おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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変わってない?うそつけ。


第1話:変わらないと思っているのは

 八月も後半ではあるが変わらない日常が続いている。ちょっとは変化したのかな、わからないけど俺的にはいつも通りおっぱいに五体投地するような日々が続いていた。そう、バイト漬けの日々である。というか後半くらい働かないと九月の給料がしんじゃう。ライブ行けなくなっちゃう。パスパレの円盤も買えなくなっちゃう。

 

「今日もカノジョ、来るってさ」

「カノジョじゃないですって」

 

 何回このやりとりやんねんと関西弁になってしまいそうになる。でも確かに前にも増して頻度が高くなったような気がする。俺としては休憩中におしゃべりする相手と帰りに寄り道一緒にしてくれる相手ができて嬉しいからいいんだけどさ。

 

「って質問ばっかりでさ、最近」

「それは災難ですね」

「他人事だ」

「私に実害がないので」

 

 薄く笑みを浮かべながらそんなことを言われる。実害ならあるでしょ、ここ来るたびに俺との関係を色々と問われるんだから。そういうの迷惑してたらごめんねとバイトのメンバーに変わって謝罪をするといいえ、とどこか楽しそうに首を横に振った。

 

「あなたが謝る必要はないわ」

「そ、そう?」

「迷惑だなんて思ってもいないし」

 

 まぁ瑠唯さんがそう言うのならいいのか? まぁいいや。俺も気にしないようにしようと思ってたところだし。旅行以来、瑠唯さんはこうして予約しては音楽の話以外にも雑談をしていくようになったし、なんならそのまま帰りまで待ってご飯まで一緒する頻度が増えた。

 

「ところで」

「はいはい」

 

 新曲の練習に付き合って、演奏に口を出すことを許可してもらっての一通りの会話の後のことだった。この流れだとご飯だろうか、最近は瑠唯さんの好物である白玉ぜんざいのおいしい店を自然と探すことが増えた。以前燐子さんが瑠唯さんからおすすめされたあのお店が一番多いけど。

 

「明日、アルバイトないのでしょう? 何か予定はありますか?」

「……え、ないけど?」

 

 基本的に俺の休日の過ごし方はおっぱい求めて羽沢珈琲店か家でゴロゴロ、つくしに予定がないと突貫してつくしの家でゲームとかやることが多い。あの家は快適だしガキの頃から自分ちの次に寝泊まりした場所だからなんというか気楽だしな。

 

「なら、少しお付き合いできますか?」

「え、明日?」

「はい、いけませんか?」

 

 慌てたように首を横に振る。瑠唯さんから休日のお誘い!? 珍しいというか初めてのケースなので言葉に詰まってしまった。いやいや、おっぱい大好きな俺がそんなお得な誘いを断るわけないじゃん? しかもお相手はビッグセブン随一のスタイルを持つ瑠唯さんだもん。断れることでもない。

 

「具体的には──」

「ごめん、そろそろ時間だから」

「なら、詳しい話はご飯の時にしましょうか」

「おっけー」

「ではまた」

 

 それにしても、瑠唯さんからのお誘いかぁ。シリアスめに行ったほうがいいんだろうか。最近の会話がなぁ、くっだらないの多いんだよな。そもそもそのくっだらない話ができるくらいまで距離が縮まったんだけど。

 

「あ、おつかれーっす、今日は休憩ギリギリでしたね。トレーニングして長持ちするようになったんすか?」

「ブチ殺すぞ」

 

 端的に中指を立てたい気持ちをぐっとこらえて言葉だけで留めていく。いつものネタじゃないですかーとか言われても、俺からすると瑠唯さんみたいなヒトを捕まえてあろうことかおっぱい狂いの陰キャと付き合うとかそういうコトをしている間柄ってすること自体がもう不敬というか、あっちゃいけない感じがするんだけど。

 

「お疲れ様、コーヒーでよかったかしら?」

「あ、ありがと」

「ええ」

 

 なんだかどんどんと、瑠唯さんが砕けている気がする。時折敬語が消えるんだよなぁ。そしてなによりそういう時は無表情なんかではなくて、クスリと笑っていたり、呆れていたり、色んな感情が見えてくる。今はなんだか楽しそうというか、嬉しそうだ。きっと白玉ぜんざいのことを考えているのだろう。

 ──ところで特に意味があるわけじゃないけど瑠唯さんは肌白いからきっと白玉のようにもちもちでぷるぷるなんだろうなと思う。そういう意味では俺も瑠唯さんの二つの白玉に興味津々なんだけど。サイズ的には白玉というかメロンとかスイカとかに比べるサイズなのはそう。

 

「どうかしましたか?」

「いや……ところで傘持ってきてる?」

「いいえ」

「じゃあ俺んちに荷物置いて、傘貸すよ。ほら」

 

 そう言って雨雲レーダーなるアプリを見せる。八月も後半にさしかかり梅雨は遠く昔のことになったけれど、その代わりにゲリラ豪雨が降ることがある。その予報を細かくしてくれる便利なアプリだ。すると瑠唯さんはでしたら最も効率的な場所がある、と行先を決める。

 

「あなたの家で、というのはどうかしら?」

「俺んちで?」

「ええ……お母さまさえよろしければ、ということになるけど」

「あー今母さんと父さんバカンス行ってるから」

「……バカンス」

 

 金持ちの発言だよな。俺もそう思うんだけど、母さんがお盆周辺は旅行しないと気が済まないタチだから父さんを連れて、流石に国内なんだけど一週間近くいなくなるんだ。まぁうちの父さんも土日だけじゃなくてお盆や正月、GWは休みの優良企業に勤めてるからできることなんだけど。

 

「……そう」

「瑠唯さん?」

「今、最も効率的な時間の使い方を考えているわ」

「お、おう」

 

 もう一度アプリを見せて、瑠唯さんは顎に手を添えて考える。効率的な時間の使い方、ですか。きっと今頃瑠唯さんの頭の中ではシャーロックホームズのように今まで手に入れた情報から最適なものを選んでいるのだろう。そして、閃きの電球を浮かべ、瑠唯さんは雨が降る前にコンビニへ行きましょうと提案した。

 

「着替えを、せめて下着を買いたいわね。この間のように下着をつけずに服を着るという居心地の悪い恰好はしたくないわ」

「なるほど……なんで着替え?」

 

 全然繋がりがわからなくて訊ねると、まるで閃かないワトソンに対して丁寧に解説するように瑠唯さんは指を立てて、コンビニに向かっている道中に説明してくれる。あ、下着選びは流石に俺見ないようにしますね。というかコンビニに瑠唯さんのサイズとかあるのだろうか。

 

「私たちは明日、一緒に出掛けるわね?」

「だね」

「そして今日は夜中まで結構な雨が降るわ」

「みたいだね」

「楽器のこともあるし、これなら泊れば時間効率がいいでしょう?」

「あーなるほ……はい?」

 

 納得しかけたけど、泊まるの? ちょうどご両親もいないから変に気を遣うことも関係を怪しまれることもないしとやや早口に説明してくれるところありがたいけど、泊まるの? え、確かにね? 理には適ってる。止むまで待ったほうがいいってのは確かにそう。だけど、おかしくね? 俺んち俺というおっぱいに対してゴミみたいな視線ぶつけるゴミが一匹ですよ? そこに泊るということは飢えた猛獣の前に生肉抱えて歩き回るようなものじゃね? 

 

「……草食動物は肉を食べないでしょう?」

「それって暗に俺が手を出すような度胸ある男に見えないって言ってる?」

「ええ」

 

 そのくらいのリスクヘッジは計算ずくよと言われてぐぬぬとリアルに声にした。ただ反論もできないため、結局押し切られるカタチで瑠唯さんを家に上げることになった。前回の突発的で一瞬しかなかったのとは違う。というかご飯もうちで食べるってことだよな? うわ、何作ろう。今日は瑠唯さんこなかったら一人でトリカラパーティじゃ! とかおっさんみたいなこと考えてただけなんだけど。

 

「それでいいですよ」

「え、トリカラと中華風スープと米でいいの?」

「サラダはないの?」

「ない」

「……ならコンビニでサラダも買いましょう」

 

 そうして瑠唯さんはアメニティやら泊まるための色々に加えてサラダと烏龍茶を購入し、急ぎましょうかと小走りで俺の家へと向かっていく。

 ──と、とんでもねぇことになった。そんな驚きと仄かな緊張を抱きながら俺は瑠唯さんをやや追いかけるようにして帰路へとつくのだった。

 




恋する乙女のムテキの計画始まろうとしていた!
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