チェックインを済ませて荷物を置いて、まずはいつものようにショッピングに付き合わされる。付き合わされるというか、荷物持ちなのはまぁそうなんだけど、割とこういうのは嫌いじゃない。色んなものを見て楽しそうな相手を見るのは好きだし、またひまりならおっぱい見れるし。一番の目的はおっぱいだし。
「じゃあ下着も選んでもらっちゃおうかな」
「それは勘弁してください」
「なんで? おっぱい見れるよ?」
「試着する気なの!?」
えーいつもそうやって選んでるよ~と言われるとそりゃそうなんだけどそれを俺に見せるのはヤバくない? 俺は生おっぱいももちろん好きだが基本そんなものを実物で見る機会はない。故に着衣時のおっぱいそしてブラチラに性癖が特化してるから。なにがってモロは脳みそが追いつかなくなって死ぬ。
「ま、冗談だけど」
「じゃなかったら俺が逃げてる」
「まぁ、代わりに水着見せてあげるからさ」
そうだった。というか冷静になると下着とセパレートの水着って実は露出度に大差ないよね。でもどっちがエロスなのかというと断然下着なのはなんでだろう? 普段は見えないというのはやっぱり大事なのかもしれない。ほらやっぱりおっぱいも普段見えないところ、下乳とか見えるとドキってするわけだし。
「あとさ」
「なに?」
「ナンパされないようにってのはわかってるよね?」
「元々そういう約束でしょ?」
ひまりが俺との距離を近づけるのはほぼ、ナンパ避けが目的だったりする。あとはからかいなんだけど。ひまりはスタイルはいいしかわいい、故にちょっと目を離すとすぐナンパが寄ってくる。普段は友人のイケメンとか赤メッシュとか見た目ちょい近寄りにくそうなのがいるからいいけど、こういう場になると間違いなく光に群がる虫が如く男が寄ってくる。だから勘違いされてもひまりはこういうデートには俺を連れ回すことが多い。
「ちょっと、大輔? 次はあっち行くよ!」
「ん、おっけ」
「れっつごー! 頼んだよ荷物持ち!」
「おい」
まぁ便利遣いされる見返りが多少の目線を気にしないって部分なんだけど。そんな感じで俺とひまりはお互いがお互いの存在で得をしている。だから表面上は付き合ってるレベルで仲良く見えるんだろう。
「いやぁ買ったねぇ」
「これ、どうやって持って帰るのさ」
「ふっふっふ~、ホテルにはねぇ荷物を家に送ってくれるサービスもあるんだよ!」
「そうなのか」
透子ちゃんに確認したんだと珍しくぬかりのなさそうなひまりに感心する。あの、流石に重いんだけど。近くにあるのがアウトレットモールだから、余計に買い物が多い。あと靴がキツイ。つかよくこんなに買うよな、値段もアウトレットだから安くなってるとはいえブランドものまであるのに。
「んで、こんなに買ってメシ代とか明日の色々のお金は大丈夫なの?」
「……あ」
「あってなにさ、まさか……」
「……てへっ☆」
ごめん前言撤回、ぬかりまくってたよ。どうやら今回のためのお金をほぼ使い果たしてしまったらしい。スマホでちゃりんちゃりん払ってると思ってたら画面には既に四桁の一番前が1となっていた。
「……はぁ」
「ご、ごめん……銀行、あれば下ろせるから」
「いやいいよ。ご飯代とかは俺が出すから」
「い、いいの!?」
おじさんに感謝するしかない。ただ月のバイト代よりくれるのは勘弁して、俺これでも高校生で、ほぼ最低賃金よりちょっと多いくらいの時給でしか働いてないのよ。なのにこんくらいだろとか言って十万円ポンとくれるのはやめてほしかった。いや受け取ったものを突っ返すのは失礼だから言わないけどね。かわいい甥っ子のためだからと笑うイケ叔父は割と俺に甘いんだよなぁ。
「ありがとね、絶対に後でお礼するから!」
「いいよ」
「よくない、もらいっぱなしはイヤだし」
言い出したら聞かないような雰囲気なんだけど。別に見返りじゃないけど既にこっちはそれだけのメリットもらってるしなぁ。水着とか、泊まりとかディナーとか。そりゃひまりが費用を負担したわけじゃないけど、そうやって色んな事を考えてくれたのはひまりだし。
「紳士ぶってる」
「それはいつものことだし」
中身はおっぱい大好きカス野郎なんでやっぱり態度くらいは紳士でいないとさ。ひまりにそう言うけどそうじゃなくて、と頬を膨らませてきた。なに、かわいいからやめてくださいそういうの。
「かわ……そういう素直なとこは変態っぽい」
「なんで!」
「本質が変態だから?」
変態じゃないやい! いやおっぱい大好きなのを公言するのは変態だけどさ! まぁそれはそれとして、思わずかわいいなぁと思ってしまうんだからしょうがない。それとももしかして自分のかわいさ自覚してないのでは?
「それ……自覚できるのは、こうもっと薫先輩みたいなヒトじゃないと」
「それもそっか」
でも俺からするとひまりはとびきりかわいいから大丈夫だよ。そういうとひまりはちょろっと照れたような顔で口にしなくていいのと怒られてしまった。そのままホテルに頼んで荷物を送ってもらう手続きをして部屋に戻っていった。
「……本当に大輔ってさ」
「ん?」
「なんで、誰とも付き合わないの?」
枕を抱えながらポツリと呟いたその言葉に、俺は振り返った。別に、誰かと付き合いたいわけじゃないけど。ひまりはそれが不満だったのか不思議だったのか。どういう意図なんだろうと首を傾げると、ゆっくりとひまりは言葉にした。
「私は大輔なら絶対に、幸せになると思ってる、だけど……」
「買い被りでしょ」
「そんなことないよ。大輔のこと、私は……つくしちゃんほどじゃないけど、知ってるつもりだから」
だからこそ、ひまりは俺に今のままじゃない。自分を想ってくれる人のために自分を蔑ろにするのはやめてほしいと思ってくれた。でも俺はそれが一番疑問なんだよな。なんでそんなに、そんな風に俺を気に掛けてくれるのか。
「大輔がバカだから」
「……おい」
「だってバカじゃん。すぐ紳士ぶって、気付かないフリして、最後には誰もいなくなってもいいとか思ってるから」
「いやそれは思ってない。断じて」
ひまりとこうやって遊べなくなるのは悲しい。いやカレシができたら別だけどさ。それとおんなじようにオフ会で四人集まれなくなるのも嫌だし、幼馴染の縁が切れるのは嫌だ。おっぱいが正義だから、おっぱいしか勝たんとか言ってるけどさ、そんなクソみたいな言葉のおかげでできた縁は、大切にしたいんだよ。それがましろちゃんでも、瑠唯さんでも、麻弥さんでも紗夜さんでも……もちろん、ひまりだって。
「また紳士ぶる」
「悪いけどこれは本心だ。ひまりのおかげで、気付けた」
「なんもしてないし」
なんで拗ねぎみなんだよと頭を掻く。でもこうやって誰かと過ごす楽しさとか、誰かのことを考えるのが自然になったのはひまりのおかげだよ。ほら、最初にショッピングに付き合えって言われた時、ひまりは俺にめちゃくちゃダメ出ししたじゃん? 覚えてないか?
「した、服も褒めない。待った? って聞いたらフツーとかつまんないこと言ってくる。歩幅も合わせない。最低だったよ」
「……そんなにダメダメだったっけ?」
「……ふふっ、覚えてないの、そっちじゃん」
「まぁ、そんな時に比べればほら、いい男になっただろ?」
「全然」
「おい」
まだまだだよバーカと言われ、俺はでも、ひまりがまた笑顔になってくれたことにほっとした。同時に、俺は少しだけ自分の内にあった気持ちを知ることができた。
──もちろん、ベッドは別々だったしおやすみと離れて寝たけれど、ごめんやっぱ隣でひまりの寝息が聞こえるのは精神衛生によくないのであまり眠れなかった。やっぱましろちゃんと同じ部屋でうっかり寝ようとしなくてよかったと思いました。
ひまりと大輔の関係、ここまでやってやっと進展しそうになるという。