おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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第5話:無表情な常連さん

 知り合いの中でツートップのビックなおっぱいを持ち、白金燐子さんと双璧を成す存在、それがバンドにおいて異色とも言え、またモニカというバンドの色を支える役目をはたしているのがバイオリン担当の八潮瑠唯さんだ。彼女は年下なので法則にしたがうと本来は瑠唯ちゃんって呼ぶところなんだろうけど、雰囲気が年下どころか同じ年にも見えないのでさん付けになる。

 

「いらっしゃいませ」

「すみません」

「瑠唯さん? 予約してた?」

 

 そんな瑠唯さん、実は俺のバイト先にちょくちょく顔を出してくれる常連さんでもある。予約はしたりしてなかったりとまちまちのため訊ねると首を横に振るわれた。腕を組むと腕に乗るような感覚になるのがかなりアレだなぁと思いながらも、バイト中のためそんな煩悩を奥底に眠らせて接客していく。

 

「今日、練習している時に少し気になることがあって……」

「あー、もうすぐ休憩だから待ってて」

「わかりました」

 

 瑠唯さんは俺のことをガールズバンドオタクだと思っているらしく、いやまぁ正しいんだろうけど。でも彼女自身は元々クラシック畑というかそもそも音楽を捨てようとして捨てられなくて、その先を見定めるためにモニカの一員になっているみたいなところあるし。ストイックさの塊ではあるんだけど専門外だったため、知り合った俺に相談してくるようだ。まぁ、そもそもガールズバンドについてってあのメンバーがわかるのかと言われると微妙だしな。

 

「……うーん確かに、妙に落ち着いてる感じというか」

「それじゃあ、ここは編曲した方がいいのでしょうか」

「いやぁ、作曲まで行くと完っ全に素人になっちゃうからな」

「そうでしたね、この質問は無駄でした」

「う、うん……ソウダネ」

 

 ダネダネ、概ね同意するけど不思議だね、なんか文句言いたくなるよダネフシャ! そんなつるのむちを伸ばしながら微妙な顔をしていると瑠唯さんは至って表情を変えることはなく首を傾げてきた。

 

「どうかしましたか?」

「いや……なんでも」

「そうですか」

 

 冷たいんだよなぁ! 対応が塩対応というか、つくし曰く誰にだってそうらしいしなんなら話しかける意味があると思われてるだけ優しいらしいけど、ビッグセブンが誇る凍土の女王による視線のれいとうビームは俺には効果抜群です。

 

「ああ、だったらパフォーマンスが取り入れられる曲調とかどうかな? ホラ、こんな感じで」

「この映像は?」

「えっとプロのライブ映像だよ」

 

 クラシックと違ってバンドのライブといえば聴かせるだけでなくアゲるとかノせるという要素も必要だということでお気に入りのバンドの映像を見せていく。結局さ、技術がどうのとかそういうのがわからんヒトもライブには来るわけだからさ。そうじゃなくても伝わる音楽ってのがバンドには求められると俺は思うんだよな。実際俺だって雰囲気でしか音楽を掴んでないわけだから。

 

「雰囲気で音楽を」

「だからこそ声を出したり手を挙げるんだよ」

「倉田さんみたいな感じかしら」

「ましろちゃん?」

 

 ましろちゃんは音を景色で表現することがあるらしい。瑠唯さんにはそういう感覚がイマイチわかんないということも。そういう感性みたいなのって個々人の問題だからなぁ。俺はなんとなーくだけど音は色なんだよな。ほら音色って言葉もあるし音を表現する慣用句は色が用いられることってあるじゃん? 

 

「黄色い声援」

「それそれ」

「青色吐息」

「うんうん」

 

 そういう具体例を用いることでようやく納得いったという顔をする。まぁ瑠唯さんはそういうところがカタいって言われるんだろうね、おっぱいは確実に柔らかそうだけど。作曲をこれからも担当していくんだったらポップやロックな表現も積極的に取り入れていくべきじゃないかな。

 

「参考になりました」

「素人目線でごめんね」

「いえ、別に私が玄人なわけではありませんから、それに」

「ん?」

「貴重な休憩時間を使わせてしまって、すみません」

「いや、それはいいんだよ」

 

 ふるふると首を横に振るけど、本当に休憩時間なんてぼーっとするくらいしか普段やることないし。それを瑠唯さんとのおしゃべりに費やせたんだからむしろラッキーすぎるというかね。ぶっちゃけ休憩時間っておっぱい妄想してるくらいだしマジモンが見れたってのは癒しですよ癒し。

 

「ひとまずは既存曲のバイオリンアレンジから始めようと思います」

「理解するためにはなぞること、か」

「ええ、その方が効率的ですから」

 

 効率的か。学ぶの語源は真似をするということらしいし確かに理解するためには演奏をしてみるってのはいいのかも。最後にそんな会話をして、瑠唯さんは軽く頭を下げてから去っていった。

 

「カノジョ、帰っちゃったの?」

「違いますって」

 

 店長がからかうように訊ねてくるけど、あんな美人でおっぱいのおっきな子がカノジョだったら俺はたぶん多幸感で死にますね。というか今でも話しかけられるとややドキドキするっていうのに。初対面の時なんか過呼吸になるかと思ったし。

 

「お疲れ様っす」

「お疲れー」

 

 伸びをしてタイムカードを切りながら店長に声かけてバイト先を後にする。欠伸をして今日の夜メシどうしようかと考えていると、お疲れ様ですと声を掛けられ振り返る。

 そこには二時間前に帰ったはずの瑠唯さんとポツポツ会話をする燐子さんがいた。びっくらぽんである。どう見ても社交的じゃない知り合い同士が知り合いなのだから。

 

「二人は小さい頃に……なるほど、じゃなくてなんでここに?」

「……わたしは、その……通りかかって」

「瑠唯さんは?」

「桐ヶ谷さんと二葉さんが、お礼として今晩の食費を出すのはどうかと提案されていたので」

「なるほどね」

 

 それでお金を出そうとした瑠唯さんに、それよりも一緒に食べた方が効率よくない? と提案する。せっかくご飯食べるなら複数人の方が楽しいのは事実だし、燐子さんもどうと訊ねると少し考えるような顔をしてから頷いた。

 ──それにしても、こう、並ぶと……デカすぎるだろ。ビッグセブンのツートップを同時に視界に収めるというインパクトに俺は慄いていた。

 

「あなたがそう言うなら……」

「じゃあ決まりね、何かリクエストは?」

「……わたしは、特に」

「私も、あまり味が濃すぎるものでなければ」

 

 結局色々言ったけれど、安価でメニューの多いファミレスと決まった。瑠唯さんはお金持ちだからこういうの大丈夫かなと思ったけれど意外なことに行ったことがある店だと言われてちょっとほっとした。よかったよかった。

 

「お金持ちか、と問われるとそうなのかもしれないけれど、それは両親のことであって私が決してその財産のプラスになっているわけではないわ。それこそ、桐ケ谷さんや広町さんなら別でしょうけれど」

「あの二人ってなんか自分で稼いでるのか」

「ええ、聞いた話だけれど」

 

 透子ちゃんは服飾ブランド持ちの現役女子高生デザイナーで、七深ちゃんも芸術分野で突出した才能を持ってる……なるほど。そういやモニカの衣装は二人が作ってるって話あったなぁとつくしとの会話を思い出していると燐子さんがジャンルは違うけれど憧れだと口にした。

 

「燐子さんもブランド立ち上げてみたらどうかな?」

「わ、わたしが……? そ、そんな……」

「でもあこちゃんと自分の服って手づくりなんでしょ?」

「あと、Roseliaの衣装もそうだと伺っていますが」

「そ、それはそうなんですけど……!」

 

 燐子さん、すっごくわかりやすい具合にオーバーヒートしてしまったようで、しばらくフォローしてゲームの話をしながら瑠唯さんも会話に参加させていった。それにしても隣の席に座るとボリュームがすごい。注文取りにきた女性店員さんもすごい見てたのをついつい見返してしまった。わかる、見ちゃうよねという視線が伝わったのかはわからないけれどちょっとこっちを見てから去っていった。

 

「……今の女性が好みなのですか?」

「な、なんの話!?」

「随分熱烈な視線を送っていましたから」

 

 いなくなって少ししてから瑠唯さんに突っ込まれて思わず吹き出しそうになってしまう。いやいやそうじゃないから! 確かにちょいかわいいなぁとは思ったけど、目の前の顔面偏差値に比べるとすごいことになってるからね! 

 

「……いけません、見とれるのは……だめ、です」

「え、ええっと……?」

 

 そんな弁解をしようとかしまいか悩んでいると燐子さんがやや頬を膨らませて、えっと怒ってる? なんで? 困惑してしまうけれど、とりあえずごめんなさいと謝罪しておく。なんで怒られたんだろうか、わからん。

 結局それ以降は三人で音楽の話で盛り上がりながら時間を過ごしていった。うーん、見比べたら最近の悩みが解決するかと思ったけど、服越しじゃわからん! どっちが大きいんや! 俺は頭の中そんなんばっかりでしたが。

 

 

 

 

 

 




現在登場中のビッグセブン
燐子、瑠唯、ひまり、???、???、ましろ、イヴ

いやタグ見ればネタバレになるんだけどさ。あと二人で世界観というか主人公とヒロインズの関係性を書ききれるかなぁ。あと主人公くんの名前が決まったので、それが終わったら登場するかと思います。
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