紅魔族なベル君(リメイク版)   作:36ヶ崎

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あらすじにも書きましたが、以前書いた同タイトルのリメイク版です。


プロローグ

 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか? 

 

 数多の階層に分かれる無限の迷宮。凶悪なモンスターたちの巣窟。

 富、栄誉、名声の全てを求めて、命の危険など顧みない阿呆な冒険者に自分も仲間入り。

 

 手に持つ獲物と、信頼出来る仲間と共にモンスターをばったばったと薙ぎ倒した末に到来するのは、モンスターに襲われる美少女との出会い。

 迷宮に響く悲鳴、怪物の悍ましい咆哮、間一髪で飛び込み翻る金属音。

 

 怪物は倒れ、残るは地面に座り込む可愛い女の子と、クールにたたずむ格好のいい自分。

 ほんのりと赤く染まる頬、自分の姿を映す滲んだ美しい瞳、彼女の心に芽吹くのは淡い恋心。

 

 そんなことを考えたっていいじゃないか。

 自分に都合の良い想像と妄想。あり得ない話だなんて誰が言った。

 可愛い女の子と仲良くしたい。綺麗な異種族の子と恋愛がしたい。

 

 こんな粗野で野蛮な冒険者だって、若い雄なのだ。

 

 ダンジョンに出会いを、訂正、ハーレムを求めるのは間違っているだろうか? 

 

 

 結論。

 僕が間違っていた。

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「ほぁあああああああああああああああああああああああっ!?」

 

 少し邪で、阿保らしい考えを抱いて冒険者になった結果、僕は今、死にかけている。

 具体的にいうならば、牛頭人体の筋肉ムキムキモンスター、『ミノタウロス』に追いかけられている。

 

 なんでミノタウロスが5階層に!? 

 

 それは紛れもなくイレギュラーだった。本来ならば、ミノタウロスはダンジョンの13階層から始まる中層にいるべき存在。

 にも関わらずにあろうことか、このミノタウロスはその掟を悠々と超えて、上層であるこの5階層にやって来てしまったのだ。

 

 ミノタウロスはその巨大な体躯に見合わないスピードを見せ、着々と獲物を追っていく。

 Lv2にカテゴライズされるミノタウロスのならば、潜在能力ポテンシャルならば、今この瞬間にも自分を殺せるだろう。何故そうしないのか。それは、今この場で圧倒的弱者である自分を追いかける事に楽しみを見出しているからに他ならない。

 追いかけられる側としては堪ったものではないが、それが有難いのもまた事実。

 

 そんな無駄な事を考えられるくらいにベルの頭は冴えわたっていた。

 

 他の皆とは違い、黒髪ではなく真っ白な純白の髪をしている自分が()()()である証は、この赤い瞳くらいだと思っていたが、どうやら紅魔族特有の知能の高さも受け継がれていたらしい。

 しかし、そんな高い知能も今この場では全くと言っていいほど機能しない。この状況を打開する策が思いつかないのがいい証拠だ。

 めぐみんなら思いつくのかなぁ、などと天才と呼ばれていた同郷の少女に思いを馳せる。

 

 しかし、現実は無情にして非常。

 死にものぐるいで走ってはいたが、ここは初めて来た5階層。軽い気持ちで来てしまっていた為、ここの地図など当然頭の中にインプットされていない。

 

 ──だが、ここで挫ける訳にもいかない。

 

「我が名はベル・クラネル! やがて紅魔族随一の冒険者となる者!」

 

 震える足腰に鞭を打ち、今にも涙が出そうなのを我慢して声を絞り出す。

 紅魔族にとって強さとは格好良さなのだ。

 間違っても情けなさではない。

 無謀とは知りつつも、ナイフをもう一度力強く握りしめる。

 こんなところでくたばっては、送り出してくれた里の皆んなに示しがつかない。それに何より、こんな自分を拾ってくれた神を独りにさせたくなかった。

 

 そう奮起した、その時であった。

 

 

『グブゥ!? ヴモォオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 自分を今にも殺さんとしていたミノタウロスの体が突如として、何等分にも切り刻まれたのだった。

 刻まれた線に沿ってミノタウロスの体のパーツはズレ落ちいき、血飛沫、赤黒い液体を噴出して一気に崩れ落ちた。

 当然、すぐそばにいた僕はそれをモロに浴びることになる。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 牛の化け物に代わって現れたのはオラリオ一とも言われる剣士にして、女神にも勝るとも劣らない美少女。

 その特徴的な金色の長い髪は、風の無い筈のダンジョンの中でさえも靡きそうな程に美しく、綺麗だった。

 

(……あ)

 

 それはまさしく吊り橋効果というやつだった。

 このダンジョンにおいて、出会いを求めるなどという愚行のバチなのか。

 それとも、可愛い女の子を助けてハーレムを作るなどという女性を敵に回す発言が何処ぞの女神様の怒りに触れたのか。

 

 兎にも角にも、僕はこの女性──アイズ・ヴァレンシュタインにどうしようもない程惚れてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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