おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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どっちが? 大輔がだよ!


第4話:食わず嫌いのオオカミ

 なんというか、なんというか自宅のお風呂入るのに緊張する日が来るとは思わなかった。いつもと変わらないはずの、毎日入って見慣れてる場所なはずなんだけど、瑠唯さんの後ってだけで妙な緊張感があった。

 

「あら、思ったより早かったんですね」

「ま、まぁ……元々だし」

「そう」

 

 ごめんなさい、俺意外と長風呂したい派なんです。なんならつくしと電話しながら半身浴することもあるくらいだし、女子かってツッコミを受けたこともある。だから今日は直近で一番の速度、まさに烏の行水というやつだ。

 

「立ったままでいいのかしら?」

「……あ、あはは、テンパっちゃってて、ごめん」

「いえ、私も、この顔を保つのでいっぱいいっぱいなので」

 

 その顔はいつも通りにしか見えないんだけど、流石は瑠唯さん。ホントにポーカーフェイスさせたらナンバーワンだと思う。気を付けて観察してないと真実の顔は全然わからない。今は、割とドキドキしてるのかな? やや目線が合わない気がした。

 ──それにしても、まぁ俺もね、ついつい目線が下に行くから一緒なんだけどな! 

 

「……薄着すぎじゃないです?」

「私、いつもこれくらいなのだけれど」

 

 そりゃ家ならいいよ? キャミソールと短パンでもさ! 上に羽織ってるとかいいつつ半脱ぎで肩が出ててもね? だけどさ、ここ俺んちであり男はみんな狼という言葉があるように狼を目の前にして肩と胸元オープンはどうなのさ! 

 

「大丈夫よ」

「なにが?」

「一匹狼は親から自立して群れを探しているか、乗っ取られ追い出されたかの二択だもの」

「……ああ、そういう?」

 

 狼は元来五匹とかそのくらいの群れで暮らす生き物だもんねってそうじゃないやい! 肉食動物的な意味だって! そう言うと瑠唯さんは頷きながら、男性は狼かもしれないけれど俺のことは草食動物のようだと形容してきた。

 

「今めっちゃムカっとした」

「したなら……どうやって否定するのかしら?」

「……どうって、どうやるの?」

 

 そう言うと瑠唯さんは無言で避妊具(コンドーム)を持ち出してきた。バカじゃないんですかね。流石に瑠唯さんだってそこまでの覚悟があるわけじゃない……よね? え? あるの? じゃなきゃ買わない? そうですか。

 

「使いますか?」

「俺に覚悟がないからムリだね」

「でしょうね」

 

 そのわかってましたよみたいな顔されるとそれはそれでムカっとするね。いやそんな売り言葉に買い言葉で流されたりしませんけど。身持ちが固いとか責任感が強いとかじゃなくて、単純にその責任を取る覚悟がないだけ。

 ──瑠唯さんと一緒にいるって覚悟がないだけだ。

 

「恋愛に対して、あなたは食わず嫌いをしているのね」

「食わず嫌いって」

「でしょう? 私も、以前は……正直バンドという音楽形態を、軽く見ていた」

 

 よく知りもせずに、イメージだけでクラシカルよりも下に見ていた、という言葉にそっかと頷いた。瑠唯さんは根っからのバイオリン奏者で、本人的にはどうでしょうねと息を吐いていたけれど相当音楽が好きだと思うから。

 

「一度は音楽を捨てた身よ。そこまで……買われるほどのものじゃ」

「でも、捨てきれなかった」

「……それは」

 

 前に言ったけど、俺はそもそも挑戦することすらしなかった。音楽が好きなのに、心のどこかではきっと演奏してみたいと思っていたのに。くだらない自己肯定感に惑わされて挑戦してみることすらせずにいた。恋愛に関してもそうなのかも。別に痛い思いをしたわけじゃない。なんかイヤなことあったの? とましろちゃんにも言われたけど、全然、むしろ俺から勝手に遠ざかっただけだ。

 

「てっきり、胸の関連で女性を傷つけたのかと」

「あー……まぁそれはちょっとやったけど」

「やったのね」

 

 いや大したことじゃないんだよ。ただ小学校高学年から中学の途中までつくしとちょっとだけ気まずかった時期があったってだけ。その時に恋心もどっかに置いてきちゃったんだけど。久しぶりに会ったら全然、なんか好きって気持ちもなかったんだよね。

 

「ボリュームの問題だったのかしら?」

「いや! それはないと思うよ……いやごめんわかんないけど」

 

 何か明確な理由があるってわけじゃないし、そもそも俺、あんまり自分の行動に理由を求められると困っちゃうタイプの人間だし。あれだよ、なんで宿題やらなかったの! って怒られてもなんでだろうなぁって自分で思っちゃうやつだよ。

 

「……わからないわね」

「でしょう? 俺も」

 

 そんなくだらない話をしていると思わず欠伸をしてしまった。なんやかんやと驚くことや感情の動きが忙しなくて疲れたのかもしれない。いやそもそもバイト終わりだし。そろそろ俺としてもおねむの時間なのだ。

 

「……ベッドで寝ていいよ、瑠唯さん」

「あなたは?」

「ここで寝るよ」

 

 たまにソファで寝落ちしてるし、このソファ広いからフツーに寝れるんだよね。いつも使ってる布団とまくらを持ってきて、部屋についてるクーラーは好きに使っていいよと言っておく。なんか、眠くなってきたら落ち着いてきたというか恥じらいとか焦りがなくなったよ。眠気優先、大事。

 

「そういえば、訊ねることがあったのを忘れていました」

「なに?」

「朝はパンとご飯、どちら派ですか?」

「うちはご飯派だね」

 

 時間がない時はパンで済ませようとコンビニでパンとかサンドイッチとか買うこともあるけど、基本は米とみそ汁とサラダと食べてくのがベストだと思ってる。あと卵料理ね。そうペラペラと余計なことまで言うと瑠唯さんはなるほど、と納得したように俺の部屋へと引っ込んでおいた。んー瑠唯さんが俺のベッドで寝るのか……ベッドの下の収納とか触らないよな? 大丈夫だよな? いやまさか瑠唯さんに限って漁るとかないよな? というか仕舞ってあるよな? 

 

「なんか……急に不安になってきた」

 

 とかなんとか言いつつ、スマホでテキトーにSNSを眺めていたらそのままウトウト、眠りについてしまった。それにしても部屋着の瑠唯さん、おっぱいもそうなんだけどやっぱり全体的なプロポーションが良すぎるということに気づいた。薄着だと腰回りとかわかるもんだ。寝落ちしながら考えたことはそんなことだった。

 

「宗山さん」

「……んぁ、るいさん?」

「おはようございます」

 

 ──寝れるかなとか考えてたクセに次に目が覚めた時はすっかり朝で、瑠唯さんが俺をのぞき込むようにして起こしてくれていた。でっか、じゃなくておっぱい、でもなくておはよう。朝からキャミソール越しのおっぱいは眼福ではあるんだけどね、色んな意味で大変なことになっちゃう。

 

「朝ごはんを作りたいのですが」

「あ、ああごめん作るよ」

「いえ、私が」

 

 瑠唯さんが? いや悪いよと遠慮するけど泊めてもらいっぱなしは居心地が悪いからどうしても、とのことでそういうことならと俺が補助する形で台所事情に詳しくない瑠唯さんがご飯を作ることになった。

 

「……あと、すみませんがシャワーを浴びてもいいですか?」

「ん? いいよ。俺もよく朝シャワー浴びるし」

「なら一緒に入りますか?」

「んぐっ……それはよろしくない」

「失礼しました」

 

 一瞬変な想像しちゃったじゃん。ところで遠慮がちに言われたけど寝苦しかったのかな? 汗かいちゃったとかだったらもうちょっと温度下げてもよかったのにと、あくまで涼し気な顔でみそ汁をすする彼女を窺う。

 

「そういえば」

「なに?」

「女性を泊めるのに、枕元にそういう写真集を置くのは」

「──ごめんなさいホント許してわざとじゃないんです」

 

 やっぱり! 昨日の朝に片付けた記憶がなかったんだよな! ちなむ必要もないけどやっぱりおっぱいな写真集で、割とお気に入りだったりする。あれだよ、リアルおっぱいにはセクハラしないけど、結局性癖だからそういうネタもおっぱいなんだよな。

 

「誘っているのですか? 夜這い待ちなのかと思いました」

「そんなつもりじゃないんです勘弁してください」

「冗談ですよ」

 

 冗談なんかい。昨晩のくだりからすると冗談じゃないような感じが……えっとどっちが嘘? 夜這いが嘘なのか夜這いが冗談なのが嘘なのか。そう訊ねると野暮なことは言わないでと微笑まれてしまった。普段は絶対見ることの叶わない瑠唯さんのアルカイックスマイルは、なんかそれだけでそこはかとないエロスを感じてしまったのだった。

 

 




こいつらいつになったらデートするんだよ。つかはよ付き合えや。もうましろちゃんはとっくにエンディングしたのにもう一話引っ張ってんじゃんかよ。

補足すると瑠唯さん、えっちな写真集はちゃんとベッドの下の収納スペースに丁寧に整頓して仕舞いました。ええそれは丁寧に。シャワー浴びたくなるのもわかるほどに。
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