大怪盗・ブロワアルセーヌ   作:赤黒22

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話のタイトルを数字にしました。第何話っていう方が覚えやすいからです。決してタイトルを考えるのが面倒くさいとかは思ってない。

〜後述〜

3回目の修正後の前書きです。2話以降、正直最初考えていた話の進みと結構違う展開になる予定です。大きな変更点として、主人公のブロワアルセーヌにかなりの修正を加えています。少しだけ言うと、元々ブロワアルセーヌは頭の弱い娘設定だったのですが、度重なる修正で更に頭が空っぽになりました。

アル「!?」


第2走

 懐かしい夢を見ている。忘れもしない、ここはマルセイユのトレセンのターフの上だ。

 

 今の自分よりは幾分か若いウマ娘達が各々のトレーニングをしているのが見える。その中でも一際大きいウマ娘がいた。

 

 見間違えようもないが、あれは私だ。どうやらあの時の光景を、違う視点から見ているようだ。

 

 身長が170cmを超えて、体重が増えて重心がズレたり、消費するエネルギーも変わり食事も考えるようになり・・・・・・。入学して数ヶ月ではあったが、とにかく忙しかったのを覚えている。

 

 あの時の私が、コーナー時に大きい身体を制御するバランスを補う為、柔軟性を強化するストレッチをコース場の端でしている。私は今の位置から、そこにもう少し近寄った。

 

 その時だった。

 

「ねぇねぇ、一緒に併走トレーニングしない?」

 

 一人のウマ娘が、ストレッチをしている私に笑顔で話し掛けてきた。名前を覚えるのは苦手だったが、同じクラスだった事は覚えている。

 

 当時私は分からなかったが、第三者となる視点で見た今なら・・・・・・いや、これは私の夢の中だろうから、私の想像でしかないのだが。後々起きる件で推測するに、このウマ娘は私を陥れようとしていた。

 

 入学してから主なトレーニング方法が、柔軟や身体作りだった私を除いて、このウマ娘はクラスで一番速かった。恐らく私のことが気に食わなかったから、併走で負かしてやろうと思ったのだろう。真相はもう分からないが、()()()()だったのは覚えている。

 

 私は、「いいよ」と言った。

 

 声を掛けてきたウマ娘はニコッと笑い、あの時の私に手を差し伸べた。あの時の私は、()()()()()()()()()()()()。この時、相手のウマ娘の腹の中は黒かったに違いない。ストレッチを止め、立ち上がるあの時の私。スタート位置に向かうあの時の私を、思わず私は止めようと腕を掴もうとした。

 

 掴んだような感触は無く、私は空気と握手をした。横を通り抜けるあの時の私に必死に叫んだ。

 

 「やめろ」「やめてくれ」「頼むから、待ってくれ」

 

 私はスタート位置まで追いかけたが、私の祈りは終ぞ耳に入る事はなかった。

 

 相手が内、あの時の私が外に着き、スタートの合図を任されたウマ娘が位置について、と言う。この時私は既にあのブロワイエの妹だと知れ渡っており、自然と周りのウマ娘も野次馬として集まってきた。

 

 合図が鳴り、二人で一斉にスタートをした。あの時の私も逃げを選び、相手は先行気味に2バ身程の位置に着けていた。

 

 コースを半分と走り抜けた頃には更に差が開いており、持久力の余りにも違いが出ていた。私ほど速い相手と走ったことがなくペースを乱されたのか、それとも併走だからと手加減していたのか。どちらにせよあの時の私は本気だったし、スタミナもあった。自分で言うのもアレだが、既に私と彼女の実力の差はあった。

 

 最終コーナーを迎える前だった。相手の息遣いのペースが変わり、音も近くなってきた。ここで勝負しようと、距離を詰めてきたのだ。ウマ娘には一人一人が得意となるスキルや技のようなもの、特徴を持っているものだ。彼女はこの最終コーナーでの抜け駆けで、今まで様々な相手を打ち負かしてきたのだろう。

 

 

 

 だから、あの時の私はいつも通り走った。

 

 

 

 突然、彼女に異変が起きた。後ろから聞こえてきた彼女の息遣いが変わった。焦り、困惑、そして絶望を声から感じた。彼女がどんどんと失速していくのが分かった。

 

 あの時の私は雰囲気だけでそれを感じていたが、傍から見ると明らかだった。彼女は失速し続けると、そのまま前のめりに倒れた。普段のペースで最終コーナーを曲がれず、スタミナが切れたのだ。だが、それだけでは無い。

 

 「なんで、なんで動かないの!?いつも通り走ったのに・・・・・・!」

 

 彼女は泣いていた。地面に這いつくばりながら、彼女はそれでもゴールを目指していた。大事な脚を何度も手で叩き、不思議な現象を理解出来ず絶望を感じた事だろう。涙と鼻水で破顔させながら、あの時の私の背中をただ見つめていた。

 

 そして、あの時の私がスタート位置に戻ってきた。つまり、ゴールをした。ゴールをした私はあまりに涼しい顔をしていた。同時に、何かの異変に気づいたのか、周りの雰囲気は妙に騒がしかった。

 

 

 

 それもその筈だ。相手の彼女に異変が起きた時、あの時また私にも異変が起きていたのだ。

 

 彼女が失速し体勢を崩して倒れる時、私の走り方は変化していた。腕の振り、歩幅、呼吸のペース。

 

 この時何が起こったのか、初めは推測であったが、周りの野次馬達では一気に広まった。同じウマ娘だからこそ分かる違い。しかし、あまりにも非現実的な現実(解答)。スタート位置に立ち尽くしていた私もよく見えていた。

 

 

 

 あの時の私のフォームはまるで、倒れた彼女と同じーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、お客さん」

 

「・・・・・・ん」

 

 懐かしい夢を見ていた。3年前のあの出来事だ。

 

 目が覚めた時、乗っていたタクシーは止まっていた。左を見てみると、写真で見た日本のトレセンらしき建物が見えていた。

 

 どうやら空港からずっと寝ていたようだ。そう、私はとうとう日本に来てしまったのだ。

 

 私は拙い日本語で「アリガト」と言い、タクシーを降りた。

 

 ここに来るまで長いようで短い、まさに怒涛の日々だった。お姉ちゃんが引退すると言って、いきなり私に日本に行けと言い、捕まって。準備をさせられながら日本語を学び、今ここに至る。

 

 ちなみに日本語はまっっっったく上達しなかった。皆無と言っていい。アジア圏の言葉はとても難しかったとだけ言っておく。たが一番は私のモチベーションの問題だ。隠す気もない。

 

「・・・・・・帰りたい」

 

 まだ一歩も動いてないが、これ以上動く気も起きない。お姉ちゃんは本当に酷いウマ娘だ。私の心身状態を知っていながら、単身独りで見ず知らずの国に送るのだから。

 

 ・・・・・・いや、もう起きたことだし、頑張ろうぜ私。

 

 覚悟を決め、前を向いた。先程から視界に入ってたんだけど、このピンクの花は、確かーー。

 

 「桜・・・・・・日本の代表的な花」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おはようございます!私、スペシャルウィークです!

 

 私は昨日、デビュー戦で勝利してついにデビューしました!と言っても、まだ学園に来てすぐのことだったのですが・・・・・・。

 

「「「おぉ〜〜〜!」」」

 

「スペシャルウィーク、デビュー戦勝利!」

 

 今、ウララちゃん、エルちゃん、グラスさんと昨日の私が取り上げられた一面を見ています。

 

「・・・・・・天を仰ぐ見事な棒立ち・・・」

 

「恥ずかしいぃ〜!」

 

 デビュー戦に向けて練習はしてきましたが、ライブの練習は全くしていなかった結果、棒立ちとなってしまいました・・・・・・。これも全部、トレーナーさんのせい・・・・・・、でもデビュー戦に出て勝てたのもトレーナーさんのおかげ。複雑です。

 

 お母ちゃん、私今とても楽しいよ。ここに来て本当に色々な事があったけど、全部新鮮で・・・・・・。ウマ娘どころか同世代の友達がいなかった私にとっては毎日が面白いよ!信じて送ってくれたお母ちゃんと、もう一人のお母ちゃんの二人との約束、日本一のウマ娘に絶対なってみせます!

 

 改めて決意を固くしたところで、朝のHRを告げるチャイムが鳴りました。先生が来る前に、皆さん自分の席に着きました。

 

「はい皆さん、席に着いてください」

 

 ドアから先生が入ってきて・・・・・・あれ、もう一人入って・・・・・・。

 

「うわぁ・・・・・・大きい」

 

「綺麗〜!」

 

 先生に続いて、もう一人・・・・・・ウマ娘が入ってきました。とても身長が大きいです。顔立ちから、外国の方だと思いますが、すごく綺麗な顔でお人形さんみたい・・・・・・!金髪のとても長い髪も素敵です!あと、頭の上に乗っている小さい帽子がとてもキュートです!

 

 周りの皆も、いきなり現れたあのウマ娘の方に教室内が騒然としています。・・・・・・それにしても、どこかであの方を見たような?あぁぁあああ!

 

「(さっきたづなさんに「調子にのんな」って言ってた娘だ!)」

 

 も、もしかして怖い方なのかも!でも、なんかそんな感じはしないし、というか緊張しているのかな?さっきから真顔のまま動いてないような。

 

「静かに。この娘は今日から転入してきた、ブロワアルセーヌさんです。ブロワアルセーヌさんは日本語があまり得意では無いそうですので、皆さん気にかけてやって下さい」

 

 ブロワアルセーヌさん・・・・・・!私と同じ転入生でした!とてもカッコいい名前です。

 

「はーい!質問いいでしょうか!」

 

 エルちゃんが手を挙げて、何か質問がしたいみたいです。

 

「まぁ少しなら・・・・・・答えられる範疇で私が答えますので」

 

 先生が代わりに答えるみたいですが、本当に日本語が話せないみたい。それにしても、本当にさっきから微動だにしてないけど大丈夫でしょうか、アルセーヌさん・・・・・・。まるで仏様の様な顔をしています。

 

「では!ブロワアルセーヌさんは、どこの国のウマ娘デスか?」

 

「ブロワアルセーヌさんは、フランスから来ました」

 

「ではもしかして、あのブロワイエと関係があるんデスか!?」

 

 エルちゃんと先生がやり取りをしていると、日本語は分からずとも聞き取れた単語があったのか、アルセーヌさんがピクっと肩で反応をしました。それから先生の方を見て。

 

『今ブロワイエって言った?』

 

「え、ええ?何と言ったのか、分かりません・・・・・・」

 

 アルセーヌさんが初めて口を開きました!多分フランス語?で何を言っているのか分からなかったですが、なんと透き通る綺麗な声なんでしょう・・・・・・。見た目も良く、声も綺麗。まるで小説に出てくるキャラクターみたいです。

 

『やばい・・・・・・何言ってるか全然分からない・・・・・・』

 

 アルセーヌさんがまたフランス語で何かを呟き、頭を抱え始めました。頭が痛いのでしょうか?

 

「・・・・・・まぁ、いつかはバレると思うし、見た目も似ているところがあると思うのですが。そうです、彼女はブロワイエの実妹にあたります」

 

 言葉の話せないアルセーヌさんに代わり、先生が渋々といった様子で答えてくれました。その瞬間、教室内がかつてない程騒然としました。歓喜と・・・・・・悲鳴?のようなものも混じっているような。

 

 そして私は、騒ぎとなっている教室内をよそに、ずっと気になっている事を隣の娘に質問してみました。

 

「あ、あの〜。先程から聞こえる、ブロワイエという方は誰なんでしょう・・・・・・?」

 

 おずおずと隣の席の娘に聞くと、彼女は大層驚いた様子でした。

 

「えぇ!?スペシャルウィークさん、あのブロワイエを知らないの!?」

 

「は、はい。なんか、ごめんなさい?」

 

 そんなに驚かれると、こちらが申し訳なく思ってしまいます・・・・・・。それからブロワイエさんのことを少し教えてもらいました。

 

「ヨーロッパで一番強いウマ娘・・・・・・」

 

「そうだよ!シンボリルドルフ会長がトゥインクルシリーズに出てた時、ジャパンカップで会長を大差で倒したウマ娘だよ」

 

 シンボリルドルフさんを倒した。その一言だけでアルセーヌさんのお姉さん・・・・・・ブロワイエさんが凄い事が分かります。だって、今一番日本で強いウマ娘である会長さんを倒したんですから。

 

 段々と、皆さんが騒然としているのも分かってきました。確かに凄い・・・・・・!だってとても強いウマ娘の妹さんが、このクラスに来たんだ!なんか、言葉には表しづらいですーー。

 

「正直最近はブロワイエが世界最強でもおかしくなかったんだけど、この前急にーースペシャルウィークさん?」

 

「・・・・・・なんかワクワクする!」

 

 ブロワアルセーヌさん。未だに騒然とする私達を見て、何事かという顔をしています。あのウマ娘が、ヨーロッパで一番強いウマ娘の妹さん・・・・・・!ワクワクします!これが、ウマ娘の本能なのでしょうか?とても強そうな娘がやってきたのに、怖気づくことなく彼女と走りたい、早くレースで戦いたいと思っている自分がいます。

 

「・・・・・・本当にあのブロワイエの妹デスか・・・・・・!」

 

「あらあら〜・・・・・・これは、大変ですね」

 

「本物の『キング』の血を引く者・・・・・・!面白いですわ!」

 

「Zzz・・・・・・」

 

 アルセーヌさんだけじゃないです。今、改めて思いました。私と同じ気持ちのウマ娘の数だけ、皆さんライバルなんだって。私は、こんな娘達と一緒に戦うんだ・・・・・・!

 

 お母ちゃん、日本一のウマ娘は凄く果てしなく、厳しい道になるでしょう。でも!改めて頑張ろうって思いました!二人との約束通り、私は絶対に日本一のウマ娘にーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調子に乗んな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 ・・・・・・え?

 

 

 キンコン・・・カンコーン。

 

「・・・・・・あっ、えっと、ブロワアルセーヌさん?こ、この後理事長室に用があるので、一緒に来てください・・・・・・えっ?」

 

『ムフー!やっぱりこの言葉は気持ちがいいな・・・・・・。えっ、なんの手招き?一緒に来いってこと?』

 

 

 

 ・・・・・・しばらくして、先生とアルセーヌさんは共に教室を後にしました。この凍った部屋を放置して。なんだか、北海道の寒さを思い出した気がしました。

 

 

 

 ヨーロッパで一番強いウマ娘の妹、ブロワアルセーヌさん。

 

 もしかしたら彼女は、とんでもないウマ娘かもしれません・・・・・・。その後私達が再起動するまで、しばらく時間がかかりました。

 

 

 

 

 

「・・・・・・ふわぁ〜あ。ふふ、彼女なかなか面白いね〜」

 

 

 

 

 




アルは最初の設定ではフランス語の他に、英語が話せました。ですが、「周りの言ってる事が分からない」という設定を生かすため、アルにはアホになってもらいました。
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