おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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お前のことが好きだったんだよ!


第5話:隠してきた想いは止まらない

 デートという言葉に過剰反応してはいるけど、相手が瑠唯さんだということさえ除けば慣れたものだ。ましろちゃんやひまりにちょいちょい振り回されてる俺からすれば、デートはもはや上級者といっても過言だった。ごめんなさいめっちゃ緊張してる。

 

「それで、どこに行くの?」

「……決めていなかったわ」

「はい?」

 

 でもきっちり効率的な瑠唯さんのことだから完璧なデートプランを考えてるに違いない。なんならロマンとかなく欲しいものを淡々と回るだけかもしれない! という甘い考えは出掛ける前に打ち砕かれた。

 

「え、決めてる風じゃなかった?」

「具体的な希望などを、昨日の夜決める予定だったのだけれど」

 

 けれど、告白やらなんやらでバタバタしてたら忘れてしまったと。瑠唯さんはあれなの? 慣れないことに関してはポンコツ発揮するタイプのクールキャラなの? 新たな一面というか、そもそも決めてから誘ったわけじゃないんだという驚きがあるんだけど。

 

「一緒にいたかった」

「ん? え、あ……あー、なるほど?」

「ええ、恥ずかしい話だけれど、一秒でも、少しでも……あなたと過ごす時間がほしくて、無我夢中だったの」

 

 クリティカルヒット! 流石にポーカーフェイスが保てなかったのか俯き気味に目を逸らす瑠唯さんの表情と発言が世の男の七割を魅了したに違いない。こ、ここまで惚れられてるのか、ちょっと実感湧いてなかったけど、恋する乙女って感じだ。

 

「じゃあ……どうする?」

「ここに、いてもいいかしら?」

「え、いや……えっと」

 

 どうしよう、嫌とは言えない日本人どころかきっと断固たる意志を持ってるヒトでも揺らぐような上目遣いを瑠唯さんがしてくるとは思わないじゃん? 瑠唯さんって実は犬系女子だよね。ましろちゃんと同タイプ。あっちは甘えたがりの小型犬って感じだけどこっちは甘え下手だけどじゃれたくてしょうがない大型犬みたさはある。俺は犬派です。

 

「じゃあ、おうちデート、ということで」

 

 瑠唯さんが頷く。なんかもう、雰囲気がかわいらしくなってしまっている。どうやら意中の男性の家で一晩過ごすというのは瑠唯さんのポーカーフェイスを機能不全にしてしまったらしい。なんだその男、罪深いな。罪深すぎて目が乾いてしまうね。クーラーのせいか目をシュコシュコさせていると瑠唯さんはソファに座って、隣に俺を招いてやや首を傾げながら、訊ねてきた。

 

「どうして、許してくれるの?」

「な、なにが?」

「……愛想もよくない、表情の変わらないつまらない女が、あなたの笑顔を独占すること」

 

 いや、俺そんな自分の笑顔に特別な価値見出してないし。しかも瑠唯さんとおしゃべりするの楽しいから笑ってるだけだし、瑠唯さんの第一印象なんて愛想のないヒトとかでも、クールでカッコいいとかでもなくて、でっか! おっぱいでっか! だからね。

 

「それだけで、私は宗山さんのこと、好きになってしまったの」

「あ、アリガト……でいいのかな」

 

 まっすぐってわけじゃない。普段の瑠唯さんの言葉とは思えないくらいに自信のないようにゆらゆらと揺れる感覚の、だけどはっきりと好きと言われてしまって思わず照れてしまう。なんかもう、瑠唯さんはホントに甘酸っぱいくらいの恋をしてるんだなぁって感じてしまう。そしてなにがってその相手が俺なんだよな。

 

「ずっと、倉田さんが羨ましかった、二葉さんが羨ましかった」

「……瑠唯さん?」

「天真爛漫にあなたを振り回せる倉田さんが、幼馴染としてあなたにとって特別な存在である二葉さんが、羨ましかったの」

 

 瑠唯さんはそう言うとソファの上で膝を抱えて丸まってしまった。ホントにいつもの瑠唯さんの面影はどこへやらという状態だけど、それがずっと彼女が仮面の奥に隠し続けた少女の本音だった。

 

「前に、俺に訊ねてきたよね、愛想は必要かって」

「……ええ」

「それって、その方が俺の好みだって思ったってこと?」

 

 無言で頷くことで肯定を示す瑠唯さん。そっか、確かに俺の周囲の女の子は愛嬌があって元気な子が多いもんね、特に瑠唯さんが知ってる俺の知り合いなんて、ましろちゃんとつくしと、ひまりも知ってるかな? あとイヴちゃんだもんな。

 

「俺、ましろちゃんがかわいいなって思うところはたくさんわかるよ」

 

 人見知りなのに懐くと甘えん坊になるところとかね、あとは瑠唯さんも思ってるように感情がストレートに顔に出るところとか? ひまりもそっちのタイプだよね、あれは甘えたがりというかただわがままって場合もあるけど。

 

「そう、よね」

「うん瑠唯さんもね」

「……私?」

「瑠唯さんのいいところ、たくさん知ってるつもりだよ」

 

 音楽に対してものすごくストイックなところとか、クールでポーカーフェイスなところももちろんそうだし、甘いものが好きなところとか、それを食べてる時とかはそんな普段のクールさとはまた違った一面があるのももちろん、そうだと思う。

 ──瑠唯さんを形成している八潮瑠唯というパーソナリティ。それ全部が俺にとっては瑠唯さんのよさだと思ってるよ。

 

「宗山、さん」

「俺が言えたことじゃないとは思うんだけど、瑠唯さんはもっと自分を好きでいいと思うよ」

「……本当に、あなたが言えたことでは、ないわね」

 

 まぁほら、俺はさ。こんな真面目でいい話してる最中も徐々に迫ってくるおっぱいにやや気を取られがちだからさ。我ながらなんてクソ野郎なんだろうな、そんな風に自嘲すると瑠唯さんは少し考え事をしたような仕草をしてから、何を思ったのかソファの上で四つん這いになってこっちに近づいてきた。あ、だめ、見たいけど見てはいけない! こぼれそう! 重力の神秘を感じた! 

 

「る、瑠唯さん?」

「逃げないで」

「逃げるに決まってるよね!」

 

 とはいえ俺のことが好きという気持ちだけで、自己嫌悪を押し殺してここにいる瑠唯さんを強く拒否るとましろちゃんの二の舞になりかねないので、肩を掴んで抑えることしかできない。うわ肩すべすべ! 違う! そう思っていたらするりと黒いキャミソールの肩紐が二の腕のほうへと逃げていって……ッスーやっべ。

 

「……見ましたか?」

「見てない」

「そうよね、くすんだ色だもの」

「いや特にそんなこと、キレイなピンク……とかわかんないですね、ハイ」

 

 なんの色とかは敢えて口にしない。ところでそういう誘導尋問はよくないと思います。しかもリアル先端は初めて目にしてしまったので興奮がすごい。あれだ、俺実は肉食だったわみたいな、こう……しまった、いつもおっぱいのグラビアをオカズにしてる弊害が。

 

「宗山さんって」

「なに」

「私のこと、好き……なのかしら?」

「……え」

「図星ね」

 

 さぁ、なんのことでしょう、とは言えない。いつからという問いにも答えることはない。黙秘権を行使します。俺はあくまでおっぱいが好きな一般的変態だよ。それ以上でもそれ以下でもない俺が瑠唯さんと付き合えるわけないと思ってたし音楽談義をしているだけで充分だったのに過剰供給を受けてるとかないから。

 

「……とんだポーカーフェイスね」

「あはは、瑠唯さんにお墨付きもらうなんて」

「自覚したの、最近なのね」

 

 それも図星です。最近というかマジこの家に泊まるって言われた時くらいからだし。最初はいやいや俺チョロすぎんかとなって否定し続けて夜が明けたわけだけど、瑠唯さんの言葉を聞くたび、瑠唯さんの気持ちを知るたびにその否定の壁が音を立てて崩れていくんだから。でも思えば、本格的に気持ちが向いたのは、旅行終わってちょっとしてからだと思うよ。

 

「でも! でも付き合うとか……その先のこととかは今はナシにしてほしい」

「どうして?」

「いや……ゆっくり考えたいから……いい?」

「いい、けれど……ひとつ条件があるわ」

 

 なに、と訊ねて警戒を緩めた瞬間、俺の言葉と驚きが瑠唯さんの口の中に全部吸い取られていった。それはもう濃厚で頭がくらくらとしそうなくらいだ。再び復活した脳みそがようやく肩を掴んで引きはがすと、瑠唯さんの舌が名残惜しそうに俺から離れていった。

 

「ご両親がバカンスの間、私を泊めること」

「それ、瑠唯さんが決め……ていいですから近づいてこないでください」

 

 脅迫だぞこれ! そんな抗議をしたいけど私は初めてだったのよと言ってきた。俺だって初めてだよこんちくしょう! というか初めてで舌を入れるのやめてくんない!? だけど俺はもう言質を取られてしまった。ここで嘘を吐けばまた襲われる。

 

「なら、買い物ついでに着替えなどの荷物を取りにいきましょう」

「……なんでこんなことに」

「付き合うとか、その先のことはこの間に考えた方が効率いいわよ。二人でゆっくり、将来を考えていきましょうか」

「それって遠まわしに待つつもりはないって言ってる?」

「……さぁ、どうでしょうか?」

 

 そこから瑠唯さんのまっすぐで一途な、なにより好きな人からのラブコールと隙を見せると唇を奪われるという直接的なエロスを浴び続けた俺が瑠唯さんの買ってきた小さな箱の中で個包装になっているアレの表裏を間違えるという珍事を起こすのに一週間という時間はあまりにも長すぎたことを、ここに記しておく。

 ──とっくの昔に俺は負けていて、お互いに明確な言葉にすることなく恋人関係になり、そこからバイト先では知らぬもののいないバカップルと呼ばれるようになるのだった。

 

「いや俺は悪くないね」

「あら、そうかしら?」

「瑠唯はうちのバイト先のことホストかなんかだと思ってない?」

「でも大輔、嬉しそうに入ってくるわ」

「……嬉しいからね」

「私も」

「そっか」

 

 きっと瑠唯はみんなにとって、俺とはあんまり釣り合ってないキレイでクールな女性ってイメージが強いんだろうけど。俺にとってみればちょっと隙を見せると近づいてきて唇奪ってくるし、ポーカーフェイスってなんだっけってなるくらいに、でもやっぱり月光のような優しい笑みをしてくる。そんなかわいくてカッコいい自慢の、俺にとってなによりも優先すべき正義だよ。

 

 

 

 

 

 




おっぱいヒロイン図鑑(完全版)
№02鳴かぬなら鳴かせてみせよう:八潮瑠唯
 クールキャラにみせかけたとんだポンコツ恋愛脳。大輔が好きなのでガールズバンドの楽曲視聴も趣味になったし、おっぱいプリンなるものを調べて自分の型を取ろうとしてつくしに止められるという未来を持つバカップル。シンプルに大輔が絡むと頭が悪い。
 実のところ大輔がおっぱいが好きでよかったと思っている。それだけ夢中になってくれるから。別に他の人を多少見ようが結局は自分のおっぱいに戻ってくるので問題ナシ。恋心を自覚し始めたあたりからカタチを保つ努力も怠らないストイックさもある。


というわけで瑠唯編終了です! お次は№03大和麻弥編です!
推しは推しのまま推したいけどおっぱいは見たい!
これまで通り一日から三日ほど空きますのでご了承くださーい!
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