おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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待たせたな!(段ボールから姿を現しながら)


紗夜ルート:青の連撃
第0話:プロローグは幼馴染と


 俺の日常は再び構築された。だけど俺は旅行終わりにあることを決めた。それは勇気ある一歩であり、俺にとってそれは我が身の一部を切り取るような辛く苦しい決断でもあった。

 ──って言ったらつくしにガチで呆れられたんだけど。

 

「俺、おっぱい断ちしようと思う」

「禁煙的なノリだね」

「それは、どういう意味で?」

 

 もちろん続かなさそうって意味だよと笑顔で言いながら羽沢珈琲店のオレンジジュースを飲む幼馴染に俺はキレちまった。うちに屋上はない。でも、なんでおっぱい断ちなんて言い出したの? と問われるとそりゃあ、と旅行で自分がやってきたことのツケを払わされたからだよ。

 

「人間関係の話になる以上、おっぱいおっぱい言うわけにはいかないでしょ」

「しかも男女関係ね」

「そう……ん?」

 

 なんか言い方おかしくない? そう問いかけるとつくしはきょとんとした表情でましろちゃんと付き合うんでしょ? なんてことを言い出してきた。いやいや、そんなわけないじゃん、なんで付き合うって話になったの? 

 

「え、二人で一晩明かしたから」

「明かしてないよ」

「そうなの?」

 

 そうなの。ましろちゃんは最後の最後まで抵抗したんだけどあやしてたらそのまま布団でぐっすり。俺ははだける浴衣なんかにどぎまぎしつつ外で一晩明かしたんだから。寝てなかったんだよな。

 

「そんなの……言ってくれれば、話し相手になったのに」

「つくしはその時点で寝てたって瑠唯さんに聞いたけど」

「う……」

 

 んでそのまま星を観てた紗夜さん日菜さん、こころさんと合流して事情を話したことも相まって急遽新しい部屋を用意してもらったという流れだった。そして翌日はRoseliaに合流させてもらったんだけど。

 

「なるほど、で?」

 

 色々あって、帰りのバスでは隣が紗夜さんだったじゃん? その時にましろちゃんのことはちゃんと断っておきたいって話をしたんだよね。その時にやっぱりちゃんと自分の悪いところを直すべきって言われて、ああそうだなぁと思ったんだよ。

 

「それで」

「そう、おっぱい断ち」

「無理でしょ」

「ちょっとは信用するもんじゃないの!?」

 

 その宣言で信用するヒトは大輔のことちゃんと見てない証拠だよと笑われる。つまりちゃんとわかってるやつからすると、俺はおっぱい断ちができるような人間じゃないって思われてるってこと? そんなはずはない。

 

「──残念ながら、事実ですよ」

「こんにちは紗夜さん」

「こんにちは宗山さん」

 

 噂? をしていたらなんとやら、その話をしていた本人でもある氷川紗夜さんが羽沢珈琲店にやってきた。相変わらずクールな表情となだらかな川だ、と考えていると睨まれる。ここまでテンプレ、ここからもテンプレ。

 

「ほら、なんにも変わってないじゃない」

「言われてるよ大輔」

「これから変わるんで」

 

 言うものの紗夜さんは腕を組んで首を左右に振って否定してきた。ひど、おっぱいおっかけるような人間関係の構築はこれからやめようと思うって言った時にはそうね、それなら私も幾分か手伝ってあげられますねと笑ってくれたのに! 

 

「それとこれは別です」

「どういうこと?」

「……わからないならいいわ」

 

 そっぽを向いて紗夜さんはやや怒ったような足取りで。俺は原因がわかるのかとつくしに視線を送るけど、幼馴染はなんにも考えてないような顔で同じように首を捻ってきた。わかんないんかい。つっかえ。

 

「でも大輔が胸のことを好きじゃなくなるとかありえないのは確かだよ」

「それは俺も思ってるよ」

「え?」

「そもそも別に嫌いになろうとか性癖を今からなんとかできるわけないだろ」

 

 人間関係におっぱい持ち込むのやめようぜって話であってベッドの下にある紳士の本棚の中身に興味を無くせって話じゃないんだよな。そんなことできるだなんてイチミリも思ってないし。ただ、その性癖基準で生きるからこうなるんだってことだし。

 

「それも、できるの?」

「わかんね」

「もう、テキトーだなぁ」

 

 おっぱい断ちというのはビッグセブンを始めとした俺の偏った人間の見方を是正するための作戦だ。無理って言うな。俺だって……俺だっておっぱいばっかで人間見てるわけじゃないんだからな。

 

「えっ、それは嘘じゃん」

「おっぱいで関わる人間選んでたらとっくの昔に幼馴染やめてるっての」

「……む」

「事実としてお前におっぱいはない。一緒に歩いてたら補導されかねねぇ程度にロリ体型のつんつるてんなんだから」

「一言多い!」

 

 俺、お前を送ってった後にポリスメンに声掛けられたことだってあるんだぞこのやろう! そのカミングアウトにさすがのつくしも俯いてそんな、と絶望していた。ちなみにそんな体験なんてしたことないし嘘だから安心していいぞ。

 

「息を吐くように嘘吐かないでくれる?」

「実際はショッピングモールでお前のトイレ待ってる間に店の私服警備のヒトに声掛けられただけ」

「まったくまた嘘ばっかり」

「……嘘だったらよかったな」

 

 これは事実。さっきまで一緒にいた子は妹さん? と声を掛けられてなんのことだと思ってただの近所に住んでる子ですけどとかいう誤解される発言をしたことで問題になりかけた。そんなこともあろうかと二葉つくしのプロフィールと保護者の連絡先は暗記しているのでセーフだったけど。

 

「ああ、なんか大輔が話してるなーと思ったら」

「まぁ気にするな、お前は悪くないよ」

「ここでそのフォローは逆効果だよ?」

「知ってる」

「バカ!」

「知ってる」

 

 とにかく、とにかくだ。おっぱいで関わる人間を決めてるわけじゃないんだよ俺はさ。じゃなかったらつくしや紗夜さんなんて関わるはずがない。ただの大きさには興味ありません。ビッグセブン、準ビッグセブンクラスのおっぱいがいたら私に紹介しなさい以上で終わりだよ。そんな憤慨されるような驚愕の性格した覚えはない。

 

「大輔は」

「……ん?」

「もう、誰かを好きにはならないの?」

「なんだよ藪から棒に」

 

 帰り道、つくしはそんなことを訊いてくる。誰かをって俺が好きになったのつくしだけだからまるで恋多き男性のように言われるのは癪なんだよな。そんな抗議を言うとホラいたじゃんと指摘される。

 

「……あ?」

「おっぱいが大きな先輩」

「あーおっぱいしか見てなかったから性格とかは」

「そうなの?」

 

 確かにそんな先輩もいたけど、そのヒトのせいで確かにいたいけな男子だった俺はおっぱい大好き変態に成り下がったけど。疎遠になった原因はそっちじゃなくて一緒にいる度に夫婦だなんだと噂されたことなんだよな。そういうのが恥ずかしくなってしまう時期に、何度否定しても同じ話をされれば、距離を取りたくもなる。

 

「実際に好きでも言われれば否定したくなるんだよなぁ」

「確かに」

「でも、そのせいでつくしにヒドいこと言ったのは今でも悪かったと思ってる、ごめんな」

「気にしてないよ」

「それは嘘だろ」

「今は気にしてないもん」

 

 じゃあ当時はだなんて訊ねるまでもないことだろうな。あの頃のつくしにとって俺って存在は幼馴染とか初恋とかとはまた別に、大きな心の支えというか、日常の一部だったのに。俺がそれを勝手に壊して、挙句背を向けた。それを、俺は今でも後悔してるよ。

 

「そっか、じゃあさ」

「ん?」

「……そういう大輔の優しいところ、紗夜先輩にも見せてあげたらいいんじゃないかな」

「紗夜さんに?」

「うん」

 

 俺の前に出てきたつくしの言葉の意図がわからずに首を捻る。そもそも優しいって言われるとむず痒いけど。するとつくしは紗夜先輩はたぶん大輔のこと、おっぱいが大好きなだけの最低男ってだけだと思ってるんじゃない? と言ってきた。あってるあってる。間違ってないよ。

 

「それだけじゃないよ、大輔は。というかそれだけのヒトに初恋なんてしないよ」

「どうだか」

「もう!」

 

 傍にいる男なんて俺しかいなかったからな、そうなるのはある種必然だった。そうは思うけどつくしにとっての宗山大輔は、確かにおっぱい大好き変態ってだけじゃないんだろう。そもそもじゃなきゃこうして疎遠だった過去を忘れるくらいの仲の良さになったりはしないよな。

 

「私はほら、大輔のことなんでも知ってるから」

「だな」

「大輔はもうちょっとでいいから他のヒトにも、紗夜先輩にもそういうところ見せていけたら、変わったってことになるんじゃないかなーって」

「お前天才か?」

「ふふーん!」

 

 なるほどな、そうすれば紗夜さんも認めてくれるし俺もおっぱいだけじゃない人間関係が構築できる、最高! ってことだな。ありがとうつくし、と最高で天才な幼馴染でありベストフレンドを送って、俺はちょっとだけ来た道を戻っていく。ほんの数百メートル、車を準備するよりも歩いた方が早くなるその数百メートルを戻り、俺は自宅のベッドにダイブした。

 ──変われるのなら、変わりたい。おっぱいが正義ってだけじゃない自分に。そのための光明を、かつて恋をしていた彼女に教えてもらい、早速とばかりにあこちゃんからのオフ会の誘いをオッケーしたのだった。

 




さぁさぁ、次のヒロインの登場だ! 本格的にルートになるのは次回からです。もちろん大トリの予定のつくしちゃんではないです!
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