合宿は順調に進み、俺の暇な時間も順調に進んでいく。時折、休憩時間になるとましろちゃんが全力で甘えに来たり、瑠唯さんが静かにグイグイ攻めて来たりと退屈はしなかったけどさ。しかも言わばあの二人は恋のライバル同士なのに共謀までしてくるんだから恐ろしい利害の一致もあったものだ。そんな合宿から帰って、俺は自分の部屋につくしを招いていた。二葉家が合宿の期間を間違えて絶賛ウチの両親と海外旅行中らしく、家の鍵が開いてなかったのだとか。いや合鍵……はお前無くすからってもらってないんだっけ。
「はぁ……大輔呼んどいてよかった」
「ホントにな」
不幸中の幸いなのは俺がいること。いや俺が呼ばれてなくても連絡くれたら同じ状況にはなると思うけどな。着替えも、向こうで洗濯したおかげであるしな。こういう悪運のいいところはなんというかつくしらしい。そんな緊張感のないピンチを切り抜けて、俺とつくしは合宿の出来事を振り返っていた。
「モテモテだったね、大輔」
「……そうだな」
なんか最近は嬉しいと思えるようになったよ。もうあの二人になんで俺なんだよなんて言っても無駄だってことくらいわかるから、受け入れたらなんだかんだ嬉しいってのも変かもしれないけど、悪くない、って思うようになった。
「贅沢言ってるねぇ」
「マジでな」
けどましろちゃんは泣かせたし、瑠唯さんもたまに寂しそうな顔をする。あの二人の気持ちのどちらにも応えられないってのは結局、嫌だなって思ってしまうんだけど。そんなこと言うとつくしにだったらどっちかと付き合えば? と軽く言われた。
「そう簡単に……」
「簡単じゃん。だって今の大輔、それも悪くないって思ってるクセに」
なんでお前はそう的確にヒトの内心を読んでくるかね、とため息を吐くと幼馴染でベストフレンドだからと笑ってみせた。まぁ俺がつくしの考えてることがわかるように逆もまたって感じか。こいつにそんな察しがつくかはさておき。
「そうだな、悪くない……毎日楽しそうだしな」
ましろちゃんは、きっと今よりもますます甘えん坊になって、けど幸せそうに笑ってくれるんだろうな。毎日を大事に過ごしてくれそうだ。
瑠唯さんは、どうなるんだろうな。けどあの調子だとましろちゃんと似たような感じになりそうだ。それがわかりやすいかわかりにくいかの違いってだけで。
「大輔は、どっちと付き合うか決めたの?」
「決めてたらこんなこと言う前に俺から一緒にいてくれって言ってるよ」
「そっか、それもそうだね」
これまでの俺と言ったらヒトを想うって気持ちがガキの頃、つくしにしていた初恋からちっとも成長してなかった。それをましろちゃんや瑠唯さんと関わることでイヤってほど思い知らされたんだよな。やっぱり俺はおっぱいしか考えてなかったよ。
「なぁつくし」
「ん?」
ちょいちょい、とつくしに手招きする。ベッドの上にやってきてなに? と首を傾げたつくしの肩を抱いて、俺は自分の方へと抱き寄せていく。途端につくしは顔が真っ赤になって、俺を突き飛ばしてきた。痛いんだけど。
「な、なに……急になにしてんの!?」
「いや、やっぱお前が近くに来てもドキドキしないなぁと思って」
「私はいきなりすぎてドッキドキだけどね!」
まぁそれはすまん。けど、ましろちゃんや瑠唯さんだったら多分俺、一緒の部屋にいるのも緊張しすぎて変な挙動してそう。あと目が合わせられなくておっぱい見てそう。けど相手がつくしなので別にそんなことなんもない。なんなら天体観測中にヒトの肩に頭乗せたと思ったら膝枕ですやすや寝息立てやがってな。
「あれは、なんか本当に昔に戻ったみたいで……つい」
「つい、で運ばされる俺の身にもなってくれ」
この時ばかりはロリ体型でよかったと思ったよ。軽くてひょいと抱えれたからな。けど、まぁそうだな。昔の気持ちを思い出したってんなら俺もそうだったのかもしれないな。甘えたがりのつくしをしょっちゅう甘やかしてたあの頃の気持ちをさ。
「……なに」
「つくしは今……ああいや、こういうのはズルいやり方だな」
「大輔?」
息を吸って吐く。こんな逃げ方してたら、脈がないって知りながらもめちゃくちゃアタックしてくれてたましろちゃんや瑠唯さんに申し訳ないからな。だから、まずは俺が言いたいことを言っていくことから始めるべきだ。
「俺はつくしが──」
「──好きだよ」
起き上がって言おうとした言葉がつくしの口から発せられる。それだけじゃない、驚く俺の唇が、つくしの唇に塞がれていた。数秒の静寂、それを破ったのは耳どころか首まで真っ赤にした幼馴染でベストフレンド
「やった……先に言ってやったもんね」
「おまえ……」
「私も、あの日に思い出して、ああそっかぁって思ったんだ。大輔のこと、ちゃんと好きなんだなぁって」
「お前さぁ、俺のセリフ全部奪ってくのやめてくんない?」
「唇も、奪ったよ?」
なんだよそのドヤ顔、まさかの伏兵の奇襲によって主導権がつくしに奪われてしまった。あとついでに唇も。ファーストキス奪われたんだけど! そう言うとベタだけどファーストキスじゃないよとつくしはまだドヤ顔してくる。
「あれだろ、子どもの頃にしたって話だろ」
「したじゃん、大輔が」
「お前からだったろ」
「それは違う、大輔が急に、こう……なんか恥ずかしくなってきた」
なんだお前、情緒不安定やめろ。俺の記憶だと甘えたがりでなんかあるとハグしたがってたつくしに奪われた記憶がふと蘇ったんだが、どうやらつくしによるとそれより前に俺が寝かけてるつくしの頭を撫でながらキスしてきたらしい。ダウト、第一小学生か下手すると園に通ってるような年齢の俺がそんなイケメンムーブかませるわけないだろ。
「それに」
「それに?」
「ガキの頃はノーカンだろ」
「じゃあ……今が?」
「やっぱガキの頃数えていいよ」
「どっち?」
いやまぁ、どの道相手はつくしなんだけどさ。こう気のもちようというかなんか違うんだよ、具体的な言葉は一切出てこないんだけど! だがつくしはそれがなんだか面白かったようで、じゃあさと顔を近づけてくる。
「大輔からも、してくれる?」
「……つくしのクセに」
途中から成長が止まったせいで、俺ばっかりでかくなってすっかり開いた身長差を埋めるように背筋を伸ばして、つくしはほんのりと桜色の頬で、昔とは全然違う甘え方をしてくる。さっきはドキドキしないとか言ったけど、こうなると話は別だ。けど、俺のプライドとしてつくしにイジられるネタを作るのは絶対に嫌なんだよな。
「ん……っは、な、長いって」
「そうか?」
「そうだよ、もうちょっと短めじゃ、ちょ……え、大輔?」
けど、そんなプライドをあっさり塗りつぶしていったのが、ムードというやつだった。あれだ、両親はいない部屋のベッドの上に二人きりなんだからな。何も起こらないはずもなくってやつだ。前に瑠唯さんから没収したアレがあるからとは言って流されたつくしだったが、賢者タイムに入ったことでたっぷり怒られることになった。
「そ、そういうのは……せめて高校卒業してから!」
「一回やったら二回も三回も一緒じゃね?」
「大輔!」
「ハイ、すんません」
反省はしてない。健全な男子高校生が十年以上積み重ねた恋心だぞ、しかも二人きりになれる確率が高いのに卒業までって我慢できるワケないじゃん。それに一度流された以上、これからも同じ手を使えばなんだかんだ言いながら流されてくれるはずだし。
「……ってこと考えてるでしょ」
「流石愛しのつくしちゃん、百億点!」
「この前より下がってる!」
「そっち?」
冷静になるとよくもまぁロリ体型のつくしに欲情できるもんだと感心したくなる自分もいるが、そもそもつくしを愛してるってだけで別にロリを愛してるわけじゃないので、俺のフェチはこれからもおっぱいになるわけなんだけど。
──まぁそれ以前に、長年恋してきた元幼馴染は正義ってとこかな。家族公認すぎるところだけは、もしかしたらなんとかしなきゃいけないのかもしれないけど。
おっぱいヒロイン図鑑(完全版)
№06:幼馴染で、初恋なんだから! 二葉つくし
結局お互いきっかけを忘れてただけで想いの火は燻ってたとさ。なんだかんだで一緒にいるから表面の関係はあんまり変わらない。そもそも前からいちゃついてたし。ただ、何の話かはわからないけど四度目からは制止を諦め、七度目はつくしから誘っちゃう。何の話かはわからないけど。
正直別になんの性癖持ってても大輔だしで全て片付く。大輔だし性癖と私は別という謎の自信、ただし浮気されないかは常に気にしてる。ましるい、お前らのことやぞ。
これにて、これにて本当の本当に終了となります。
たくさんのご愛顧、そして長々とした個別ルートにお付き合いいただき、ありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。
――黒マ×ファナ