ってるよ」
「火が着きました。我慢出来ません」
「ま、待って!虚ちゃんと本音ちゃんが見てるから…、やあん!そ、そこは……らめえ〜」
「何してるんですか!?」
「「え―――っ」」
楯無さんと盛り上がろうしたら虚さんに止められた………残念。
「空気読んでよ虚ちゃん」
「空気読んでくださいよ虚さん」
「何で私が悪いみたいな言い方をするんですか……」
そう言ってため息を吐く虚さん、心無しか顔が紅い。
「そこは本音ちゃんを目隠しして部屋から出るところでしょう」
「更に誰も入ってこないように鍵をかけてくれればもっといいです」
「な、なるほど……って、誰がしますか!」
「「チッ……」」
「舌打ち!?仕事が終わってないのに許す訳―」
「もう終わってるわよ」
「もう終わってますよ」
「えっ?う、嘘!?」
俺と楯無さんの言葉が信じられずに書類チェックを始めた。
「ほ、本当に終わってる……」
「当たり前よ。虚ちゃんがため息ついてる内に終わらせてたわよ」
「仕事が終わりましたし、では早速続きを―」
「させねえよ!」
「「何で!?」」
「イチャイチャするなら部屋に帰ってからしてください!ここではダメです!」
「「ブー!ブー!」」
「ブーイングしてもダメなものはダメです」
「「……ケチ」」
虚さんは俺達のイチャラブを必死に止めてくるのでちょっとイラッとした。
「わかってないな……」
「何がですか?」
「せっかく、火が着いたのに部屋まで戻ってたら気持ちが萎えちゃいますよ」
「そうよ!私もその気になってたのに〜邪魔しないでよ」
「俺はこのまま楯無さんをめちゃくちゃにしたかったのにな……」
「私は一夏君にめちゃくちゃにして欲しかったのに……」
「さっきから何ですか!?私に対する当て付けですか!?」
「いやだな〜、見せ付けてるんです」
「む、ムカツク……」
俺の言葉にイラッとしたのか虚さんは血管マークを浮き上がらせていた。
「だから頑張って弾と進展させてください」
「私達は応援してるからね〜」
「応援されても嬉しくありません!」
と、まあ虚さんをからかって楽しく今日も終わった。今度の休みが楽しみだな。
「私の出番ないよ〜」
そう言えば本音居たんだよな……。
「忘れてたでしょう〜」
うん、ゴメン。とりあえず仕事を終わらせような。
「それは〜無理〜」
さいですか………。
――――――――――――
そして、やって来たダブルデートの日。俺と楯無さんは楽しく歩いているのに対して
「「…………」」
あちらは空気が重い、片や不機嫌、片やビクビクと萎縮しながら静かに歩いているので通りすぎる誰しもが目を背けている。ちなみに不機嫌なのは虚さん、萎縮しているのは弾である。
この理由は数十分前にさかのぼる。
待ち合わせ場所にやって来て、少し待ってから弾がやってきた。
「弾さんおはようございます。今日は楽しみましょうね」
「は、はいぃっ!?」
虚さんは普通に挨拶をしているようだが弾には恐怖を感じたようだ。笑顔だけど嬉しい笑みじゃないから、ビビっちゃうよな………。
「な、なあ一夏……」
「何だよ」
「虚さん、どうしたんだよ?めちゃくちゃ不機嫌じゃねえかよ」
「さあな?俺は知らねえよ」
「いやいやいや、おかしいだろ!絶対、原因知ってるよな!」
はぐらかそうとするが弾は納得いかずに俺に詰め寄ってきた。ちっ、随分と勘が鋭くなったな。
「多分……、休みまでの間に俺と楯無さんのイチャつきを見せ付けてたのが原因かな?」
「うおい!?何してんの!!」
「弾との予行練習のつもりで虚さんに見せ付けてたら火が着いちまって、盛り上がったんだよな」
「ダメだろうが!だから虚さん不機嫌じゃねえか!」
「今の虚ちゃんなら手を出しても大丈夫よ」
「いやいやいや!出来ねえよ!怖すぎるわ!」
「ビビったら負けよ。もし何も出来なければ帰り道で背後からブスリと刺されるかもね〜」
「えっ?何?手を出さなきゃ、命を奪われるレベルかよ!ふざけんな!」
「失礼ね、お膳立てしたんだから後は頑張ってね」
「もう、この時点で心がポッキリと折れてる俺はどうすりゃいいんだよ………」
「「さあ……」」
「なあ、お前ら……実は俺の事嫌いなんだろ!?そうだろ!!」
「はっはっは、バカだな〜。嫌いならとっくに虚さんを俺の彼女にしてるぞ」
「最悪だな!おい!」
「んじゃ、早速いこうぜ」
「そうね、今日は楽しみましょうね」
このままではつまらないのでダブルデートに行動を移す事にした。今日のデート場所はテーマパークだから思い切り楽しむぞ。
「俺、先行き不安なんだけどな………」
と弾の後ろ向きなセリフを言ってくるが聞き流した。
「「…………」」
すでにデート開始から1時間が経過したがまったく雰囲気は変わらなかった………。弾のやつ、今日は狼のような気持ちで固めて来たが今はチワワのようにおとなしくなってしまっている。
「「…………」」
このままでは俺達まで雰囲気が悪くなってしまうのでここは―
「それじゃ、ここから別行動にしましょう」
「はあっ!?」
「じゃ、弾。俺達はこの辺で!健闘を祈る、さらばだ!」
俺と楯無さんは小走りで弾と虚さんから離れた。
「おおい!何とかしてくれよ!逃げるな――――!!」
弾は悲痛な声をあげるが俺達はスルーした。
「ふう、ここまで来ればいいか……」
「そうね、ようやく二人っきりになれたわね」
「それじゃ、俺達も楽しみましょうか」
「ええ、早くいきましょう」
楯無さんは俺の腕を組んでデートを開始した。色んな乗り物に乗ったり途中での休憩所でお互いに食べさせあいをしたりして楽しんだ。弾のヤツ頑張ってるかな?とりあえず様子を見てみるか……。
「うおっ!?」
俺達が弾と虚さんの様子を見に戻ってみたら引いてしまった………。
「…………」
虚さんの周りがどす黒いオーラに包まれていたからである。
「こ、これはキツイ……」
「そう言えば、五反田君はどこに行ったのかしら?」
「そうですね……」
楯無さんと俺は弾を探していると―いた。物陰に隠れて震えていた………何やってんだよ。
「お―い、弾」
「い、一夏か……俺はもうダメだ……」
「ヘタレ過ぎだろうが……虚さん、手がつけられないほど不機嫌になってんぞ……」
「ああなったら私達でも無理よ」
「んな事言われてもよ……」
弾は理由を話そうとして口ごもる………ヘタレだけではなさそうだな………。
「何があったんだ?」
「いやさ、なけなしの勇気を振り絞って虚さんにアタックしようとしたんだが……」
「ああ」
「何故か睨まれました……」
「あちゃー」
弾の理由を聞いて思わず天を仰いだ。虚さん、何やってるんですか………せっかくのチャンスを逃すなんて………。
「それと嫌な視線を感じて何か萎縮しちまってよ」
「嫌な視線?」
「ほら、あそこだよ」
と弾が指を差した先には――
「「「「「ぐぎぎぎぎ……」」」」」
箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラが血の涙を流しながら俺達を睨み付けていた。
「アイツら、ここまで着いてきたのかよ………」
「他の人達は知らないが鈴が物凄い睨んでるんだけどよ。俺、何かしたか?」
「大方、俺達の幸せが大っ嫌いだがら睨んでるんだろうよ……まあ、直接的な被害はないからまだマシだけどよ……」
「最悪だな………」
「ああ……」
俺と弾は深々とため息を吐いた。外野はともかく、今は虚さんを何とかしないとな……今更ながら煽りすぎたのが正直悔やまれる。
「何か挽回できる物はないか?」
うーん。と思考を凝らすと……。
「ねえ、あれがいいんじゃない?」
楯無さんが指差したのは観覧車だった。
「なるほど、いい場所がありましたね」
「でしょう」
楯無さんの名案に嬉しくなり思わず頭を撫でてあげた。最初はびっくりしていたが目を細めて受け入れてくれる。
「弾、これが最後のチャンスかもしれないぞ」
「チャンスって、大丈夫なのかよ………」
「俺と楯無さんできっかけを作るから後は弾次第だな……」
「わかった。頼む」
「ああ」
俺達はグッと拳を合わせていざ観覧車に向かうのだった。
観覧車に乗る頃には大分日が傾きだしていた。もう少しで夕方になる。
「観覧車に乗るのは久しぶりね」
「そうなんですか?」
「そうよ。小さい時に連れて行ってもらった時以来ね」
「へえ―」
楯無さんはそう言ってはしゃぎながら外の景色を眺めている。その隣で俺は楯無さんの横顔を眺めていた。
(美人だけど可愛いんだよな……)
俺は楯無さんの新たな魅力に惚れ直した。本当に飽きないよな。そうしている内に頂上に上がる。
「わぁー、すごい!」
夕日に照らされながら変化していく街の景色に楯無さんは感嘆の声をあげた。
(綺麗だ……)
ちょうど、夕日が楯無さんの顔に当たり輝きを放つ……。
「刀奈さん」
「何?……んっ」
楯無さんが振り向いた瞬間を狙って俺はキスをした。
「んっ……もう、強引なんだから……」
「刀奈さんが綺麗で魅力的だからキスしたくなるんです」
「ズルい、そう言われたら怒れないじゃない」
「もう一度します?」
「うん、お願い」
目を閉じて顔を上げた楯無さんに俺は深いキスをして応えた。
(私は何してるのでしょうか………)
虚は自分の仕出かした行動に自己嫌悪に陥っていた。
(せっかく弾さんが勇気を出してくれたのに……私の馬鹿……)
ちらりと隣を見るとびくびくしながら様子を伺う弾に更にヘコんでしまう。
(これで嫌われてしまったらどうしましょう……もう手遅れに近いですが……)
虚は弾の気持ちを裏切ってしまったと思い、目を閉じる。
(もし嫌われたら、一夏さんの彼女にして貰いましょう。私の事を好みのタイプと言ってましたし、お嬢様も受け入れてますし問題ないですよね?)
既に嫌われている事を前提にそんな事を考える虚。転んでもタダでは起きないのである。
(あら?……ええ―――っ!!?)
ふと上を見て思わず驚いてしまう。一夏と楯無がキスをしている光景を見てしまったからだ。
(私もああなりたい……)
虚の中で沸々と何かが沸き上がる。
(弾さんにリードして貰おうと考えていたのが間違いでしたね。私の方が年上だし、自分からリードしないと……)
虚は決意し、弾の方を向く。
「弾さん!」
「は、はい!?……んんっ!?」
虚は弾の頬を両手で掴み引き寄せて唇を奪う。
「う、虚さん……?」
「今日はすいませんでした。お詫びもかねて私のキスで許してくれませんか?」
「ゆ、許すも何も……えっと……」
「今のは私のファーストキスです。今度は弾さんからお願いします」
虚は目を閉じて唇をつき出す。
「は、はい!」
弾はそれに釣られるように虚の唇にキスをした。
「やっと、してくれましたね弾さん」
ようやくキスが出来て虚に笑みが溢れた。
「その様子だと上手くいきましたね虚さん」
「ええ、おかげさまで」
観覧車から降りて来た虚さんと弾の様子を見て俺は上手くいったみたいだ。
「あれのおかげで吹っ切れました。ありがとうございます」
「そうですか」
虚はそう言いペコリと頭を下げた。楯無さんと弾はわからないって顔をしてたな。
「それから一夏さん。今までは見せつけられて来ましたが今度は私達が一夏さんに見せ付けてあげます!」
ビシッと指を指してそう宣言する虚さん。
「ふふ、着いてこられますか?」
「むしろ追い越してみせますよ」
「楽しみにしてます」
「もちろんです」
「「???」」
俺と虚さんのやり取りに訳がわからずに楯無と弾は顔を見合せて首を傾げている……まっ、いずれわかるな。
「では、今日の記念にどうぞ」
虚さんと弾にある物を渡した。
「まあ」
「なあっ!?」
弾はある物を見て驚く、ある物とは弾と虚さんがキスしている写真である。
「い、いつの間に撮ったんだよ!?」
「んー、楯無さんときっかけを作った後に目撃者したからばっちりカメラに収めたぞ」
「お、お前!何て事してくれんだよ!?」
「馬鹿だな。タダで相談に乗ってやるだなんて言ってないぞ?」
「騙しやがった……」
「人聞きの悪い事言うなよ……むしろ相談料だと思えよ」
弾は怒り心頭だが俺は別にどうでもいいしな。
「んじゃ、俺達は先に帰るわ。後はごゆっくりどうぞ」
「泊まるなら連絡してね、外泊届け出しておくから」
後は任せたと言わんばかり俺と楯無さんは帰りについたのでした。
「ち、チキショー!またやられた!」
「まあまあ、私としてはせっかくの記念になる物を貰いましたし、そんなに怒る必要はないですよ」
「ですが……」
「弾さん……」
虚は怒りが治まらない弾の手を握り。
「今日は私達の仲を進展する事が出来たからよしとしましょう」
「わ、わかりました……」
「それでは帰りましょう。せっかくですから弾さんの家に泊まるのも良いですよね?」
「えっ?」
虚の言葉にドキリとする弾、この日はお泊まりにはならなかったがそれなりの進展は出来たようだ。
その後、一夏と虚による恋人イチャイチャ対決が勃発するのはまだ先である。
ちょっとエッチなお姉さんをかいてみようとしたら、肉食女性に変わってしまった………。あれ?おかしいな?
とりあえず続編はまだあるかな?
その前に恋物語の更新頑張ります。