おっぱいはせいぎ   作:黒マメファナ

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そんな素材に拘ってる料理屋みたいな。


第2話:距離感に拘っております

 夏休み初日、バイトが夕方から入っているため適度に時間を潰してついでにクーラー代を節約しようということで俺は羽沢珈琲店にやってきた。来るまでに暑いもんだから後悔しかけたけど。看板娘のつぐみちゃんに挨拶をしておひとり寂しいすみっコぐらしをして過ごしているところだった。

 

「どうして、そこまでつくしちゃんに拘るの?」

「……え」

 

 ましろちゃんがやってきて、しばらくしてからの言葉。原因は言わずもがな花火大会の誘いを断ったことにある。俺はましろちゃんのカレシじゃないから、行くなら友達でとハッキリ断ったのだが、どうやらそれがかなりショックだったらしい。いやだからってつくしに拘ってるとかそういうのは一切ないわけだけど。

 

「その日、つくしちゃんが予定があるから……って」

「いやそれ俺関係ないんだけど」

「……本当?」

 

 本当、これはマジ。そもそもつくしに予定があるイコール俺と予定があるに変換するのはいくらなんでもつくしに失礼だと思う。いや割と俺とモニカ以外と予定立てれたんだ成長したなとか思っちゃったけどね。

 

「わたし、つくしちゃんとデートするからフられたのかと思っちゃった」

「俺、そんなにつくしに拘ってる?」

「……気付いて、ないんだ?」

 

 そんなマジびっくり、みたいな表情をしないでおくれ。でもましろちゃんにとってはやっぱり恋における障碍だと思っているようで、しきりにつくしとの関係を訊ねてくる。その中でどうしてそこまでつくしちゃんの傍にいようとするの? というものがあった。

 

「どうして……か」

「先輩は、おっぱいの大きな子が好きなんでしょ? わたしみたいな」

「その自信をもっと他で付けたらいいと思います」

 

 スルーしきれなかった余計な一言にツッコミを入れて、マジメに考えることにする。俺がつくしの傍にいようとするのは、なんというか反動みたいなもんなんだよな。まだガキだったころ、一緒の塾がいいと泣きわめくつくしを迎えに行って一緒に通っていたんだが、小学生はそれを見るとケッコンという単語が頭に浮かんだ瞬間口に出てしまうらしく。まぁそういうのを恥ずかしいと捉えるのもまた、子どもなんだよな。

 

「それで」

「まぁ、突っぱねたんだよ」

 

 でも当時つくしのことが好きって思ってたのもまた事実で、塾じゃないところだと仲良くしてたままだったから、それはいいんだけど。なんというか妹を放って遊びに行くような感覚だ。甘えん坊で、俺以外とは上手く話せてなかった上に何かあるたびに恥ずかしいことのように俺との関係を笑われるつくしは相当ストレスだったみたいだ。

 

「塾行きたくないとまで言い出してさ。それを見て、俺はつくしから離れようと思った。まぁ後でお互い初恋だって知ったんだけどさ」

「……惚気?」

 

 違うって。んで、俺が中学上がったのをきっかけにお互い塾辞めて、そこから去年になるまで、具体的に言うと俺の高校入学祝いに二葉家とうちで遊びに行くまで疎遠だった。その時に塾に行きたくないって言葉の正体はもっと誰かに何か言われない場所で俺と一緒にいたいってことだったらしい。かわいいやつだ、とちょっとだけ思った。

 

「そっか……先輩は、つくしちゃんを守ってあげたかったんだ」

「そうかも。ヒーロー気取りにしてはキャラがアレだけど」

「そんなことないよ」

 

 そんなことあるんだよなぁ。でも、つくしは俺の初恋のヒトで、いつも俺の後ろをついてきて、大輔大輔って懐いてくれるのが愛おしかったのかもしれない。うーん、昔から呼び捨てだったところを考えると少なくともつくしは俺のことを兄的な目では見てなかったんじゃなかろうか。そうだな、昔からあいつ偉そうだったわ。

 

「じゃあ今とあんまり変わんないの?」

「変わんないな、少なくとも俺から見てつくしの成長は止まってるね」

「──大輔?」

 

 調子に乗ってましろちゃんに色んなことを話していたら、鬼の形相をした幼馴染でベストフレンドなつくしちゃんが仁王立ちしていた。心なしかツインテが下から風を送られたようにたなびいているように見える。バトルものによくありがちなやつだ。

 

「わ、私だって……ちょっとくらいは成長してるもん」

「内面の話だからな」

「内面はもっとだもん!」

 

 いや外見上もそんなに成長してる印象ないけどな。身長はそりゃ伸びたけど途中で止まったし、おっぱいは言わずもがなだし、小学生に間違われるし。制服着てようやく中学生ですか? って訊ねられるレベルなの自覚してほしい。お前と一緒に恋愛映画観に行くと十中八九変な目で見られるんだからな。

 

「確かに、並んでたら先輩がロリコンに見えちゃうよね」

「どういう意味!?」

「まんまだろ、ちんちくりん」

 

 ましろちゃんに悪意はない。あるのはおっぱいだ。ついでに言うとこれは言ったらまずいかなというブレーキもない。それでも透子ちゃんよりはマシだけどな、ましろちゃんはうっかりしゃべらすと考えてることが出るだけだ。失言が多いともいう。

 

「そんなに怒るなよ」

「……大輔が暇だって言うから、構ってあげようと思ったのに」

「そうだったな、なんか頼むか?」

「ん」

 

 なーにが構ってあげよう、だ。大輔が行くなら私もって構われに来たクセに、とは言わない。友達の前でそういうことは言わないであげるのが幼馴染なりの優しさだ。つくしはオレンジジュースと言いかけて、チラリとましろちゃんを見てからコーヒーとか言い出す。ブラックは絶対やめとけよ。

 

「なんで、私だってブラックくらい飲めるもん」

「……いやつくしちゃん、絶対やめたほうがいいよ」

 

 ましろちゃん、ブラック被害者の会の仲間を募る顔である。俺の前で見栄を張ろうとしてブラックコーヒー飲んで以来、冬にはミルクティー、温かくなるとオレンジジュースだからな。なんかひまりから聴いた話によると今現在、笑顔全開で働いてるつぐみちゃんもブラックコーヒーは飲めないらしいし、別に背伸びする必要はないと思うけどな。

 

「そうそう、先輩がブラック飲めないくらいでバカにしたりしないし」

 

 それはそうなんだけど、そもそも見栄を張る相手は考えてくれ。こちとら何度一緒にメシ食ったかわかんない幼馴染だぞ。お前の舌と好物くらい把握してるっての。んで、スイーツでも頼むか? 奢ってやるよ。

 

「いいの?」

「怒らせたからな、お詫びはする」

「モノで釣るの?」

「精神的より物質的な方がいいだろ」

 

 じゃあ、と本当に遠慮なく結構値段がするようなパフェとましろちゃんと同じオレンジジュースを注文していくつくし。出費としては苦い顔をしたくなるがまぁ、メシ屋関係は基本つくしの奢りだしな。これくらいは、と思いつくしの隣でメニューをじっと見つめるましろちゃんに声を掛けた。

 

「ましろちゃんは何にするの?」

「え、わ、わたし……? い、いいの?」

「いいよ、大輔だもん」

「どういう意味だよ」

「この場面で私だけにしか奢らないとか、そういうことできないから」

 

 その通り。ましてや食べたそうな顔してるましろちゃんを見て見ぬフリができるほど器用な性格してないし。その恋愛感情には応えられないとしても、先輩と甘えてくるかわいい後輩にいいカッコしたいって思うのが俺だしな。

 

「じゃあ……ショートケーキ」

「わかった、つぐみちゃんそれも追加で、あとお代わり」

「はいっ! いつもありがとうございます!」

 

 なんかそのやり取りを見守っていたつぐみちゃんにいつもの二割増しのシャイニングスマイルをされ、俺はなんかご機嫌だったね? とましろちゃんに訊ねる。ましろちゃんはそうでしたか? と首を傾げた。気付かなかったならいいけど。んでつくしにもついでに訊ねたらなんでだろうねと首を傾げた。つっかえねぇなお前。

 

「私ばっかりひどい扱いする」

「ましろちゃんにひどい扱いするわけにはいかないだろ」

「私にはいいの!?」

 

 俺とつくしのやり取りを見ていたましろちゃんは、帰り際、二人になった時に羨ましいなと呟いた。多分つくしちゃんは逆のことを考えてると思うんじゃないかなという言葉はちょっとわかんないけどさ。

 ──ついでにつくしにはちゃんと花火デートしてきなさいというありがたいお説教をもらってしまった。泣かせたくないからって逃げるなってさ。まともなこといいやがって。




そのドキドキのましろちゃん勝負どころである花火大会ですが、特につくしに関係ないのでカットします。仕方ないね。
まぁ雨降るわけでもゲロ吐いて救急車で運ばれるわけでもないのでね。
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