おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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ずっとそうだっただろ


第3話:ワンサイドゲームにはさせない

 プールで疲れた身体を温泉で癒すという理屈は結構、いい感じだと思う。なんなら水着のまま入れるお風呂みたいなのがプールの中にもあって、そこで実感した。ましろちゃんと肩をくっつけ合って座るというのは、ちょっと、いやかなり心臓に悪いと思ったけど。肘ちょっとでも出すとふよんと柔らかな感触がして、慌ててひっこめようと思ったらましろちゃんから当ててくるからね。

 

「先輩、肩かして」

「え、ココで?」

「いいから」

 

 挙句は肩に頭が乗ってきて、腕が上部分はおっぱいに下部分は太ももに挟まれてしまった。セクハラです、それも立派なセクハラというか痴漢だ! 押し付け痴漢ですこのヒト! と脳内で取り調べが発生していた。

 

「触っていいよ」

「……ヒトいるからね?」

「そっか」

 

 おっと? なんかあっさり引かれてしまった。でも相変わらずガッチリ柔らか生地のサンドイッチって感じで、もしかしてなんか悲しませるようなことしたかなと首を捻ると、ましろちゃんは頬に一瞬だけ唇を触れさせてきた。

 

「な、ましろ……ちゃん?」

「ごめんなさい……横顔見てたら、我慢できなくて」

 

 ホントに衝動的なものだったようで、甘えるように肩におでこを乗せて表情が見えないようにだけど、まるで叱られたように落ち込んでいた。俺はそんなましろちゃんにダメって言うことなんてできなかった。できるわけない、そんなキラキラなましろちゃんに惹かれてる自分がいるってことに気づいちゃったから。

 

「わたし、先輩くらい我慢できるようになりたいなぁ」

「……どういうこと?」

「だって……触りたいのに触らないんだもん」

 

 触りたいとか言ってないし! ささ、触りたいわけ……あるんだよなぁ。認める、認めるよ。他の子はイエスおっぱいノータッチの原則で拝むだけで済むんだけど、ましろちゃんには誘われてばっかりなせいでその原則で満足できないって本能に忠実な俺がいるのは事実なんだ。だって布一枚ほぼ半裸のましろちゃんが隣で俺の腕を抱き込んでるこの状況で! しかもしかも……俺は自分の気持ちに気づいちゃったんだよなぁ。おっぱいは正義だった俺にとって初めてそうじゃないと思えた女の子が、ましろちゃんだから。

 

「出よっか」

「え、う……うん」

 

 立ち上がって、手を差し伸べる。そしてもう陽が傾き始めていたため、ホテルに戻ることにした。着替えて、ちょっと塩素の残る髪を気にしながら温泉に立ち寄って。今度は別に湯上りに特別な格好じゃなくてただの、だけど足とか腕とかの露出が眩しい夏の私服で。

 そこからホテルまでの道をちょっとだけ無言で俺のサンダルのペタペタという音と、ましろちゃんのヒールサンダルの靴音が重なる音を聴く。

 

「遊んだね」

「遊んだ遊んだ」

「楽しかったね」

「すっごく」

 

 ウォータースライダーはましろちゃんも怖がってたし、遠慮しといたけど、流れるプールも波の出るプールの波打ち際でちょっとやったボール遊びも、楽しかった。この楽しさはきっとましろちゃんとだからで、ドキっとするようなことも、ほっとするようなこともましろちゃんと過ごすからあるんだってわかったから。

 

「先輩は」

「ん?」

「……嫌じゃなかった?」

 

 その問いかけとほぼ同じくらいに鍵が開き、部屋に入っていく。嫌じゃなかった? って訊いちゃうところは、ましろちゃんの後ろ向きなところだよね。俺の前では頑張って前のめりに振り回そうとしてるけど、それはひまりには敵わないと思う。俺との関係の気安い感じはつくしには勝てないし、趣味が合うって話ならオフ会組や麻弥さんが一番だなって思うし、バンドの話なら瑠唯さんとするのが正直一番楽しい。

 

「ましろちゃん」

「……え」

「今なら、いいよ」

 

 ビッグセブンが持つ胸囲の、じゃなくて脅威のおっぱいパワーたちの中でましろちゃんのランキングは六位、水着で思ったけど着やせしてる気がするから実際はもうちょい、麻弥さんとめちゃくちゃいい勝負かもしれない。けど、それでも燐子さんや瑠唯さん、ひまりや有咲には遠く及ばない。

 ──そうだったとしても、触れたいって思ったのは、ましろちゃんだけだから。おっぱいの大きさとかパワーとかなんて関係ない。俺は倉田ましろちゃんが、好きだから。

 

「え、えへへ……ぎゅって、しちゃった」

「お昼はごめんね?」

「ううん、今大丈夫になった」

 

 マジでこの生き物かわいいんだよなぁ。前までの俺ならましろちゃんがどんな思わせぶりな態度を取ってても、いくら好きだなって思っててもこんな行動はできない。自分を好きって言ってもらえるシチュエーションが全然想像できないし、おっぱい大好きなだけの俺に女の子が好意向けるわけないって可能性全部排除してしまうから。だから両想いってわかってる安心感も行動に出てるのかもしれない。

 

「……ね、先輩?」

「なに?」

「ごはんまで、時間あったよね」

 

 そう言われて俺は頷く。現在は四時過ぎたところ、ここから七時のディナーまでは結構時間がある。なんだかお腹もすいちゃったし、こんなんなら一番早い六時でよかったのにとましろちゃんに説明されてる時のことを考えていると、抱き着きながら俯いてるましろちゃんの耳が真っ赤になってるのが見えた。

 

「ましろちゃん?」

「先輩に嫌われたくない……けど、わたしはワガママだから……先輩が、だめって言ったら……我慢するから」

 

 どういうことだろうと思いながらも基本的にましろちゃんにはバカみたいに甘い自信のある俺は隣座ってとベッドに座っていく。二人きりのため別によっぽど恥ずかしいことじゃなきゃ平気なこともあって甘えたいのかな? と俺はそっと彼女の頭に手を置き、お風呂に上がったおかげかサラサラに戻った髪をなでる。

 

「……わたしね、やっぱり先輩が好き」

「うん」

「先輩は、先輩のこと好きじゃないのはわかってるけど……でも、それでもわたしは先輩の傍にいたい。一緒にいて、こうやって……先輩に触れてほしい」

 

 それは、告白だった。色んなことを整理して改めてということなんだろう。青い瞳が、俺を見上げて儚げに揺れながら、それでもはっきりと俺を捉えていた。けど、俺はそんなましろちゃんの言葉の中に嘘があることに気づいていた。だから、いつものように微笑みながらましろちゃんに告げた。

 

「本音は?」

「……ぎゅーだけじゃやだ。おっぱい大好きな先輩だけど、わたしだけを見ててほしいから……恥ずかしいけど、ゆーわくしてる」

「具体的に希望は?」

「えっちなこともしたい」

 

 ドストレート! さっきまでの変化球がなかなかストライク取れなかったせいか剛速球が飛んできた。だけど拙速だよましろちゃん。

 ──せめて外か内の低めとかに寄ってればよかったんだけど、真ん中ちょい高めはね、待たれてたら関係なくスタンドだよ? なんの話だっけ? まぁいいや、表に大量に点を取られてるんだ、俺のソロホーマーくらいじゃ負け試合なのに変わりはないんだけどさ。

 

「えっと、せ……先輩?」

「俺も好きだよ。ましろちゃんのこと」

「あ、う……えへへ、嬉しい」

「両想いだね」

「ね! でも、あれ? 両想いで、このシチュエーションは……えっと、ちょ、ちょっと待って」

「うん」

 

 ドサリと押し倒してあげたせいでどうやら正気に戻ったようだ。よかったよかった。やっぱり覚悟ができてるとか、そういうことがしたいって言っても、こう急に来られると恥ずかしがっちゃうんだなぁと感心していると、ましろちゃんが旅行かばんからかわいらしいポーチを取り出して……タンマ! おかしい! まるで昔の駄菓子のようにミシン目で繋がった個包装のアレをキミが取り出してくるのは絶対におかしい! 

 

「はい、じゃあもう一回!」

「もう一回ってなに……?」

「さっきの、すごいドキドキした! もう一回して?」

「……え」

「だめ?」

 

 どうやら、ストレートだと思ったら同じ軌道のスプリット系だったらしい。ホームランだと思った俺の渾身の一振りはあえなく内野を転がりアウト三つ、ふたたびましろちゃんの猛攻の前にあえなく連打からのホームラン、ここから逆転サヨナラは無理みたいです。だから一言だけ、そりゃヒーローインタビューもできないけど一言だけ、取材に応えておきます。

 ──やっぱり俺にとっておっぱいは神が生み出した芸術品だったよ。人生初の生おっぱいの感触はそりゃあもう、筆舌に尽くしがたいものだった。

 

 

 

 

 

 




こいつら合体したんだ!
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