大怪盗・ブロワアルセーヌ   作:赤黒22

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私は史実全く知らないし、ゲームの方もエンジョイ勢です。

〜後述〜

サブタイトル名を変えました。


第1走

「引退しようと思う」

 

「・・・・・・今、なんと?」

 

「引退しようと思う・・・・・・これでもう7回目だぞ」

 

 

 

 私の名前はアル。引き籠もりである。訳あってマルセイユのトレセンを不登校になってからもう3年、一人暮らししている姉の家に居候している。

 

 私の姉はヨーロッパで1番と言ってもいいウマ娘だ。

 

 名はブロワイエ。凱旋門賞等の重賞を総ナメにしてきた。スゴいウマ娘。そんな姉を持つ私も当然ウマ娘なのだが、私は走ることが嫌いだ。先程言った通り数年前にトレセンから逃げてきた。忘れもしない。そう、あれはいつものようにクラスメイト達と併走をした後だった・・・・・・」

 

「お前は一体誰と話して、何を言っているんだ・・・・・・。現実逃避してないで、話の続きを」

 

「嫌だ!聞きたくない!あーあーあーあー」

 

 私は耳を完全にペタンと伏せて、姉の言葉を遮った。

 

私が先に起きて、いつものように2人分の食事を用意して、姉が起きてきて、一緒にご飯を食べて。

 

 食後のコーヒーを淹れようとしたら、姉から少し話があると真面目な顔をされた。

 

 日常は姉の爆弾発言によって掻き消えた。姉が引退する?あのブロワイエが?これは世界を揺るがす大ニュースであるが、私にとっては死活問題なのだ。

 

 姉は困ったような顔をして、言葉を続けた。幾ら耳を塞ごうが、ウマ娘の聴力は良いのだ。

 

「突然、走ることへの熱が冷めてしまったのだ。それに比例するように、トレーナーとしての裏方の仕事に興味が沸いた。もう大事な人達や周りには話してある。アル、伝えたのはお前が最後だ。いや、もう1人いたな・・・・・・」

 

 姉はとても真剣な顔で、自分の意志を打ち明けた。あの姉が、あのブロワイエが何故こうもレースへの熱を失ったかは・・・・・・妹だからだろうか、少し分かる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・昂る相手が、いないの?」

 

 ・・・・・・やはり、姉妹だから分かるのだろう。アルの言う通り、もはやヨーロッパに私と対等に戦えるウマ娘はいない。直近のレースは15連勝中であり、全て3バ身差をつけた勝利であった。

 

 極めつけは、この前のレース後だった。

 

 化け物。恐怖や憧れ、嫉妬という感情は常に肌に感じてきた。だが、レースが終えた後、他のウマ娘達の顔には自分と同じ生物を見ている目では無かった。完全に自分に線を引いていた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そ、っか・・・・・・お姉ちゃんも、私と、か・・・・・・」

 

 アルは何かを察したような顔をした。

 

 アルはウマ娘のレースに天武の才があった。179cmと私と同じく恵まれた体格。レースを読む賢さ、体の柔らかさを活かしたスピード。そして()()()と、私に負けない程のレースへの愛と熱量。

 

 アルが今のようになってしまう前は、こいつはとてもレースが好きなウマ娘だった。

 

 突然トレセンを抜け出し、私の所に転がり込んできた時、アルの顔は私の知っている妹の顔ではなかった。

 

 何がアルをここまで別人にさせたのか、今の私には分かる。

 

「私は、頂点に立った」

 

「・・・・・・」

 

 未だに耳を伏せているが、きっと聞こえているだろう。私は話を続けた。

 

「勝った、勝った、勝った。勝ち続けた。走った。走った。走った。走り続けた。その後に何が残ったと思う?上からの景色は、何が残ったと思う?」

 

 

 

「「何も無かった」」

 

 あの時の、アルが私の所に来た時と同じ顔をしている。綺麗な顔を歪ませた、絶望の顔だ。

 

 私とアルは、強すぎた。ウマ娘として格が違かったのだ。私はレースで勝ち続けて気がついた。頂点の景色は、とてもつまらなかった。戦える者がいなくなって、誰も追いつこうとする気も無くて、他のウマ娘を積み上げて上から見た景色は、残酷とも言えた。

 

 もう充分だと思った瞬間、私は走ることへの熱を失っていた。人生で初めて走ることに感情を感じなくなった。

 

 だが同時に、ある気持ちが芽生えた。私達姉妹の唯一であり、決定的な差だ。

 

「確かに、これは私達ウマ娘にとっては残酷な気持ちだな。アル、お前とシンクロしているように今なら気持ちが分かる」

 

「だがな、アル」

 

「私は、()()()()()()は失ってはいない。」

 

「・・・・・・」

 

 アルは顔を顰めて何を言っているんだという顔をした。

 

「トレーナーだ。私は、自分の手で自分と戦えるウマ娘を育てたい」

 

「無理だよ」

 

 即答だった。とても冷静な顔でアルは続ける。

 

「お姉ちゃんを、ブロワイエを超えるウマ娘なんてこの世には居ないよ。アメリカの方のウマ娘にも勝ったし、そもそも世界最高峰のレースが出来るヨーロッパで1番強いんだよ?一体誰がお姉ちゃんに勝てるんだ・・・・・・」

 

 その通りだ。私はアメリカのレースにも出て、海の向こうの強豪達を全て黙らせてきた。アルの言う通り、ヨーロッパで最強の私に敵となるウマ娘は存在しないかもしれない。

 

 世界を知らないお前は、そう思うだろう。

 

「お前だよ、アル。お前が走るんだ」

 

「無理だよ!」

 

 机を叩いて立ち上がったアル。らしくない、少し怒気が篭った叫びだった。

 

 私が鍛えたアルなら、私と戦えると真剣に言った。既に私に近い実力を持っているだろうが、あの国で鍛えれば私と、いや私を越えられる。

 

 だがアルは走る事も、ウマ娘レースへの熱も失いかけている。3年前のあの一件で、アルは変わってしまった。

 

「お姉ちゃんも知ってるでしょ。私はもう走らない、走れない。あんな想いをするなら、私はウマ娘として生まれたく無かった。そんな気持ち、お姉ちゃんには分からないでしょう・・・・・・」

 

 例の件を思い出したのか、少しづつ覇気を失い力無く座り直した。

 

 正直アルは私より重症だろう。私より年齢も幼く、ウマ娘としてとても大きな谷底に落ちたのだ。アル本人では無いが、そのとても辛い体験は私も心が傷んだのだ。本人はとても、ウマ娘として本能を呼び覚ます事は無いと思っていた。

 

 だが、希望はある。

 

「私はお前の気持ちの全てを知る事は出来ない。ウマ娘として、本能を失ったお前の気持ちは。だが、アル。お前はまだ若く、健康的な身体がある。後お前に足りないのは、気持ちと()()だけだ」

 

 今思えば、お前を潰したのは私の責任でもあるのだろう。昔から仲の良い姉妹だった。時間あれば一緒に走り続けた。レースも一緒に見た。お互いにレースへの熱と愛を深めていった私達。

 

 先に私がデビューして、お前も後を追うはずだった。そしてあの一件が起きた。転がってきたお前を受け入れた私も、今思えば間違っていたのかもな・・・・・・。

 

 恐らく完全に無くなっていなかったウマ娘としての本能を奪っていたのは、きっと私だ。私が勝ち続ける事によって、欲求が満たされた。完全にそれが無くなって、続け様に私も同じ場所に立ってしまった。

 

 これは私の罪。ブロワイエとしての傲慢な罰。

 

 そして、これからは姉としての妹へのプレゼントだ。

 

「10秒だ」

 

「・・・・・・え?」

 

「今から10秒数える。昔のように()()()()をしよう」

 

「!?」

 

 少しだけ、昔のような顔になったなアル。

 

 私は少し嬉しくなった。

 

「捕まったら、お前には来月から日本の中央トレーニングセンターに通ってもらう」

 

「う・・・・・・ウソでしょ、お姉ちゃん?」

 

「何、心配するな。向こうには話をつけておく。安心しろ」

 

「話が通じない・・・・・・!?」

 

「10・・・・・・9・・・・・・8・・・・・・」

 

 ヒュン・・・ッ

 

 その大きな身体には見合わない静かな足音で、アルは寝間着のまま私の前から消えた。

 

 プルルル・・・

 

『はい、ブロワイエ様』

 

「今アルが出ていった。もう追いかけていいぞ」

 

『10秒待つという話では?』

 

「大丈夫だ。恐らくもうこのマンションにはいないからな」

 

『え?部屋はマンションの最上階ですが・・・・・・』

 

「アルは階段を降りるのが得意なんだ。前に話してくれたよ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、とな」

 

『はぁ、左様で・・・・・・失礼します。・・・・・・何だと!?もう駅の付近までっ!申し訳ありませんブロワイエ様、これにてっ』

 

 アル捜索隊との連絡が途絶えた。さてこれから忙しくなるぞ。まずはアルを捕まえに行かないとな。

 

「待ってろアル。私も直ぐに・・・・・・とは言えないな。ウマ娘のトレーナーは簡単になれるようなものでは無い」

 

 アルを無理やり動かしたんだ、私も本気で有言実行にかかる。

 

 ・・・・・・彼女に話をつけとかないとな。

 

 

 

 マンションの30階から見えるパリの景色は、今日も美しかった。

 

 

 

 アルが捕まったのはそれから1週間後。お金も無く、ボロボロでお腹を空かせた状態の妹を見て、かなり心が傷んだのは、言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京都は府中。ここにはウマ娘トレーニングセンター、「トレセン学園」や「中央」と呼ばれる、日本最大にして最高のウマ娘教育機関がある。

 

 数千人のウマ娘がこの場所で、「トゥインクルシリーズ」で輝く為に日夜仲間たちと切磋琢磨している。

 

 そんなトレセン学園を仕切るのは当然トップである理事長という職であるが、生徒達を束ねるのは生徒会長という役割だ。だが、この学園の生徒会長はただの生徒としての顔では無く、学園で最強の座に就くものというのがここの常識だ。

 

 皇帝・シンボリルドルフ。それが今の学園生徒会長・・・・・・即ち、最強のウマ娘の名である。

 

 伝説の七冠ウマ娘・シンザンに次ぐ二人目の七冠ウマ娘であり、勝利より三度の敗北を語りたくなるとは有名な話。威風堂々としたオーラ、自信の表れである勝負服等、名実共に学園どころか日本最強のウマ娘と言っても過言ではない。

 

 そんなシンボリルドルフと肩を並べる・・・・・・いや最近で言えば彼女を超えているであろうヨーロッパの王者・ブロワイエが引退を表明した。突然の電撃引退、そして突然のトレーナーへの転身発表。

 

 世界中で話題の嵐、その中心となっているブロワイエと、日本最強のシンボリルドルフは面識があった。

 

 

 

 

 

「思ったより元気そで安心したよ、ブロワイエ」

 

『ああ、実は嬉しい事というか、楽しみが出来てね。突然の電話で済まないな、シンボリルドルフ』

 

 放課後、生徒会の仕事を終えた時に、渦中の彼女から電話がかかってきた。驚いたが、出ない理由も無いのでこうして話をしている。

 

「例の、トレーナーになるという話かな?」

 

 ブロワイエの現役引退。これにはとても驚いたし、何より悲しかった。彼女と、ターフの上でレースをする事はないと思ったら、ライバルをまた一人失ってとても残念な気持ちになった。同時に、トレーナーになるという話を聞いてとても興味が湧いた。聞いてみたかったのだ。どうしてそんな決断をしたのか、と。

 

『まぁ、そうだね。これからトレーナーとして勉強をする。新しい挑戦は何時でも楽しいものさ。だけど、一番楽しみなのは、それじゃない。今日連絡したかった内容に関係するものさ』

 

「ふむ、詳しく聞こうか」

 

 どうやら彼女は何か大事な用があるらしい。だが、真剣な顔の裏に、子供のような楽しさを抑えられない感じを捉える事が出来る。引退と聞いたから、少しは悲壮感に暮れていると思ったが、それは感じなかった。

 

『私に妹がいることは覚えているかい?』

 

「ああ。覚えているとも」

 

 ブロワイエには妹がいるらしく、彼女もまたウマ娘らしい。ブロワイエのように恵まれた体格を持ち、ブロワイエの力強い走りを王道とするならば、ブロワイエ曰くその妹の走りは「邪道も邪道だが、とても美しい走り」と前に言っていた。

 

 だが、数年程前に少し精神的に問題を起こし、走る事を辞めてしまったと聞いた。

 

『妹・・・・・・アルをね、もう一度走らせる事に成功したのさ』

 

 パソコンの画面に映るブロワイエは、嬉しさを隠す気もない様子で、満面の笑みでそう言った。「走らせる」というワードに、何かとてつもない恐怖を一瞬感じた気がするが、気の所為だろう。

 

 それから事の顛末を少し聞いた。

 

 妹の、アルが数年前に何が起こったか、自分の所に来た妹を甘やかしてしまった事、自分も走る事に熱が無くなってしまった事、だがレースへの愛は捨てきれず妹達のような次の世代を育てたいと思った事。私は彼女達本人では無いし、こうして画面越しの話でしかないが、ウマ娘として色々と感じる事のあった話であったと思う。

 

「・・・・・・そうか。君の話は分かったが、本題とは関係が?」

 

『ああ、アルを捕まえて走らせる・・・・・・走る気にさせたんだが、彼女を元にいたマルセイユのトレセンに戻すのはどうかと思ってな』

 

 精神的な問題を抱える原因となった場所には戻すのは、論外だ。本人を含めて、誰もそれは望まないだろう。

 

 それはそうだと思い、少し喉を潤す為に紅茶を口に・・・・・・。

 

『だから、君のいる日本の中央トレセン学園に入学させる事に決めたんだ』

 

「ブゥウハッ」

 

『大丈夫かい?君でもそのような一面もあるんだね』

 

「い、いや、ゲ、ゲホッ」

 

 私はブロワイエの爆弾発言に思わず紅茶を器官に入れてしまった。だが、これは彼女が悪いだろう。彼女は、それほどの事を言った。

 

「・・・・・・君は、ブロワイエだ。ヨーロッパで敵無し、アメリカを蹴散らし、日本でも私達と熱い戦いをした、名実共に世界最強のウマ娘だ」

 

『だった。が今は正しいね』

 

「そうだったな。そんな君の妹が日本に来る?何の冗談だ・・・・・・」

 

『年齢的に中等部なのだが』

 

「ますますマズイじゃないか・・・・・・」

 

 トゥインクルシリーズは、中等部も高等部も出走できる。デビューする時期はそれぞれ違う。デビュー戦で実力を認められたウマ娘から入れる弱肉強食なのだ、トゥインクルシリーズは。

 

 勿論中等部からデビューしているウマ娘もいる。というか、今年や来年がとても実りの良い世代で話題になっているし、私達上級生やシニア級のウマ娘達も一目置くような者ばかりなのだ。

 

 私達ウマ娘は速ければ、強ければ年齢など関係無くお互いを認める事が出来るだろう。たが一部は面白く思わないウマ娘も当然いるのだ。それが、フランスから鳴り物入りで来た中等部で、あのブロワイエの妹です、なんて。

 

「すごくお腹が痛くなってきた・・・・・・」

 

 口には出せないが、色々と厄介な気しかない・・・・・・。一番の気掛かりは、

 

『実力を心配しているのかい?』

 

「よく分かっているじゃないか」

 

 ウチも負けてないが、フランスの一流育成機関でトレーニングをしてきたウマ娘。ここに入るウマ娘達は皆幼い頃からトレーニングを受けて来た者たちが全てではない。トレーニングを受けて来た、ブロワイエの妹。反感を買う事になるのが、目に見えている。

 

 Eclipse first, the rest nowhere.唯一抜きん出て並ぶ者なしとはいうが・・・・・・。

 

『大丈夫。アルがマルセイユにいたのは半年間だけだよ』

 

「そうなのか?」

 

 半年間・・・・・・。ならば問題は無いのか・・・・・・?

 

『特にそれ以外はトレーニングもしてないさ』

 

「別に幼い頃からトレーニングをしてても構わないのだが、まぁそれなら」

 

『昔から私と遊んでばかりだったさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()頃はすごく可愛かった。・・・・・・すまない、その話はまた今度にしよう、時間が来てしまったようだ』

 

 探偵と怪盗・・・・・・、ケイドロのようなものだろうか?

 

「ああ、忙しい中ありがとう。まだ全然色々と聞きたいことだらけだし、未だに頭の中が整理出来てないが」

 

『ハッハッハ。アルは今、学生として基本的な事を学んでいる。日本語以外は完璧だから、安心してくれ』

 

「・・・・・・ああ。アルにも良ければ伝えておいてくれ、日本のウマ娘は君にも全く劣らないよ、とね」

 

『必ず伝えておくよ、オー ヴォワール、シンボリルドルフ』

 

 ブロワイエとの連絡が途絶えた。

 

 彼女は大きな大きな嵐をまた吹き起こした。今年や来年度の新入生達は特に選りすぐり、新たな時代の一つに必ずなるだろう。

 

 色々と心配事はあるが、ブロワイエの妹とも良い刺激を与えあってほしいものだ。

 

 いずれは、私とも戦える程に・・・・・・。

 

 

 

 シンボリルドルフは静かに微笑み、生徒会室を後にした。

 

 綺麗な月が見える程、外はもう暗くなっていた。こんな綺麗な夜は、なんだが怪盗゙でも現れそうだな、と変な事を想いながら。

 

 

 

 後にシンボリルドルフは、この日二つの失敗と後悔をしたという。

 

 一つはブロワイエとの通話・・・・・・特に最後の方をよく聞いていなかった事。ブロワイエと鬼ごっこをして、逃げ切る。これがどういう事を意味するか。

 

 二つ、゙怪盗゙が出そうだな、という考えをしてしまった事に世の盗人達に謝りたいと思った。

 

 本物の゙大怪盗゙というのは、そんな感情を浮かぶ事すら許してはくれない。

 

 奪われたら、そんな事すら感じない程空っぽになるのだから。

 

「もし過去に戻れるとすればどこか?前ならあの時のジャパンカップ、と言いたかったが、今ならブロワイエと通話をした時と言えるね。とりあえず彼女に数時間程、説教をしたい。主に彼女の妹の事についてね。・・・・・・思い出したら胃が・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜・・・・・・日本の代表的な花」

 

 とうとうやって来てしまった。この日が。今からでも帰りたいのだが、お姉ちゃんは許してくれるだろうかダメですね分かりました。私は校門の前・・・・・・学園を間近にして一歩も動けてない。先程から生徒と思われる他のウマ娘から、ヒソヒソゴニョゴニョと言われたり後ろ指をさされているが、気にしない・・・・・・。気にしない・・・・・・。

 

 そういえばこの桜という花は、すぐに散ってしまうという。

 

「私も直ぐに散りたいなーなんて、アハハ」

 

 この桜というのは目に入ると涙腺を強く刺激するのだろうか?涙が止まらない。

 

「あ、あの〜」

 

 ん?

 

「転入生・・・・・・ですよね?フランスの方から来た。確か名前は・・・・・・、あっ、スペシャルウィークさん、サイレンススズカさん、おはようございます」

 

 校門の前で立ち尽くしていると、緑の色のスーツを着た女の人に話しかけられた。ここでウマ娘ではなく人間を見たのは初めてだ。とても綺麗な顔していて、今も他の生徒達に笑顔で挨拶をしている。

 

『あっ、えっとなんて言ってるんだろ』

 

 日本語、結局全然わからなかったな。でもお姉ちゃんから教わったとっておきの言葉があるんだ。迷ったらこれを言っておけば大丈夫だっていう、魔法の言葉。

 

 だから、緑色の人に私は笑顔で言ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調子に乗んな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前はアル。

 

 改めて、゙ブロワアルセーヌ゙。お姉ちゃんに家から追い出されて、一度は諦めたウマ娘レースに、戻ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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