大怪盗・ブロワアルセーヌ   作:赤黒22

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ナリタブライアン実装・・・・・・。史実では素晴らしい馬と聞いていたので、もうちょっと後に実装かなと思ったら、何でもない時にポンって出てきましたね。何か法則性でもあれば課金するタイミングが分かるのですが。

みんな大好きルナちゃん登場。理事長が書きづらかったです。


第3走

「理事長、ブロワアルセーヌさんを連れてきました」

 

「了解ッ!入りたまえ!」

 

 ぴすぴーす!姉に家から追い出され、単身遠くの国から送られたアルちゃんだぞ!

 

 さっきまで私が所属するクラスにいたけど、今は違うところに来ている。恐らくここの偉い人だ。それにしても言語を話せないというのはとても辛い事だと痛感した。さっきは生きた心地がしなかった。だが、お姉ちゃんの魔法の言葉で場の空気を変えられた。滑り出しは上々と言える!

 

「ブロワアルセーヌさん、こちらへ」

 

 どうやらこの部屋に入るらしい。教師に続き部屋に入ると、やはりと言うべきか。普通ではない一際大きな机がまず目に入る。更に来客用と思われる無駄に高そうなソファーと机、壁際に飾られたトロフィーや賞状、旗の数々・・・・・・。大方ここは理事長室的な所だろう。

 

 そして、一人のウマ娘と二人の女性が部屋の中にはいた。私より幼そうな小さい女の子が一番偉そうな場所に座り、今朝校門にいた緑の人がその傍で立っている。そして私でも名前は知っている、日本のスターウマ娘が反対側に控えていた。

 

『確か、シンボリルドルフ?』

 

「おや、私を知っているのか?彼女の妹に知ってもらえているとは、光栄な事だ」

 

 彼女は微笑みながら何かを言っている。恐らく、シンボリルドルフは私が彼女の名を口にした事に反応したようだが、生憎何を言っているのか全く分からなかった。このウマ娘はお姉ちゃんが何年か前に日本のG1で戦ったことがある記憶がある。結果的にフランスの王者に軍杯が上がったが、なるほど。確かに他のウマ娘とは違う・・・・・・お姉ちゃんに近い強者のオーラを感じる。

 

「歓迎ッ!ようこそ、我が学園へ!私はこの学園の理事長、秋川やよいであるッ!」

 

 私が部屋に入り彼女らと話せる距離まで来たところで、座っている幼女が何かを喋った。やたら元気が良いな。

 

「まず君は、日本語が話せないと聞いた!そこで提案ッ!このタブレットで翻訳をしながら会話をする事にしようッ!」

 

「私が理事長の言葉を入力して、それを翻訳して画面をお見せします。・・・・・・こんな風に」

 

 幼女が何かを言った後、続いて緑の人も何かを言ったと思えば手に持っているタブレットを操作し始めた。しばらくして、フランス語でこの場にいる人物の名前と、このようにして会話をするという説明が入力されていた。そして、私用にもう一つタブレットを渡された。

 

 なんと親切な人達なんだ・・・・・・。この人達に間違っても変な事を言ってはいけないな!

 

 私はタブレットに「ありがとう。私はブロワアルセーヌ。よろしくお願いします」と少し固めな文章を入力して見せた。どうやらちゃんと伝わったらしく、秋川理事長は満面の笑顔を浮かべていた。

 

 その後、改めて歓迎を受けて軽い学園の説明を受けたり、こちらもかなり特例の入学を認めて貰ったことを感謝したり・・・・・・。少し固い雰囲気で話は進んでいた。

 

 細かな話はどうやらお姉ちゃんと話が済んでいるらしい。強制的に送りつけたんだから、まぁ当然のことだと思う。因みに私はお姉ちゃん対して、意外と怒っている。

 

 10分程話した後、今日は私の荷物が寮に届いているということで、授業免除で荷解きをしていいと言われた。

 

 そうして理事長室を後にして気づいた事がある。

 

 

 

 

 

 あれ?私この場所の地形とか何も分からなくね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・バタン。

 

 ブロワアルセーヌが部屋を後にし、この場には私、秋川理事長、秘書のたづなさん、そしてブロワアルセーヌの担任である先生が残った。理由は一つ。たくさんのウマ娘を見てきた理事長とその秘書、たくさんのウマ娘を教育現場で見てきた教師、そしてたくさんのウマ娘が在籍するこの学園のトップである生徒会長の私。それぞれの視点から見たブロワアルセーヌの印象だ。

 

 少し彼女と話していただけだが、彼女が去ったこの空間には独特の雰囲気が流れていた。

 

「・・・・・・質問ッ!君達に、ブロワアルセーヌについてどう思ったか聞きたい!まずは私から話そう!」

 

 秋川理事長から、彼女についての印象を語る事となった。彼女はただの転入生、という訳では無い。最近まで現役最強だったであろうウマ娘、ブロワイエの妹が転入してきたのだ。このような場を設けるのは必然だろう。

 

「貫禄ッ!彼女は既に、ウマ娘としてある一定のラインを超えていると感じた!私達が危惧していた一つの問題として、在学生と彼女の力の差があったが、どうやら悪い予想が当たってしまったようだ・・・・・・」

 

 ブロワアルセーヌがこちらに来るにあたり、様々な問題があった。秋川理事長は彼女の実力を感じ取り、あまり良いとは思えなかったようだ。いつもの覇気も無い厳しい顔をしている。

 

 ブロワアルセーヌ。身長は姉と差程変わらない恵まれた体格を持っていた。ブロワイエから聞いた情報と、彼女が向こうのトレセンにいた頃のデータからするに、脚質は逃げ、走る距離はマイルと中距離が主戦場。そして、彼女の才能から生まれた()()()()。総合的に見て、自分と同じく「勝者になれる」逸材の持ち主だと、ブロワイエは言っていた。

 

「しかし、彼女は走る事をやめている!それから最近までトレーニングは積んでおらず、なによりメンタル面でのダメージは未だに癒えていないと聞く!」

 

 理事長は一転して、ブロワアルセーヌの弱点を指摘した。向こうのトレセンを辞めてから、彼女は姉の家に引き篭っていたらしい。特にトレーニングを継続していた様子も無く、ブロワイエがブロワアルセーヌを日本に送るために行った「鬼ごっこ」では、衰弱した所を捕らえたらしい。身体能力の低下はブロワイエも指摘していた。

 

 何より問題はメンタル面だ。こちらは大雑把な内容しか聞いていないが、ウマ娘が走る事をやめる程のショックを受けるというのは相当だろう。

 

「故に、一人の生徒として心身共にサポートをしてやらなければならない!私の目からは、結果的に精神の問題を除いて普通のウマ娘と評価だ!」

 

「・・・・・・私は、言語と友好面の方の心配でしょうか」

 

「私も同じくです」

 

 秋川理事長の評価は概ね良好だった。実力はあれどブランクはあるし、彼女自身メンタル面での問題を克服してこそ本来の実力を発揮出来るだろう。生徒会長として、ブロワイエの友人としてサポートが必要と感じた。

 

 そしてたづなさんと先生は同じ問題を指摘した。

 

 日本に急遽来ることになったブロワアルセーヌは、日本語が拙い。コミュニケーションが取れないというのは、大きな課題だ。

 

「話が出来ないと当然困るでしょう。・・・・・・あんな事をやたらむやみに言わないといいですが」

 

「話す相手が居ないというのは孤独に繋がります。彼女はまだ中等部なのですから、ウマ娘である前に思春期の女の子なので、コミュニケーションの改善は第一優先だと思います。・・・・・・あの言葉だけは、言わないように教えておきませんと」

 

 二人の意見は尤もだ。どんな生物でも孤独であってはいずれ消えてしまう。我々ウマ娘は確かにライバルであるが、その前に同族の仲間なのだ。クラスメイト等に協力してもらい、最優先でコミュニケーションの改善が必要だろう。そして、それは彼女の抱える問題の解決にも繋がると思う。それはそうと、何故二人は遠い目をしているのだろう?

 

「では、シンボリルドルフ!君の生徒会長としての意見、そして個人的に君の()()()()()()()()()も聞きたい!」

 

 最後に、私が話す番のようだ。

 

「・・・・・・まず、生徒会長として今回の転入に関して、とても良いことだと思います。ブロワアルセーヌはしばらくとじこもっていましたが、こうして学業や青春を送る機会を得た事は、彼女の先輩として単純に嬉しいと思っています」

 

 私が思うに生徒会長として一番の仕事は、よりよい学園を創ることだと思っている。ウマ娘がトゥインクルシリーズを始めとしたレースに集中できる環境はもちろん、若い者としてお互いを助け合い自己を作り上げていく場を生徒達に与えるのが私の、私達生徒会の役目だ。だから、一人の女の子として彼女が一歩を踏み出してくれたのが私はとても好ましいのだ。

 

「生徒会長として、そして彼女の姉の友として。ブロワアルセーヌのサポートをしていくつもりです」

 

「感動ッ・・・・・・!そして、感謝ッ!こんなにも立派な生徒会長が我が学園を支えてくれていることが、私にはとても鼻が高い!」

 

 秋川理事長が私の言葉に感動して泣いている。少し大袈裟だと思うが、そう思われている事はとてもいい気分だ。

 

 続いて私はウマ娘としての率直な意見を述べた。

 

「そして、ウマ娘としての私の感想ですが・・・・・・。一言では表せない、色々な感情があります」

 

「色々な感情・・・・・・?というと、なんでしょうか」

 

 私の曖昧な表現に、たづなさんが疑問を浮かべた様子で問いかけた。

 

「まず一目見た時、私はブロワイエとブロワアルセーヌの姿やオーラが重なって見えました」

 

 忘れもしない、あの大きな姿を。

 

 私がトゥインクルシリーズで戦っていた時だ。私は無敗で皐月賞、日本ダービー、菊花賞に勝った。「シンザンを越えろ」・・・・・・。目標としていたシンザン先輩に、大きく近づいた三冠だった。当然自信が付いたしそのままの状態でジャパンカップに臨んだ。

 

 世界中から名のあるウマ娘達が集う夢の舞台。私は最終コーナーを曲がって誰もいない景色を見ていた。完璧に差し切った。後は全力で先頭をキープするだけだった。

 

 ーーそんな私を、更に差したのがブロワイエだった。

 

 二分の一バ身差での2着だったが、当の本人である私はそれ以上の差を感じていた。なんと強大な後ろ姿なことか。抜かれる瞬間、音は聞こえずとも何が迫ってきている気がした。抜かれて彼女の後ろ姿を見た時、私を抜いた・・・・・・いや、飲み込んだのは、津波だった。

 

 抗うことの出来ない自然現象。私達のような小さな存在は、ただひたすらに滅ぶのを待つのみ・・・・・・。

 

 この様に、レースに負けた後は自分の目標が潰えた事に気が付かない程ブロワイエとの差を感じた。意識が覚醒したのは、レース後に彼女から握手を求められた時だった。その時に自身の自信の表れ・・・・・・。

 

 おや?

 

 

 

 

(会長が自分のギャグにツボっているので、少々お待ち下さい)。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・ふぅ。我ながら相当面白いな、うふふ・・・・・・。

 

 とにかく、あの時自分の勝負服が嫌いになりそうで仕方がなかった。「皇帝」を負かした圧倒的なまでの「王者」の風格。私のシンボリルドルフとしての威厳が、正に「壊されそう」になった事を今でも覚えている。

 

「私は七冠をとりましたが、唯一勝てないと思ってしまったブロワイエに、ブロワアルセーヌの姿が重なったのです。容姿が似ているからではありません。ウマ娘としての本能が、彼女が只者ではないと言っている」

 

「シンボリルドルフさんが、そこまで言うのですね」

 

 先生が恐れ慄くように言いました。彼女達人間には分からないだろうが、私達ウマ娘の第六感とも言える感覚が、こう告げるのだ。

 

「はい。彼女は間違いなく新しい時代を築き、その中心になります」

 

 

 

 

 

「そういえば理事長。今日はいつも頭にいる猫はいないのですね?」

 

「むっ。そういえば彼奴はどこに・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷 っ た

 

 当たり前だろって?私もそう思うワン。部屋から出た後私はそういえばここに今日初めて来たんだったなと思った瞬間、とてつもなく絶望に襲われたが。とりあえず窓から見えたレース場を目指してみることに。

 

 あの緑の地を目指し歩き始めて、一時間と経った時だ。何故そんな時間がかかったかは置いておき、なんと私が着いた頃には他のウマ娘達がゾロゾロとターフの上に集まってきたではないか。

 

 現在の時刻は正午を回り30分と過ぎた頃。この学園は半日の授業を終えたらウマ娘達はそれぞれ各自トレーニングを始めるのだ。

 

 それを見た私は、何となくレース場の前から陰の方に隠れてしまった。いや、別に久しぶりにウマ娘達が沢山いる所に来て緊張しているとかじゃないのだ。孤独で寂しいとかってことも全く断じてない。

 

 私は草むらに隠れながら、先程ここに来たウマ娘達を観察することにした。

 

「おいナリタ!ちょっと併走に付き合ってくれよ」

 

「・・・・・・別に良いが、今日は他のトレーニングをおハナさんから言われているんだ、軽めにやらせてもらうぞ」

 

「なんだい、つらないねぇ。まっ、アタシにとっちゃ関係ない!練習とはいえ勝たせてもらうよ!」

 

「・・・・・・私とアマさんなら、本気を出さなくても私が勝つぞ」

 

「なんだと!?」

 

 うわっ、ウマ娘だ・・・・・・。私の目線の先には、二人のウマ娘が当たり前だが、何を言っているか分からない。が、ストレッチをしながらいがみ合っている。肌の黒い活発そうでお姉さん味があるウマ娘と、葉っぱを咥えてるがイタくなくて、妙に様になってるウマ娘だ。二人ともこの学園の体育着を着て柔軟体操をしているので、おそらく今からトレーニングでもするのだろう。

 

 それにしても、あの二人なかなか強そうでは?他にもチラホラとウマ娘が見えるが、脚や体の柔らかさ、そして周りのウマ娘達もあの二人を何処となく注視していることから、かなりの実力者と見た。何よりも決定的なのは、彼女達の自信に満ち溢れた表情だが、周りの目線を分かっている筈だがあの威風堂々とした様子は相当にメンタルが分かる。

 

 私は最近まで、ヨーロッパを制したウマ娘と住んでいたのだ。何となく相手の実力が測れてしまう。

 

 そうこうしているうちに、レース場にまたウマ娘達が増えてきた。これは本格的になにか練習が始まりそうだな・・・・・・。

 

 時刻はまだ昼間だろうが、寮の割り振られた部屋に行かなければならないし、もし見つかったら私は一人で対処できる気もない。クールに去るぜ・・・・・・。

 

 私は隠れていた茂みから立ち上がり、とりあえずもう一回校舎に入りどうにかしようと思ったがーー。

 

「・・・・・・ガサガサ」

 

『げっ、猫じゃん・・・・・・』

 

 すぐ近くにどうやら猫がいたらしい。あまり見ない柄の黒猫がいた。すぐ近くにいて気づかなかったあたり、大人しそうな猫だが・・・・・・。

 

 あれは10歳くらいの事だ。リビングで昼寝をしていたお姉ちゃんに猫耳を付けて写真を撮ってイタズラしようとしたが、シャッターを押した音で目が覚めたようで、「写真を消すまで許さない」と結構恥ずかしがっていたお姉ちゃんに追いかけ回された事がある。

 

 何度も消したと言っているのに、鬼のような形相で日が暮れるまで追いかけられた。その時ずっと猫耳を付けていて、猫を見る度にあの時を思い出すので、私は猫が嫌いになったのだ。

 

 なので大人しかろうが何だろうが、今私がいつも頭に乗せているチャームポイントの帽子を咥えたこの猫が、いくら鳴きもしない穏便な猫だろうと・・・・・・。

 

 あれ?お前なんで私の帽子持ってるの?

 

「・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

 おそらく立ち上がった時に帽子がおちてしまい、こいつが拾ったのだろう。

 

 私と猫が約2m程の差を空け、黙って見つめ合っている。まるで西部のカウボーイのような緊張感が漂う。

 

「・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

 ・・・・・・いい加減返してほしいのだが。ずっとこうしているわけにも行かないし、何故かこいつはずっと私の帽子を持っているので、私が帽子を取ろうとすると。

 

「・・・・・・・・・!」

 

 シュンっ・・・・・・。

 

 猫は、まるで風のように去っていった。

 

 私の帽子をもったまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調子に乗るな・・・・・・!

 

 ーー後に、お姉ちゃんから騙されたこの最悪な言葉の意味を知ってからも、この時が一番最適解な使い方をしたと語っておこう。

 

『上等だ猫野郎・・・・・・!』

 

 

 

 私もあの猫の「鬼ごっこ」が始まったーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつらとおハナさんが来るまでに終わらせるぞ!」

 

「2000m、負けた方が今日の夕食奢りでいいな、アマさん」

 

「今日こそアンタに野菜を食わせてやるよ!」

 

 

 

「「位置について・・・よーい、ドン!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




私の想像するトレセン学園のスケジュールって、スポーツ科の高校みたいに4時限目が終わって昼食を済ませたらもう各自トレーニング、みたいなイメージなんですよね。

次回、アマさんVSブライアンVSアルVS猫VSダークライ。

初登場のあの人視点でお送りします。
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