おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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前回のあらすじ:あれから――数ヶ月。


第5話:エピローグは実質の関係で

 クリスマスといえば七面鳥だけど、実際に買うと高いので気分を味わうためにお得意のトリカラである。白髪白髭白スーツのおじさんが目印のフライドチキン専門店という手もあったけど、繁忙期ということもあり予約で長蛇の列が並ぶらしくそういった準備のない俺は諦めることにした。でも鶏肉も品薄だから笑うけど。みんな考えることは同じなのかもしれない。

 

「お、おお……! おいしそうです!」

「俺がヒトに振る舞える数少ない料理だし」

 

 冬らしくコーンポタージュにチキンライスも作って、ちょっとだけクリスマスっぽさを演出していく。当の麻弥さんは野菜スティックだからあんまり変わらないのはそうなんだけどね。でも、なんかこういうのもいいなと思えるのは隣に飾らない彼女がいるからなのかもしれない。それかおっぱいか。

 

「おいしい、おいしいけど……ケーキも入るかどうか心配っスね」

「確かに、小さいけどホール買っちゃったんだよな」

 

 テンションのままホールケーキを買ったことを多少後悔するけど、でも麻弥さんも手が止まることがなくて、嬉しくなってしまう。そのままあっという間に食べ終わり、ケーキの前にお風呂に入ってきてくださいと洗い物をする間に麻弥さんを洗面所に押し込んだ。

 

「……これ、どうなるんだ」

 

 一応、あからさまな両想いなんだけども。それこそましろちゃんの時みたいに好きです付き合いませんかって手順は踏んでないんだよね。だから俺としては恋人らしい感じでいいのか、それともオタ仲間って体裁を貫いた方がいいのかわからない時がある。テンション上がっちゃうとめちゃくちゃいちゃついてしまうらしいので、自覚ないけど。もう付き合ってるでよくない? というのはひまりの言葉だった。

 ──これがフツーの泊まりとか招いたとかなら全然耐えきれるし迷いなく麻弥さんを部屋に送ってソファで爆睡できる自信があるんだけど。なぜなら今日はクリスマスイヴ、本来は生誕を祝いながら家族で過ごす日なのにこの国は冒涜的なことに恋人と乳繰り合う日となってしまっている。所謂、性の六時間とやらは田舎のラブホも満室になるのだとか。クソだろこの国。

 

「はぁ……一応、買ってはみたんだよな、自意識過剰なような気もするけど」

「何をっスか?」

「おうふ……あれだよ、イイ感じのアクセサリー」

「いいじゃないっスか。素材はいいんですし」

「麻弥さんにその褒め方されるのはなぁ……」

「なんスか」

「いや」

 

 アクセサリーじゃなくて見た目キャラメルかなんかの箱っぽい百分の一の数字が2とか1とかのアレね。これもスーパーアドバイザーひまりの言葉なんだけど、両想いである以上間違いは起こりえると考えるべきだと。なにせしかも性の六時間とやらにガッツリ一緒にいるわけだし。

 

「……ふ、フヘヘ」

「どうしたの?」

「なんかいいなぁと思いまして、こういうの、こういうフツーの幸せがあるなんて」

 

 お風呂上りで隣にくっついてきて、シャンプーの香りがふわりと鼻腔をくすぐった。俺はそんな麻弥さんの肩を、ちょっと迷ってから抱き寄せるようにした。ああもう、なんかラブコメだなぁ。

 

「宗山さん」

「ん?」

 

 見つめ合い、雰囲気的にロマンティックな感じになったなぁと流れのまま、()()()かの唇を重ねた。つくしの目を盗むようにしてちゅっちゅしてたからな、言い方は悪いけど。いやホント、秘密の恋はヒトの心を余計に燃え上がらせちゃうんだよなってのはよくわかった。つまりこの恋を成就させたのもまたつくしてわけだ。怒られそうだから黙っとこ。

 

「宗山さんは、ジブンのこと、どう……思ってるんですか?」

「好きです」

「……フヘヘ」

「チョロい自覚はあります。でも傍でこんなにかわいい麻弥さんを見ちゃったら……もう俺は突っぱねることなんてできません」

「優しいっスね」

「いや、ヒドいですよ。未だにおっぱいには浮気性なんだから」

 

 確かに、と笑われたからでも、と言い訳を重ねようとしたけど、重ねられたのは唇だけだった。千聖さんにはどこまで行ったの? と訊ねられたことがあった。つい最近のことだけど、ごまかしても優れた観察眼で見抜いてくるので正直に話したんだよな。結構いちゃいちゃしてますって。キスと触るくらいは済ませてしまっているのだ。ホントなんで付き合ってるのかどうかわかんないってなってるんだろうな。

 

「ジブンは、恋人だと思ってました」

「やっぱり?」

「宗山さんは……違ったんスか?」

 

 違ったといえば違ったけど、どういう関係なの? と知らないヒトに問われたら恋人ですって答える間柄でしたね。そう言うといつものとは違う、ふふふという笑い方で麻弥さんはまたキスをねだってくる。踏み込まなかった一線を越えるように、だから俺からも一歩踏み越えていく。

 

「……やっぱり宗山さん、おっぱい好きっスよね」

「そりゃ、俺にとってはおっぱいが正義だったからね」

「ふふ、じゃあ今は?」

「麻弥さんのおっぱいが正義かな」

「おっぱいだけっスか?」

 

 麻弥さんはもう正義とか悪とか超越してるので。そんなくだらない二元論にあっては麻弥さんに失礼なので。麻弥さんはそうだな、俺が信じるただ一つの概念というか、なんというか。そう、救いだったよ。麻弥さんは俺にとってのメシア。麻弥さんのおっぱいは正義だけど、麻弥さんは俺が俺に掛けた呪縛から解き放ってくれた救いの主だよ。

 

「ジブンにとって宗山さんは、ジブンに素直になれた、そういう意味ではジブンも救いでいいのかもしれないっス」

 

 俺と麻弥さんは似たもの同士だった。自分に自信がないから自分の好意とか自分に向けられる好意が信じられなくて、でも信じようと思うことがあったから前に進んで、こうやって今では迷いなく触れることができる。触れていいんだと信じることができるから。

 

「あ、でも……麻弥さんちょっと待って」

「なんスか? この盛り上がった状況で……」

「いや、ケーキどうしよ」

「……後でいいっスよ」

「クリスマスケーキなのに」

「さっきのご飯でお腹いっぱいなんですよ」

 

 確かにそれじゃあ後でってなるのかと納得すると首に麻弥さんの腕が俺を引き寄せていく。そのまま俺がシーツと一緒に麻弥さんを覆い隠すように、真っ暗な世界で手探りにお互いを信じて触れ合っていく。

 

「……だから」

「だから?」

「ほら……運動になるらしいっスよ」

「これでお腹を空かせようってこと?」

 

 そうっスと笑ったのがわかった。でも俺はわかってたし麻弥さんも薄々は気づいてたと思うんだよね。この状況でふぅ終わった、ケーキ食べよってなるわけないじゃんってさ。どうせ疲れてそのまま朝が来て、冷蔵庫に冷えたままの早めにお召し上がりくださいと記された箱に向かって朝食べるかどうか迷うという一幕があるに違いないと。だから本当は麻弥さんより前にケーキを召し上がるべきだったと思うんですよ、という言葉に返ってくるのは恥ずかしそうな顔とクッションなんだろうなって。

 

「……言った通りになったっスね」

「規定事項でしょ、六時間あるんだから夜中だよ夜中」

「でも、止めてって言って、止まれたんスか?」

「麻弥さんこそ」

「フヘヘ……どうでしょう?」

 

 翌日の朝ごはんとなったクリスマスケーキを消化するために、俺と麻弥さんは運動、ではなく出掛けることにした。モニカのクリスマスライブに向かい、出演者のつくしに洗いざらい話してこれからはついてくるなよと念押ししなきゃいけないからな。

 

「ジブン、あんまりロングでもスカート履かないんスけど」

「だね」

「これから、宗山さんと会う時は……挑戦してみようと思います」

「心境の変化だね」

「ハイ、最悪脱がずにでき──」

「──やめない? そういう話やめようね?」

 

 余談にもほどがあるんだけど瑠唯さんがそうやって言ってたらしい。脱がす回数が少ないから効率的じゃないですかじゃねぇんだよ! あの子実は割とアレだよねということに気づかされた頃にはすっかり麻弥さんは瑠唯さん直伝のムード作りを習得してしまった後だった。

 ──まぁでも、そんな麻弥さんも俺にとっては気持ちを預けて、預けてもらうことに対して疑うことなんて二度としない。麻弥さんのことを、俺は信頼して、信頼してもらっているから。




おっぱいヒロイン図鑑(完全版)
№03二人で進むカップル道!大和麻弥
 自分に自信がなかったからオタ仲間と胡麻化していたけどあふれる想いは彼女を乙女にしました。あとアイドル活動を通して認められることへの嬉しさみたいなのを感じていたのでそれを大輔に伝えることで無事に押し切った。まさに進撃のドラマー。ちなみに呼び方はあと数年は変わることはない。
 おっぱいが好きは好きでいいし目でおっかけるのもセーフだけど対応が露骨に変わるのだけはムカつくこともある。そうだから女癖が悪く見えるんスよ。


というわけで麻弥編完結でございます。
次回「№04」のキャラは当日公開するのでよろしくお願いします! もうバレてるような気がするけどね。
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