準備をしてから昼に起きた二人を連れて、紗夜さんと再び川にやってきた。その涼やかで穏やかな流れにまっさきに反応を見せたのはやはり、というべきか概念的ロリっ子のあこちゃんだった。目を輝かせて、サンダルそのままに清流に足を突っ込んだ。
「すっごー! 冷た~い!」
そして俺たちを呼びながらはしゃぐ顔はまさにロリ。あれが瑠唯さんと同じ年にはとても見えない。二人並んだら何歳差に見えるかとても気になるところである。そもそも燐子さんと並んでる時点で年齢差をとても感じるというのに。体型以上に言動がね。
「ひゃ……あ、でも……気持ちいい……ね」
「でしょう!」
でもそんな風にはしゃいでる二人を見るのも悪くないけど、やっぱり涼し気ってだけだからここに立ってるのは暑い、というか立ってるだけでじんわりと汗ばんでくる。ここすっごく暑いよ! って妖精さんのありがたい忠告が聞こえてきた。
「わ、やったなりんりん!」
足を川に浸して涼んでいると水の掛け合いっこというてぇてぇな空間が生まれていた。てぇてぇのはいいんだけど二人とも服そのままにびちょびちょになってしまわれて……燐子さんなんて元のワンピースが白色だからスケスケです。なんか、いけない気分になっちゃいます!
「下……水着ですから、大丈夫、ですよ?」
「そういう問題じゃ……いやそういう問題なのか」
水着って服の下に着けてたらほぼ下着だよね。しかもセパレートなんてご着用されていましたらそういう目で見れちゃうのはもう生理現象というべき状態である。ああ、後ろの紗夜さんの視線が痛い。
「……はぁ」
「が、ガチのため息はやめてください」
だけど紗夜さんは俺に対して何かを言うことなく、あこちゃんや燐子さんに持ってきていた水鉄砲を手渡していく。うう、また怒らせちゃったかな、と落ち込んでいると宗山さん、と声をかけられ顔を上げた。
──そこにはいたずらっ子のような顔で俺に向かって水鉄砲を構える紗夜さんの姿があり、次の瞬間には銃口から水が噴射された。
「うわっ! さ、紗夜さん!」
「油断しているからよ」
「油断って」
そんな問答なんてお構いなしに紗夜さんは俺に水鉄砲を向けてきて、あっという間に服を濡らされる。俺だって準備の時に下は水着にしてきたけどさ。咄嗟に手元にあった水鉄砲で対抗していく。
「きゃ!」
俺の適当に撃ったはずの水鉄砲は紗夜さんの胸元にクリティカルヒット、シャツが肌に貼り付いて上半身のラインが露わになっていく。それが恥ずかしかったのか、紗夜さんはムキになった表情で俺に銃撃戦を仕掛けてきた。
「さ、紗夜さん!」
「いいじゃない、どうせ洗濯するのだから」
「そういう問題じゃ……ちょっと目のやり場がないんですよ!」
「ふふ、私の胸じゃ興奮しないんじゃないんですか?」
いやいや、そういう問題じゃないでしょう。そう言いながら、俺と紗夜さんは更に燐子さんとあこちゃんを交えて夕方までひたすらに川遊びに興じていった。そりゃあもう、みんなずぶ濡れでコテージに戻るくらいには。
「はぁ……疲れた」
「お疲れ様です」
「紗夜さん、お風呂は?」
「先にあの二人に行かせたわ、あの二人なんて思いっきり水に漬かっていたから」
「確かに」
お疲れ様ですって、俺は主に紗夜さんの相手をしていて疲れたんですけどね。そう唇を尖らせるとごめんなさいと笑いながら、紗夜さんはソファのすぐ隣にやってきた。
──なんだろう、ううん、なんかドキっとしてしまった。さっきまでの水遊びで身体のラインが濡れ透けたせいだろうか。まさか濡れ透け性癖がこんなところで暴発するとは思わなかった。なんで好きかっていうとそりゃもう、燐子さん見てりゃわかるでしょ。おっぱいでっかい子の濡れ透けはそれだけの価値があるんだよ。でも、まぁ今回はめちゃくちゃ紗夜さんにドキドキしてるわけだけど。
「どうだったかしら?」
「なにが」
「目線、わからないわけがないって言ったでしょう?」
「……紗夜さんって案外いじめっ子?」
「どうかしら? あなた相手だけかも」
まさかの展開だよ、俺としては。だって燐子さんのぴっちりラインが目の前にあったのに、目が離せなかったのは紗夜さんのぴっちりラインだったんだから。そりゃ、基本的にあこちゃんと遊んでいたからね、それもあるんだけど。
「そう、そうなのね」
「……こんなバカ正直に話していいのかわかんないんだけど」
「普通はセクハラでしょうね」
「だよな」
ちょっと落ち込んでしまうけれど、私は別にセクハラだなんて思ってないわよと微笑まれる。セクハラは相手がセクハラだと思うことで初めてセクハラとなる。とすれば、ちゃんとセーフっぽい? でも嫌がってる風じゃないからちょっとだけほっとしてる。
「ってか、俺今気づいたんだけど」
「何?」
「時々、敬語じゃなくなってるような気がするん……ですけど」
「いいわよ、私はあなたの年上だけど、先輩になった覚えはないから」
「いいの?」
「そっちの方が、フランクな方が私は嬉しいから」
はにかんだ。え、マジ? なんか紗夜さんに最近はよく違う笑いの種類を向けられることが多くなった気がする。はにかみとか、いたずらっ子みたいなやつとか、そういうの。前はツンとしてるイメージが強かったのに。今ではすっかり優しいお姉さんみたいな印象が根付いている。あこちゃんが紗夜さんは優しいんですよ! と言っていた意味がわかったよ。そして、失礼な話なんだけどあの透けた胸元見た時に、思い出したことがあるんだよね。
「あら、なにを?」
「笑顔が怖いです紗夜さん」
「こう見えて、割とコンプレックスなのよ? 妹と比べても小さいし」
ごめん、と謝りながらでもおっぱいに関することじゃないんだよとフォローする。今回のはそれよりはるかにマトモなことで、重要なことだから。
──でもその時の俺は、ただ気に入られたいだけで、燐子さんのおっぱいを眺めたいが故の嘘つきだったから。紗夜さんのことを傷つけることも厭わないクズだったから。
「ということは、思い出したのね」
「うん……まぁ」
俺は、紗夜さんと仲良くなった辺りの時に探るような顔で、口調であなたはどういう女性が好みなの? って言われたことがあった。まだ俺が燐子さんのことが好きだと思っていたころの話だったね。
「あなたは白金さんのような女性が好きなの?」
「ええ、っと好きっていうとスレンダーな感じの女性の方がいいかも」
「……そ、そうなのね」
そう、それをずっと紗夜さんはずっと覚えていたから。俺の言動をずっと許していたんだよな。いや許してはいなかったのか。でも、紗夜さんは俺がおっぱいは別だって知ったからこそ、こうして一緒にいてくれたんだ。
「それはそうよ……私は、宗山さん、あなたのことが好きなのだから」
「う……マジで?」
「ええ、マジよ」
そう言うと紗夜さんは俺の唇を華麗に奪ってみせた。それはもう鮮やかな手際で。まるで恋愛上級者みたいな手際すぎて一瞬このヒト慣れてるんじゃないかって思ってしまった。そんな目で見ていると紗夜さんは耳まで真っ赤になっていた。
「初恋ですよ」
「……俺でいいんですか?」
「二葉さんにも同じこと言うの?」
ドキっとした。それは、確かに昔、俺がつくしに向けていたものや逆につくしに向けられていたものと同じ気持ちだった。
──ひまりの言っていた俺のことが好きな四人の人物のましろちゃん以外の一人が紗夜さんだったなんて、全然思いつきもしなかったけれど。
投稿ミスってたんで一時間ズレました。すまんご。
――というわけで、今回は紗夜さん編でした。