おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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まず言います。終わりませんでした。


第4話:甘々ウィンターデイズ

 季節が流れた。コートとマフラーのこの時期はあんまり好きじゃない。寒いのが苦手というのももちろんあるけど、やっぱりおっぱいが見えないのが問題だと思う。そりゃ俺の好みの女性は多少厚着をしたくらいじゃ負けないおっぱいを持ってるし、セーター越しの強調されるおっぱいを見るのが一種楽しみではあるけど、道行くおっぱいを観察する機会が減るのはよくない。

 

「ダメなんですか?」

「いや麻弥さんは別、あったかくしてくれないとダメです、というかマフラーは?」

 

 そんな俺の力説をやや苦笑い気味に反応してくれるのは大和麻弥さん。あの告白以来、別にいいよとか言ってないけどやや恋人気味の距離感で一緒に過ごす間柄になっていた。観察するのにマフラーやコートでラインが隠れるのはよくないけど寒そうな恰好をされるのはもっとダメです。

 

「いやぁ、元々あんまり得意じゃなくて」

「今日は一段と寒いんですから、貸しますよ」

「え、いやいや悪いですよ」

「問答無用です!」

「そんなイヴさんみたいな!」

 

 遠慮する麻弥さんに言葉通り問答無用でマフラーを巻いていく。なんならニットもと言うがそれは全力で拒否されてしまった。似合わないって言うけど絶対そんなことないと思うけどな。

 

「手袋もしてないし」

「フヘヘ……」

「カイロ、予備あるから使って」

「あ、ありがとうございます……あったか」

 

 一緒に過ごしていて気づいたけど、自己申告で想像していた数倍、麻弥さんは自分に対してテキトーでガサツだ。千聖さんもそれに関してはあなたがなんとかしてあげるべきよ、とか抜かしてきた。おい番犬、松原花音さん以外はどうでもいいのか。

 

「あ、あの……寒くないですか?」

「平気だ──っしょい!」

 

 いきなりくしゃみが出た。さっきまでぬくぬくの首元だったのに急に吹きっさらしになったんだから当然である。風邪をひきやすい要因は温度差だからね。

 俺の様子を見た麻弥さんは慌てたようにマフラーを返そうとするけどそれはダメですと突っぱねた。

 

「でも」

「でもって心配してくれるなら自分のマフラーを持ってきてもらえると嬉しいですね」

「うっ……おっしゃる通りっス」

 

 ということで買い物リストにマフラーや手袋を加えていく。まだまだこれから寒くなるんだから買っておいた方がいい。そう言うと麻弥さんはそうっスねと笑って俺のコートのポケットに手を入れてきた。

 

「コッチの方があったかいっスね……フヘヘ」

 

 あったかいどころか顔が熱くなりそうで、チラリと麻弥さんを見ると麻弥さんもちょっと照れ臭そうに笑っていて、俺もつられて笑ってしまう。こんな風に、いつの間にか俺と麻弥さんは誰もがはよ付き合えよと言わんばかりの空気を形成するようになっていた。お相手アイドルですけどと思ったり思わなかったりしたけど、そこはあんまり問題じゃないらしい。

 

「でも手袋は買いますからね」

「はい、了解っス」

 

 こうやってデートしてる時は自分でも甘ったるい雰囲気だなと思うんだけど、俺と麻弥さんが顔を突き合わせれば話す内容は全然前と変わらないし、俺はいまだにおっぱいへの執着を忘れられない。麻弥さんと一緒にいても、おっぱいの大きな子には反応するし、なんなら麻弥さんのおっぱいに夢中だ。

 

「ジブンは見過ぎなければいいんですけど」

「すいません、気をつけます」

「そう言って何ヶ月経ったんですかね」

「……だって」

 

 苦笑いされてしまうけど、だって俺は結局、おっぱい好きな自分に正直になってしまうのよ。それは俺にとってのアイデンティティだからね! そう言うと麻弥さんはため息ひとつ零して、ジブンに向かってアイデンティティはずるいっスとむくれた。え、なに今のかわいい。

 

「きゅ、急にそういうのは反則っス、イエロー二回で退場っス!」

「ファールは五回で退場ですよ」

「競技が違いますよそれ!」

 

 そもイエローのないファールもあるけどねとは口には出さないでおく。そんな甘々な雰囲気を醸し出しながら麻弥さんにマフラーと手袋を買って、けど麻弥さんはそのマフラーを俺に手渡して、手袋の右手だけを装着した。それを察して俺も右手の手袋を外すくらいのデリカシーは、残念ながら身についてしまったよ。

 

「フヘヘ……」

「嬉しそう」

「だって、アイドルになって……正直こんな風に好きなヒトとイルミネーションの中を歩けるなんて、夢にも思いませんでしたから」

「麻弥さんも反則」

「四回までなら、セーフなんスよね?」

 

 ずる、麻弥さんも充分ずるいって。そんなクリスマスの浮かれた雰囲気の中で、俺は麻弥さんと浮かれていく。恋人でもないのに、もう気分は恋人同然だ。でも、そんな俺のブレーキになっているのは、こういう一緒にいる状況だから好きになったんじゃないかってことだった。隣にいる子なら、誰でもよかったんじゃないかって葛藤みたいなもの。

 

「宗山さん」

「ん?」

「今日は……もう少しだけ、くっついてもいいでしょうか?」

「ど、どうぞ」

「で、では……失礼します」

 

 肘に柔らかな感触があり俺の頭は一瞬で赤と緑のクリスマスカラーからいつものおっぱい真っピンクに早変わり、なんて素敵なスプリングデイズみたいな。まだ春には早すぎる気もするけど。でも、俺と麻弥さんの浮かれ具合はまだまだ加速していく。なにせ俺と麻弥さんのクリスマスはここからが本番だからね。あ、変な意味じゃないよ。

 

「予約したケーキ、楽しみっスね」

「でも、ホントに俺んちでよかったの? ほら、ここはビシっとディナーとか」

「……高級なものは、その」

「そうだった」

 

 なにせデート先にラーメン食べに行くレベルだからな、このカップル。麻弥さんはカジュアルな店じゃないと味がわからないと目を回すので。駅ビル上階のレストランとかは一度も行ったことはなかった。なんなら瑠唯さんとは行ったことあるけど。あのヒトのフォーマルな格好はセレブのそれだった、うん。

 

「それで結局、八潮さんは諦めた……でいいんスか?」

「ちゃんとフったはフった……はず」

「不安な語尾っスね……」

 

 いやだって、あの熱烈なラブコールにタジタジだったんだから。そう言うとまた麻弥さんはちょっと不満げな顔をした。かわいい、ヤキモチ麻弥さんめちゃかわいい。もうこのヒト俺の嫁でいい? いいよね? いかん、最近麻弥推しの厄介さが加速してガチ恋勢にパワーアップしてしまったからね。いやマジの意味のガチ恋。言葉にはできないけど愛してると言っても過言ではない。

 

「俺には、麻弥さんがいるからって」

「そ、そう……っスか……フヘヘ」

 

 甘々、空気中に砂糖が含まれているんじゃないかという感じだ。ケーキ屋さんで予約したケーキを受け取って……めっちゃ忙しそうで申し訳なくなりながらもおっぱいのおっきなお姉さんに丁寧にありがとうございますと受け取っておいた。

 

「また色目使ってましたね」

「その言い方は絶対におかしい」

「すぐ、胸が大きいと愛想がよくなりますからね」

「それはそう」

 

 認めるんスか! と怒られる。しょうがない、それは事実なので認めることしかできない。でも今では一番のおっぱいも麻弥さんですとも。それはそれで変な雰囲気になるので言いませんが。変な雰囲気ってそういう雰囲気のことだよって注釈はいいか。

 

「ふぅ……やっぱ家はいいっスね」

「俺んちだけど」

「いいじゃないっスか! もう慣れましたし」

「まぁ……確かに?」

 

 麻弥さんはちょいちょい家に来るようになった。いやいい雰囲気にはならないんだよ。なにせ普段はつくしも来るからね。曰く付き合う前から二人きりは不健全! だそうだ。確かに、正論だわ。

 ──とはいえそんな健全キャラのつくしちゃんも流石の今日は邪魔する気にはなれなかったらしくモニカのクリスマスライブのリハの真っ最中で、そのまま某夢の国の最上級ホテルでクリパするらしい。セレブはクソ、はっきりわかんだね。

 

「それじゃ準備しようか」

「了解っス!」

 

 でも、俺はこっちのクリスマスパーティーの方が幸せな感じがしてしまうのは、やっぱり隣にいるヒトのおかげなんだろうなと思う。ところでやっぱり巨乳にセーターは正義だなと思ったので素直にそれを口にしてソファにあったクッションを投げつけられた。解せん。

 

 

 

 




瑠唯「告白カットされた私の方が解せないわ」

というわけで終わらなかったので次回がエピローグとなります。またお泊りかよ!
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