おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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これで終わりってマ?


第6話:エピローグはネタばらし

 結局、あの後は紗夜さんから何かリアクションがあるわけではなく、非常に気まずい雰囲気で夕ご飯を囲んでしまった。おかげであこちゃんがすごく寂しそうで、ごめんねと謝っておいた。

 

「ちゃんと、紗夜さんと仲直りしてね!」

 

 ちょっと頬を膨らませたあこちゃんにそう言われて俺は苦笑しながら頷いた。燐子さんは自分にも責任があるのだから一緒に謝りに行きますと言ってくれたんだけど、たぶんこのパターンはまた俺と燐子さんが並んでたらこじれる気がするんだよね。

 

「やっぱり……アレ、なのでしょうか」

「いや確定だってほどそこまで自惚れられませんけど」

 

 それこそ掛けてないないけどエア眼鏡のブリッジを持ち上げて、これだとカッコよく正解を導ければいいんだけどね。俺は見たいものだけ見て信じたいものだけ信じてるし周囲に流されて考えることをやめた怠惰で愚かな人類だからね、仕方ないね。

 

「怒らせた紗夜さんを宥めるとか仲直りとか、そういうカッコいい男にはなれないから」

 

 ちょーっとモテただけで、別に俺は主人公タイプじゃない。むしろモブだよモブ。役柄で言うとたぶん男性Dくらい。ちょっとおっぱいが好きってだけの個性しかなくて、優しい嘘の音色で泣かせることもできないし、惚れられた責任を取って幸せを探してあげることもできないし、ましてや惚れてくれた女全部俺が愛してやるなんて気概も甲斐性もないし、個性の中に紗夜さんに誇ることもできない。俺が選べるのは、紗夜さんに誠心誠意、ちゃんと謝ってから説明することしかできないんだよ。

 

「紗夜さん」

「……宗山さん、どうかしましたか。白金さんとはもういいのですか?」

「うん、話は紗夜さんが入ってきた時点で終わってたから」

「そう」

 

 ノックをして部屋に入ってしまった紗夜さんと扉越しに会話をする。近づけば声が通るこの薄いドア一枚隔てて、そのまま思ったままの言葉をごめんと一緒に紗夜さんに向けていく。それはもう、必死に。

 

「何を言われても……あなたは前科が多すぎます」

「前科、か」

「そうです。事ある度に私と白金さんの胸を見比べて、言葉ではなく視線で、最低です」

「だよね……ごめん、浮かれてたのかも、俺は」

「浮かれて……え?」

 

 そうなんだよ。そもそも好きって言われて舞い上がったところアレなんだけど、俺って基本紗夜さんに対しての扱いがヒドいんだよ。というかよくよく考えたら好みのおっぱいさんじゃないからとか言って対応が雑なのは、ゴミなんだよな。ましろちゃんの一件と連続しちゃったせいで、というか最近おっぱいさん方の俺に対する評価が好意的なせいで忘れてたんだよな。

 

「俺、女の子のことおっぱいでしか見てなかったから」

「でしょうね」

「誰かに好かれるような性格じゃないし」

「そうね」

「……だから、ましろちゃんの時も、今も、本当は嬉しかった」

 

 ましろちゃんはおっぱいしか見てなかった俺の目をまっすぐ見て、泣きそうな顔で好きだよと言ってくれたことも、紗夜さんが俺はおっぱいしか見てないわけじゃないと微笑んでくれたことも。確かにどうして俺なんだろうと思ったり、結局おっぱいばっかりな男よりそうじゃない男の方がいいじゃんと思ったりする。けど、やっぱり嬉しいものは嬉しいよ。

 

「でも、俺はそんな紗夜さんの想いを踏みにじったし、もっと言うならましろちゃんの気持ちも」

「……宗山さん」

「ましろちゃん、きっと泣いたんだろうなって考えると……もっとなんかあったのかなって思っちゃうんだよね」

 

 でも情に厚いとかそんなんじゃない。つくしとバカみたいなこと言い合って、ましろちゃんやひまりに振り回されて、瑠唯さんがバイトに来てくれて、オフ会を定期的にして、麻弥さんとカフェに集まっておしゃべりして、イヴちゃんや有咲に会いに羽沢珈琲店に行く。そんな日常が、ゆっくりと崩壊していくおっぱいに囲まれた日常を、惜しいと思っただけ。

 

「……私の早とちりだ、とか言わないんですか?」

「そう思う?」

「ええ、冷静に考えて隠れて付き合ってもいない限り、私に告白されて白金さんと密会する理由は告白されたことを相談した、くらいしか思いつかないもの」

「うん、紗夜さんの言う通りなんだけどね」

 

 なんだけど、あそこでお風呂上りの燐子さんに興奮してたのも事実だし、燐子さんと仲良くなれて嬉しいって思ったのも事実。だからわざわざ紗夜さんに誤解だ! なんて言い訳する余地はないんだよ。だっておっぱい好きだし。たぶん燐子さんに確認すれば一発なんだけど視線が下に行く頻度高かったと思うよ。

 

「どうして、そういう言い方をするのよ」

「どうしてって、俺は事実を」

「あなたが私の本心を知りたくて白金さんに相談した。それを私は早とちりした。それが事実でしょう! それを捻じ曲げてまで、自分を貶める必要なんて、ないじゃない」

「俺は変わらないし、変われないから」

 

 今回のことでよくよく思い知ったよ。人間そう簡単に変われないなんてのはよく言われるけど、その通りだった。

 ──俺は変われない。これからもずっとおっぱい大好きだし、おっぱいの大きな女の子に対してだけ関わり方違うし、関わろうとする。傍にいたら紗夜さんをきっと傷つけることになるんだから。

 

「どんだけ変わろうと思っても燐子さんのおっぱいが好きで、紗夜さんのおっぱいは何も感じない。見比べちゃうし、最低なことばっかり考えてるから」

 

 そんな男を好きにならないでほしい。俺は紗夜さんって人間の在り方が好きだから。スポットライトを浴びてその中でカッコいいギターをかき鳴らす、真面目でストイックな委員長タイプの紗夜さん。そのカッコよさに、俺は憧れたんだから。

 

「そんなカッコいい紗夜さんが俺みたいなクズを好きになるなんて、ダメだよ」

「嫌よ」

「え」

 

 扉が開け放たれ、俺は紗夜さんに引きずり込まれる。ちょ、待ってこのヒト腕細いのにめっちゃ力強いな! そのまま俺は紗夜さんの部屋に押し込まれ、なんと抱き着かれた。え、ええ……どういう状況? なんかこう、良い感じにさよならしてみたいな展開を予想していた身としては困惑しかないんだけど。

 

「私は、バスの中で確かに言いましたね、悪いところは直すべきだと」

「言われたし、そうしようと思ったけど」

「違うわよ、あなたこそ、早とちりしています」

 

 え、と声が出るが、紗夜さんは離れてくれないどころか押し倒してこんばかりに抱擁の力を強めていく。あの、あのあの苦しいんでちょっと力抜いてもらえます? そうするとこういうのを人にしたのは初めてなのでとちょっと赤面された。は、なにこのヒトってかわいい系もできるの?

 

「……じゃなくて、早とちりって」

「あなたの直すべき悪いところは、どこだと思いますか?」

「おっぱい大好き変態なところ」

「違います」

「は?」

 

 え、違うの? 俺紗夜さんに言われたから直そうと思って頑張ってきたのに? でも紗夜さん俺がおっぱい基準で人間関係形成するのやめないとですねって言ったらそうですねって返事したじゃん! 

 

「胸で仲良くする人間を選んでいけないのは当然では?」

「……確かに」

「そもそも、それはもうできていますよね? 現に私がいるのですから」

「確かに」

 

 ついでに言うとつくしもな。あれ、もしかして俺とんでもない勘違いと早とちりでここ最近を過ごしてきた? そう訊ねるとええと頷き、紗夜さんはあなたの直した方がいいところはズバリとキリっとした声で俺の肩に頭を預けながら教えてくれた。器用ですね、顔はめっちゃ緩みまくってるのに。

 

「いざという時に、どうせ自分だしと思うことです」

「……そっちか」

「ええ、だから残念ながら変わっていないのは事実です」

 

 合宿中に少しは改善してると思って告白したのに、と鋭い声を出されて俺はごめんと紗夜さんの頭を撫でた。もうこのヒト離れる気はなさそうなので諦めの境地である。人間慣れが肝心って言うからね。シリアスもなんもねぇよこれ。

 

「ヒトに好きって言われた時に、なんで自分なんかが、と言わないで」

「言うよ、俺はおっぱいが正義なのに」

「いいのよ、別に正義がなんであっても。その正義に対してまっすぐであってほしいわ。ブレないあなたの方が好きよ」

「俺、ブレッブレですよ」

「なら私と燐子さんのどっちの胸が好きですか?」

「燐子さん」

 

 ほら、とついに柔らかい声になる。そこでブレないのはどうなんだ、って思うけど。でも、俺はキャラブレは起こしてないのか? わからん。とにかく紗夜さんが言う、直した方がいい悪いところとは根本で自分の気持ちを信じてあげられないところ、らしい。好きって言ってもらえて嬉しいなら、嬉しいって言ってほしい、らしい。

 

「あはは……そんな風に絆されたら、雑に紗夜さんのこと好きになっちゃうよ」

「両想いね」

「それでいいのか」

「ええ、その雑なきっかけを本物にすればいいだけなのだもの」

 

 紗夜さんは強かで、美しくて。なのに今腕の中にいるのは幸せそうに微笑むかわいらしい生き物と化した紗夜さんだった。そのまま、というかくっつかれたままで逃げられるわけもなく何度もキスを繰り返され、俺はゆっくりと頷くしかなかった。

 

「わかった……わかりました。そもそも……最初から紗夜さんのこと好きというか、人間として憧れだったし」

「ありがとう」

「ただ、ホントに俺の正義は変わらないからね」

「ええ、ヤキモチは妬くだけにしてあげるわね」

 

 そんな風にいたずらっぽく微笑むクールビューティーのかわいい一面に既にやられかけてる俺だけど、それでもおっぱいより紗夜さんを優先するようになるのには時間がかかることになる。いくら付き合っても、貧乳派にはならなかった。

 ──けど、俺にとって紗夜さんは何よりも優先して一緒にいたいヒトになる。それはまた、別の話だけれど。その時に紗夜さんは笑ってくれるんだから。

 

「変われたじゃない、私のおかげかしら?」

「そりゃそうでしょ。むしろ変えられたって方が正しい言い方だからね」

 

 紗夜さんの好き好きラブ攻撃連打によって雨垂れ岩を穿つが如く、俺はゆっくりと自己肯定感を変えられていくことになる。好きって言われたらありがとうって微笑むことができる性格イケメンになるまでそれはボコボコにラッシュされる。

 ──中身は、まだまだずっとおっぱいは正義のままなんだけどね。

 

 

 

 




おっぱいヒロイン図鑑(完全版)
№04そもそも胸で勝負してないから:氷川紗夜
 貧乳で例外一人を除くヒロイン。人間性でWRYYYYと殴り続けたある種正統派ヒロイン。付き合うと全肯定大輔botと化する。うんうん、それもまた大輔よね。自分の自己肯定は別の話。うちはうち、よそはよそ。
 例の如く別に性癖ならいいじゃないと思ってる。けどやっぱりコンプレックスではあるので度が過ぎると後で一定時間離れなくなる。構われたいとやってくる姿はまさに大型犬のようだと大輔は感じている。

というわけで色々ありましたが無事紗夜さん編完結しました。
ここからは夏休み終了時点で脈のなかった二人に焦点を当てたいと思います。
まずは上原ひまり編!
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