ありふれた異世界でMadness combat(ボチボチ再開) 作:ディセプティコン大好き
ダダダダ…ダダダダダダダダ…ダダダダ
「撃て!撃って撃って撃ち続けろ!」
「リロード!」
「グレネード!」ドーーン
エリートクルー達は、まずトラウムソルジャーを片付つつ
ベヒモスにグレネードや銃弾を浴びせ、メルド達の援護と生徒達の避難させようとするが
一人だけ勇敢(ただのバカ)なのがメルド達のところに向かう
それは、光輝だった
「おい!お前!引き下がれ!」
「待ってくださいメルドさん!! 俺達もやります! あの巨大な化け物の方がヤバいでしょう!」
「馬鹿野郎が!! 勇気と無謀をはき違えるのはやめろ! あれは最強と謳われた冒険者達が束になって挑んでも適わなかった恐ろしい奴なんだぞ!! さっさと行け!!」
「っ…それでも、貴方を見捨てて行く事なんてできない!」
傍から見れば仲間を大切にする勇敢な戦士に見えるだろうが、彼のあり方をよく知っているものからすれば、その正義に振り回されている赤子のように見えた。
要するに、良く状況も考えられずにそんなことが言えたものだということである
「おい!光輝!テメー!戻れ!」
エリートクルー113が止めにいく
「離してください!メルド団長達が!」
「この!ばか野郎!」
光輝を殴る
「ぐっ……!」
「テメー!よく周りをみろ!やみくもに動けば命とりになる!だからこそ慎重に動けこのバカ!今お前らができることは、一旦ここは団長達に任せて、体制を整えることだ!」
「っ、体制なんて建て直してる暇ないだろう! それよりも、俺がここで奴をくいとめれば…」
「お前!まだ周りが見えないのか!後ろをよく見ろ! あんな状態の生徒達を放っておいて死にに行くのか!? 勇者ならもっと周りに気を配れよ!!」
「ぐっ!!」
勇者はその言葉を聞き一瞬迷いを見せるが、皆を安心させるにはコイツをどうにかしないと結論つける
「おい!こっち弾なくなってきたぞ!」
「こっちもだ!」デザートイーグルに持ち変え、トラウムソルジャーをなぎ倒す
が、その提案には応じなかった
「それでも、俺は残らなければならない! 俺がやつを倒さなければならないんだ!」
「っ……テメー…本当にどうかしてるな!」
M-249を撃ちまくりトラウムソルジャーをなぎ倒す
勇者が残ると発言した以上、尚更置いて後退する事が出来なくなったエリートクルー達は、何とかこの頭の固い視野狭男をどうにかしようと説得を試みた
「伏せろ!」
グレネードが3個降ってきてベヒモスの頭上で爆発する
が決定打になってない
「グレネード、残り1」
「HQ!HQ!」
『こちらHQ、どうした?』
「こちら、迷宮探索部隊!トラブルが発生!生徒がパニック状態を起こしているものもいればバカなことをするやつもいる!至急増援を!」
『無理だ!今こっちは作戦βの準備中、増援部隊をそちらに向かわせることはできない!』
「ならどうすれば!」
『そいつらを見捨て、そこからの撤退』
「……了解、最終手段として撤退をすることにする」
通信を切る
「この!」
ナイフでトラウムソルジャーをなぎ倒す
「ちっ!倒しても倒しても沸いてきてやがる!」
「取り敢えずは道を開けるのが最優先だろう。そのまま継続してくれ」
「ATPエンジニア達は恐らくパニックになった生徒のケア、及び戦闘のバックアップだろう。113は…天之河の説得だろうな」
「たく、あんなやつ気絶させてでもつれてくればいいのに」
生徒達を導きながら、湧き出る敵に立ち向かっていたエリートクルーとATPソルジャー達は、悪態をつきながらも着々と階段へと進んでいた
「キャァァァァァァ!?」
声がした方を向くと
自分達より前に出てしまっていた生徒の1人がトラウムソルジャーに襲われている様子が目に入った
「危ない!」とデザートイーグルを構えるが残弾数が少なくすぐに弾切れをする
「待ってろ!今助けに……!」
しかし、エリートクルー助けに行くそれよりも早く、突如として謎の隆起によってトラウムソルジャーが突き飛ばされ、傷を負わされずにすんだ。
何事かと周囲を見渡すと、おそらくそれを発動させたかのように腕を前に押し出したまま、生徒の元へと向かうハジメの姿があった
「大丈夫!? 怪我はない?」
ハジメはやけに冷静さだと思われるような素振りで順次に対応していく。ゆっくりと立ち上がらせ、理性を保つように呼びかける
「怖いと思うけど、ここを乗り切れば絶対に生きて帰れる! だから頑張ろう。自信もってよ。だって僕の何倍もチートなんだから!」
傍から見れば少しばかり嫌味にも聞こえるが、ハジメなりの精一杯の声援であり、今の彼女にとっては勿体ないほどでもあったので良しとしよう。エールを送りながら、また1人襲おうとしている骸をせり出して彼方へ飛ばす
「よくやった南雲ハジメ!錬成を応用するとは、すごいな」
「あはは……そんなことないですよ…銃の方は弾切れになりましたし…」
「いや、そんなことある…スゲーよお前は」
「の褒め言葉に、ハジメは少し顔を綻ばせる。やがてトラウムソルジャーの数が減り、一方向に集中的に集まる形になったため、比較的守りながら戦う事が楽になった
すると、あちこち動き回りながら行動していたエリートクルー225、その場にへたりこんだ生徒を雑に担ぎながら回収していたATPソルジャー42が合流し始めた
「生徒の回収完了」
「あとは、あの勇者御一行だけだが…」
「…油断はするな、ここは未知の領域…いつ何が襲ってくるかわからない状況だからな」
「じゃあ、やっぱ勇者とか団長も早くこっち側に来てもらわねぇとじゃないか?」
「…だな…何名かここに残り生徒の保護を…」
「いや、僕が行きます」
「……出来るのか?南雲ハジメ」
「…はい。僕は、確かに後方でしか役に立てないかもしれませんけど、そんな僕でも、何かしら出来ることがあるかもしれません」
「ふむ、確かに錬成師は戦闘力が低い反面、技術的な面ではトップクラスと言えるだろう。つまり、それを利用するんだな?」
「はい。肝心の天之河君を説得できるかは分かりませんけど、やるだけやってみる価値はあると思います」
「……」
数秒考え
「そうか…なら、行ってこい!必ずあのバカと団長をつれてな!」
「はい!わかりました師匠!」スタスタスタスタ
「だから、師匠と呼ぶな!…全く…立派になったな」
「さてと…俺らはこのなんちゃって救世主をお守りしますか」
「「「「「「おう!」」」」」」
一方、ベヒモスを食い止めているメルド達は、障壁を展開しながら奴の猛攻を防いでいた。
ベヒモスの突進はそれはそれは強烈なもので、1回1回の攻撃の振動で橋にまでダメージがあり、崩れ始めていた
「ぐっ! もう持たんぞ!! 光輝! 早く撤退しろ!!」
「嫌です! 貴方を置いていく訳には行きません! みんなで生き残るんです!」
「く、こんな時にまでワガママを…」
「おい!メルド!どうするんだ!」
メルドは後悔していた。何故なら、この頑固さを作ってしまったのは自分だと思っているからだ。
と言うのも、まだまだ経験の浅い若者ということもあり、褒めて伸ばそうとした事により、勇者は自分の力を過信してしまうようになってしまったのだ
「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」
「そうだよ! 早く皆の所に行こう!」
「光輝、流石にヤベぇだろ。脳筋の俺でもわかるぜ!」
状況が分かっている2人はともかく、頭の固い龍太郎でさえも、撤退するように呼びかける。
が、全くの聞く耳を持たない
「いや、それはダメだ! みんなを助ける為にはこいつを倒すしかない! メルドさんも助けて皆で帰るんだ!!」
「…光輝…お前…」
「状況に酔ってんじゃないわよ! この馬鹿!」
「くっ!どうしようもないバカだな!」
「…雫ちゃん…113さん…」
香織達も万が一のために残ってはいるが、これ以上の待機は無理だと本能的に分かっているのか、自然と体が後ろへと下がっている
勇者の説得が不可能だと、皆が諦めかけた時
「天之河君!」
「な、南雲!」
「南雲ハジメ!なんでおまえが!」
突如として自分達の前に現れた南雲ハジメにそれぞれ顔を驚愕に染めるが、時間が無いと分かっているハジメはすぐさまに勇者に指示を出す
「早く撤退を! 皆の所に行くんだ! 君がいないとこのままじゃ!」
「いきなりなんだ? それよりも、なんでこんな所にいるんだ。ここは君がいていい場所じゃない。ここは俺に任せて、君は」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
「!?」
ハジメはとうとう勇者の言い分に腹を立てたのか、思い切り胸ぐらを掴み、必死の形相で怒鳴る。
「あれが見えないの!? 皆パニックになってる!! エリートクルーさんやATPエンジニアさんやATPソルジャーさん達が気を戻そうとしてくれてるけど、この状況じゃもっとリーダーがいないと間に合わない!!」
勇者はまたもや悩み始める。しかし、それでも考えが変わらず、ハジメに抗議しようとすると、それよりも早くハジメがまくしたてる
「皆の不安を消し飛ばせるのは天之河君の特権でしょ!? 皆の事を助けるつもりなら、君は撤退するべきだ!! もっとよく周りを考えて!!」
そしてようやく、みんなの悲鳴や苦痛な表情で我に返った天之河は、頭を勢い良く左右に振ると、力強く頷き返した。
「わかった。直ぐに行く! すいません、メルドさん、先に」
「下がれ!」
メルドへ断りを入れようとした途端、限界を迎えた障壁が壊され、苦痛の声と共に吹き飛ばされる。
辺りを包む暴風に身動きがとれない中前を見ると、至近距離まで接近したベヒモスが、漸く貴様らを食い潰せる、と言わんばかりの憎たらしい笑みを浮かべ、勇者達を見下ろす
その顔を確認した途端
「南雲ハジメ!足を捕らえてくれ!その間に俺はありったけの弾をやつにぶちこむ」
「分かりました! 錬成!!」
ハジメが唱えると同時に、先程の謎の隆起したものがベヒモスの足の邪魔をし、少しだけ奴がよろける
「伏せろ!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
よろけた隙をM-249を撃ちまくる
しかし、ハジメが作った錬成物を容易に蹴飛ばし、さらに進撃せんと足を進める
「クッ、やっぱり足を止める為には無理か。だったら、埋めることが出来るなら!」
そう言ってハジメは、先程よりも大きく力を込め、ベヒモスの足を埋め尽くさんほどの錬成物を作り始めた
「南雲ハジメ!すまない!俺はこいつらを避難させる!無理するなよ!」
「わかりました!」
そして、ハジメは、もう片方の足を埋め始める。耐久性は少ないものの、足止めをするには充分過ぎる手だった。その為、前両足を封じ込められたベヒモスは、アホの子のように見え、先程までの威圧感は何処へやら、となっていた
「今のうちに撤退するぞ、この橋がいつ崩れるかわからないからな」
今度はエリートクルー113の指示通り、全員が従い、ハジメ達の奮闘中に香織の治癒によって回復したメルド達と共に交代し始めた。
いつベヒモスが再度立ち上がるかは分からないが、このまま行けば全員辛うじて助かる。
なんとかトラウムソルジャーと戦っていたエリートクルー達の方に戻ってこれたメルド団長達
エリートクルー達と協力した優花の呼びかけで奈々や妙子を中心とした幾人かの生徒が冷静さを取り戻したようで、周囲に声をかけながら戦っている
「待って下さい! まだ、南雲くん達がっ」
「坊主の作戦だ!ソルジャーどもを突破して安全地帯を作ったら魔法で一斉攻撃を開始する! もちろん坊主がある程度離脱してからだ! 魔法で足止めしている間に帰還したら、上階に撤退だ!」
「なら私も残ります!」
「ダメだ! 撤退しながら、香織には光輝を治癒してもらわにゃならん!」
「でも!」
なお、言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる
「坊主の思いを無駄にする気か!」
「ッ……」
メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなく光輝である。少しでも早く治癒魔法を掛け回復させなければ、ベヒモスを足止めするには火力不足に陥るかもしれない。そんな事態を避けるには、香織が移動しながら光輝を回復させる必要があるのだ。ベヒモスはハジメの魔力が尽きて錬成ができなくなった時点で動き出す
「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟」
香織は泣きそうな顔で、それでもしっかりと詠唱を紡ぐと淡い光が光輝を包む。体の傷と同時に魔力をも回復させる治癒魔法だ
「よし!階段の方のトラウムソルジャーはなんとかへらしたぞ!」
「皆!続け!階段前を確保するぞ!」
光輝が掛け声と同時に走り出す。
ある程度回復した龍太郎と雫がそれに続き、バターを切り取るようにトラウムソルジャーの包囲網を切り裂いていく
そうして、遂に全員が包囲網を突破した。背後で再び橋との通路が肉壁ならぬ骨壁により閉じようとするが、そうはさせじと光輝が魔法を放ち蹴散らす
クラスメイトが訝しそうな表情をする。それもそうだろう。目の前に階段があるのだ。さっさと安全地帯に行きたいと思うのは当然である
「待て!お前ら!まだ南雲ハジメがいるんだぞ!」
「そうよ!南雲くんを助けなきゃ!たった一人であの怪物を抑えてるの!」
香織のその言葉に、殆どが何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。 やはり、すぐにハジメが無能という固定観念を無くすのは難しいようだ
だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かに南雲ハジメの姿があった
「なんだよあれ、何してんだ?」
「あの魔物、上半身が埋まってる?」
次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす
「そうだ!坊主がたった一人であの化け物を抑えているから撤退出来たんだ!前衛組!ソルジャーどもを寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法準備!もうすぐ 南雲の魔力が尽きる、アイツが離脱したら一斉攻撃で、あの化け物を足止めしろ!」
ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。中には階段の方向を未練に満ちた表情で見ている者もいる
無理もない。ついさっき死にかけたのだ。一秒でも早く安全を確保したいと思うのは当然だろう。しかし、団長の「早くしろ!」という怒声に未練を断ち切るように戦場へと戻った
「はぁ、はぁ……」
なんとか、ベヒモスを止めることが出来たが時間の問題だろうと考えているハジメ
「坊主!準備が出来たぞ!」
「(よし!最後の!)錬成!」
同時にハジメが最後の一手を指し、撤退し始めあと少しと言うときだった
(…………は?)
それは、ハジメの逃走の援護をするべく、エリートクルー達は、弾丸を生成し銃に込め構えるときだった
それが目に付いたのはほんの偶然だったのだろう
『その人物』はドス黒く濁った瞳を浮かべ、笑っていた。
まるで、ハジメを虐める時の……いや、それよりももっとおぞましい、人の皮を被った何かのような表情に、弾を込めスライドすることを忘れたエリートクルー達の頭の中に様々な疑問が浮かび上がってくる
皆が必死の中、何故あいつは笑っている?
あいつはどういう人間だった?
南雲ハジメとの関係は?今までどんなイザコザがあった?
いや、それよりも……
"何故、あいつは自身の適正である風属性では無く、火属性の魔法を放とうとしている?"
そして、其々の疑問の答えがパズルのピースのようにはまっていき、 出来上がった最悪の図を認識した瞬間、 色とりどりの魔法が放たれたと同時にエリートクルー225は叫びエリートクルー達はなんとか止めようと『その人物』に体当たりをしようとする
「南雲ハジメ!逃げろ!」
「やめろぉぉぉぉぉ!」
「テメェェェェェェ!」
だが、彼女の警告とエリートクルー達の行動は遅かった
「……え?それ、どういう?…ってわ!」
空をかける数多の魔法の中の一つの火球がわずかに軌道を曲げて、ハジメの足元に着弾したのだ!
そして、ハジメは空に大きな弧を描きながら吹っ飛んでしまう
三半規管をやられ平衡感覚が狂ってしまっているが、駆け出した数秒後
ドカァァァァァ――――ン!!!
ベヒモスがハジメの所に飛び込んできた!
少しでも判断が遅れていたら、ハジメは下敷きになっていただろう
しかし、その攻撃で橋全体が震動し、着弾点を中心に物凄い勢いで亀裂が走り、メキメキと橋が悲鳴を上げる。雫と優花と香織そして、エリートクルー達がハジメを助けるべく、走ってこようとするが、その振動で全員転んでしまう
そして遂に……橋が崩壊を始めた
度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えたのだ
「グウァアアア!?」
悲鳴を上げながら崩壊し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモスだが、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと断末魔を木霊させながら消えていく
ハジメはもなんとか脱出しようと這いずるが、しがみつく場所も次々と崩壊していく
「う、ぐぉぉぉぉぉ!」ありったけの力を使い上ろうとする
「南雲ハジメ!手を!」ATPエンジニアは、手を伸ばし、ハジメの手をつかもうとする
「し、師匠……」エンジニアの手をつかもうとするが
しかし、その瞬間
メキメキメキメキ………ドン!
足元が崩れ重力に従って墜ちてしまう
「な!」
「(そ、そんな…)」
絶望の表情を浮かべるハジメが対岸のクラスメイト達と技や技術を教えてもらった師匠と慕うエリートクルー達の方へ視線を向けると、泣きそうな表情で今にも飛び出そうとして、光輝や龍太郎や奈々や妙子に羽交い締めにされている香織や雫、優花が見え、他のクラスメイト達は青褪めたり、目や口元を手で覆ったりしている。メルド達騎士団の面々も悔しそうな表情だ
そして、ハジメは、奈落の闇へと落ちていく
「南雲ハジメェェェェェェェェェ!!!!!!」
響き渡り消えゆくベヒモスの断末魔。ガラガラと騒音を立てながら崩れ落ちてゆく石橋
そして……
瓦礫と共に奈落へと吸い込まれるように消えてゆくハジメ
その光景を、まるでスローモーションのように緩やかになった時間の中で、香織はただ見ていることしか出来ない自分に絶望する
そして、急速に時間の流れが現実にまで戻ったのを感じた彼女は……
「離して!ハジメくん達の所に行かないと!約束したのに!私がぁ、私が守るって!離してぇ!」
飛び出そうとする香織を、光輝は必死に羽交い締めにする。香織は細い体のどこにそんな力があるのかと疑問に思うほど尋常ではない力で引き剥がそうとするが、だからといって、断じて離すわけにはいかなかった。今の香織を離せば、そのまま崖を飛び降りるのが容易に予想出来るくらい、必死の形相だったからだ
「香織!君達まで死ぬ気か! 南雲はもう無理だ! 落ち着くんだ!このままじゃ、体が壊れてしまう!」
「ちょ!お前!その言葉をかけたらダメだろ!」
それは、光輝なりに精一杯の言葉だったのだろうが、今この場にいる一人の少女には聞かせるべき言葉ではなかった
「無理って何!? ハジメくんは死んでない! 行かないと、きっと助けを求めてる!」
香織はますます暴れる
確かに、誰がどう考えても深い深い奈落の底に落ちてしまった南雲は助からないという思考に行き着くだろう
しかし、その現実を受け止められる心の余裕は、今の香織にはなく、反発して、更に無理を重ねるばかり。龍太郎や周りの生徒もどうすればいいか分からず、オロオロとしてしまう
メルド団長がツカツカと歩み寄り、香織の首筋に手刀を落とした。ビクッと一瞬痙攣し、そのまま意識を落とす香織
ぐったりする香織を抱きかかえた光輝がキッとメルド団長を睨み、文句を言おうとした
その時、
ピピピピッ!ピピピピッ!ピピピピッ!
エリートクルーの通信機がなる
「……こちら、迷宮探索部隊、HQ応答を」
『こちらHQ、今作戦βの準備は終わった、いつでも出れる……あとらそちらの被害状況の報告を』
「被害状況報告……南雲ハジメ…奈落に落ち安否不明」
『……そうか…はやく、こちらに戻ってこい…オーバー』
「作戦β?」
「なんだよ、作戦βって」
「ねぇ、まさかあなた達…ハジメくんを見捨てるつもり?」
生徒の一人がエリートクルーに聞く
「…あぁ、こちらの任務は完了した…撤退する」
と階段に向かう途中
「あ」
「どうした、ATPソルジャー22」
「やり忘れてたことがあった」
「そうか…俺もだ」
エリートクルー達は一斉に銃口を檜山に向けた
次の瞬間!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
「ギャァァァァァァァ!」
檜山の腕と足にエリートクルー達は銃弾を撃ち込む
「な!やめろ!」光輝はエリートクルー達の発砲を止めようとするが
「邪魔だ!」腹パンをし気絶させ
また撃ち込む
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
「ギャァァァァァァァ!」
「檜山!テメーが殺したハジメは、こんな痛さじゃないんだぞ!」
アサルトライフルを撃ちつくし
ハンドガンに持ち変える
バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!
なるべく殺さないように、治療魔法で治るくらいまで撃ち続ける
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「ちっ、弾切れか」
ハンドガンの弾も撃ち尽くした
「おい、回復できるやつ…こいつの怪我を直してやれ」
「は、はい!」
すぐさま治療魔法で治す
「……諸君…撤退するぞ」
そのままエリートクルー達は、階段を上がっていく途中
「待て!」光輝が止める
「なんだ?」
「なぜ、なぜ檜山を撃った!」
「……檜山が南雲ハジメを殺したからだ」
「な!?」
「「「「「「……!?」」」」」」」
「な、何変なこと言ってんだ! 俺があいつ殺した? ちげぇよ! でたらめなこと言うな!」
「でたらめなこと?だと?」
檜山に近づく
「もう一回痛い目にあわないといけないらしいな!」
銃を向ける
「ひっ!」
「ま、待ってくれソルジャーさん。檜山が彼らを攻撃したなんてありえない。だって俺たちは仲間だ。仲間を殺すなんてあり得ないじゃないか。南雲が死んだのがショックなのはわかるがあれは不幸な事故だ。仕方がなかったんだ」
「事故?俺が事故と殺人を見間違えるバカだと思うか?」
「動転しているのは分かるが、今はそんな事よりも脱出を優先するべきだ」
「……それもそうだな」
階段を上がる
光輝は混乱している
彼が住む理想の世界では、『仲間が仲間に害を与える』ことなどあり得ないから
光輝が混乱しているところに
龍太郎が現れ
「そのよ……突然過ぎて、俺も何が何だか分からないけどよ……今は南雲兄も言っていたように皆を引っ張って、全員で脱出するべきだろ? 俺もサポートするから頼んだぞ、親友?」
クラスのリーダーポジションにいる者達の中で、光輝以外に唯一動ける龍太郎が言葉をかける。
「……そうだな、早く出よう」
それを受けた光輝はクラスメイト達の方を見やる。
目の前でクラスメイトが一人、死にクラスメイト達の精神にも多大なダメージが刻まれている。
茫然自失といった表情で石橋のあった方をボーと眺める者達や「本当に檜山がハジメを殺したのか?」などと議論する者達がいて、中には「もう嫌!」と言って座り込んでしまう者もいる
ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なのだ
「皆! 今は、生き残ることだけ考えるんだ! 撤退するぞ!」
光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイトたちに脱出を促した。メルドや騎士団員たちも生徒たちを鼓舞する
約三十階程登ったことから、そろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた
クラスメイト達の顔に生気が戻り始め、安全とそれに刻まれた魔方陣が壁を動かすためのものだということを確かめたメルド団長が魔方陣に魔力を流し込むと、扉がクルリと回転し奥の部屋へと道を開いた
その扉を潜ると、そこは元の二十階層の部屋だった。
次々と安堵の吐息を漏らす中には泣き出すクラスメイト達の中には泣き出したり、へたり込んだりする者もいた。光輝達ですら壁にもたれかかり今にも座り込んでしまいそうだ
エリートクルー達は、辺りの警戒するものやタバコを吸う者がいる
しかし、ここはまだ迷宮の中。低レベルとは言え、いつどこから魔物が現れるかわからない。完全に緊張の糸が切れてしまう前に、迷宮からの脱出を果たさなければならない。
メルド団長は休ませてやりたいという気持ちを抑え、心を鬼にして生徒達を立ち上がらせた
「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」
少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げて封殺する
光輝が疲れを隠して率先して先を行き、道中の敵を、騎士団員達が中心となって最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ。
そして遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も立っていないはずなのに、ここを通ったのがもう随分昔のような気がしているのは、きっと少数ではないだろう
だが、一部の生徒――未だ目を覚まさない香織を背負った光輝や龍太郎、奈々と妙子、そして恵里と鈴などは暗い表情だ
そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長
そして……ハジメの死亡報告もしなければならない
憂鬱な気持ちを顔に出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった
ホアドルの町
「そうか、南雲ハジメが檜山によって殺害されたか…」
「はい、迷宮探索部隊の証言から出た証言です」
「そうか……惜しい人をなくしたな」
「……」
「しかし、我らの作戦βの変更はなしだ」
「…わかっています」
「では、これより作戦β…『拠点移動』を開始する」
めっっっっちゃ書いた!
ありふれマッドネスコンバットにメタルギアを入れていいか否か
-
いいよー
-
ダメだね~
-
ええけど、エリートクルー達だけに使わせて
-
ええけど、みんなに使わせて