開幕から叫ぶぞおっぱい! そんなハイテンションな始まりだけど残念ながら今日はおっぱい関係ない。ノーおっぱい。前だったらおっぱいがない、おっぱいどこって迷えるおっぱい星人と化した俺なんだけど、前に言った通り最近飽和状態なので偶にはこういう日もあっていいよなと思うようになった。休肝日てきな、未成年だけど。そんな休胸日を迎えた……きゅうきょうびって造語、語感悪いから二度と使わないとして、たまには山ばかりでなくなだからな平野を眺める日にしようと俺は目の前の平原を見つめた。
「殴っていい?」
「待てつくし、フォークはだめ、ナイフもだめだからな」
ナイフとフォークで生物に立ち向かうのは某グルメマンガだけでお腹いっぱいだよ、グルメマンガだけに。
──とまぁ、そんなくだらないやり取りをするのはやっぱりベストフレンドにして隣に並ぶと兄妹か犯罪を疑われる二葉つくしちゃんでーす、どんどんぱふぱふ~、ぱふぱふできないけど。
「
「はいはい」
「もう、今日はおっぱ……んん! 胸の話は禁止!」
「え、そうすると俺は天気の話しかできないんだけど」
「どんだけ会話のバリエーション胸に偏ってるの!」
どんだけって、つくしがイベントストーリーで月ノ森生として~って言いだすくらいの割合かな。そう考えると相当だな。ヤバいな。で、えっと……おっぱいの話題禁止なんだっけ、えーとえーと。
「……今日はいい天気ですね」
「ホントに天気の話するの!?」
「ちなみに俺は夏の雨が好きだよ」
「そ、そうなんだ……なんで?」
「服が透けるから」
「ヘンタイ!」
夏ってほら、基本生地が薄いじゃん? 通り雨とかで濡れるじゃん? 透けるじゃん? なんならカラダのラインに張り付いておっぱいのカタチがくっきりじゃん? だからもっとじゃんじゃん降ってほしい、できれば俺がビッグセブンと会ってる時に。今はだめ。
「結局また胸の話してる……」
「いやホント、口に出せるのつくししかいないから……」
「じゃあ普段天気の話ばっかりしてるの……?」
それはない。なんだかんだ相槌でやり過ごしてるさ! とか言いつつ燐子さんならゲーム、瑠唯さんはバンド関係、ひまりはなんか色々あったこととかってそのヒトと会話する専用デッキが存在するから。それが通用しないのマジでましろちゃんくらい。
「……ましろちゃんかぁ」
「どうかした?」
「ううん」
首を横に振られるけど、いやそのリアクションはなんにもない感じじゃないでしょ。あの子のメンタルマジで赤ちゃん並みだから心配になるが、俺ができることなんてほんの僅かでしかないし、あの子俺ができることなら速攻で電凸してくるし。
「大輔はさ」
「うん」
「ましろちゃんのこと、どう思ってるの?」
「どうって、おっぱい」
「……サイテー」
サイテーだろうとなんだろうと俺が対女性にどう思ってるかなんて突き詰めるとイエスおっぱいかノーおっぱいの二択だよ。必死に隠してるからバレてないだけで、本当に最低で嫌だって思えばつくしがバラせばいいんだよ。そういう意味も込めて俺はつくしにだけは隠すことなく伝えてるつもりなんだけどな。
「相手が自分のことをどう思ってる、とかは?」
「考えてどうすんのさ。もしかしてあの子、俺に気があるんじゃね? って恋愛脳になっとけばいいのか?」
「……ごめん」
いや謝られるほど怒ってはねぇけど。つかさ、女性は視線に敏感だって言うじゃん? 俺がどんだけおっぱいに執着してるかどうかまではわかんないだろうけど、たぶんみんな俺がそのヒトのどこを見てるかなんて気づいてるよ。つくしだって気づくわけだし。
「……そだね、今も見てるでしょ」
「おう、相変わらずなだらかな平原だなと」
「バカ」
とまぁそんな常に視線がおっぱいな男、誰が好むかよって話なんだよ。たとえ態度が紳士でも、いや態度が紳士だからこそ、その視線が気になるもんだと俺は思うよ。こいつむっつりじゃんかみたいな。実際はもっとオープンにおっぱいって叫びたいけど。
「あーあ、つくしが巨乳だったらなぁ」
「好きになってた?」
「いやそこまでは……わからんけど」
「なにそれ、付き合えたら触り放題なのに」
「イエスおっぱいノータッチで」
「変なの」
なんというか、つくしとは長く一緒に居て好きって感情なんて湧かなくなったよ。それこそ昔は結婚とか囃し立てられたけど、つくしが選んだ男がいつか俺の前に現れてコイツとはもう話さないでください的な嫉妬を向けられたいと思うようん。当て馬になりたい。
「私は……」
「ん?」
「逆は、ちょっと泣いちゃうかも」
「おやぁ、つくしはもう大人なのに幼馴染離れができないのかな?」
「……できないよ。私のダメなところ、大輔が全部知ってくれてるから、強がっていられるんだもん」
ちょっと下を向かれてしまった。ごめんって、そんないじめるつもりじゃなかったんだよ。つくしが自分のことをダメだってちゃんと言葉にできる相手が俺だけっていうのは、ホントにそうなんだろうな。気づかれても違うとしか言えない弱い自分ときちんと向き合えるのが。相変わらず重い信頼だ。ある種恋愛感情よりもずっと重いものを背負わせようとしてくる。まぁそれは俺も同罪だけど。
「あーあ、私も、大輔がもっとカッコよくて胸の話ばっかりしないヒトだったらなぁ」
「だったら好きになってたか?」
「うん。でもそうなったらもうそれは大輔じゃないけどね」
確かにな。俺が表裏のないマジもんの紳士でおっぱいに対する情熱なんてなかったら、それはもう俺というアイデンティティの崩壊を意味してるからな。俺はおっぱいの情熱を諦められないし、おっぱいへの愛を諦められない。でも、逆を言えばそれが
「セクハラがアイデンティティっていうのもどうかと思うけど」
「つくしにしかしないし」
「私にもしないでね!?」
訴えてやるんだからと怒られて、笑いながら謝って、それがいつものやり取りすぎて安心する。こういうところは俺もまだまだ幼馴染離れができてねぇなって思う。それこそおっぱいはないけど、つくしは一緒にいて飽きないやつだ。バイト先で瑠唯さんと話して、羽沢珈琲店でイヴちゃん、ひまりや時々麻弥さんや有咲と会って、ましろちゃんや燐子さんたちと出掛ける日々、目のやり場に困るそんな日々を支えるのはやっぱり、目のやり場に困らない大切な幼馴染の存在はでかいよな。小さいのに。
「なんか、今余計な一言付け加えなかった?」
「小さいのに」
「そ、そのうち……でっかくなるかもしれないじゃん」
いやおっぱいに手を当てて怒ってるところ申し訳ないんだけど今回ばかりは身長の話をしてたよ。ホントそのロリコン先生が大興奮しそうな幼馴染を持ってしまったせいで、マジで偶に周囲の目線が痛いんですよ。そのうち通報されそう。
「うぅ……高校生になっても、この扱い」
「子ども料金で電車乗れるもんなお前」
「うるさいなぁ!」
いいことじゃん半額だよ半額。あとお前、身分証明書は常にサイフに入れておけよ。絶対に職質されるからな。そう言うと大輔も絶対職質されるから一緒にサイフから出せるようにしとかないとね! と煽られた。俺は既に訊ねられるんでサイフに入ってます~。
「それじゃ……あ、そうだ」
「ん?」
帰り道に家の前で別れる寸前、つくしが思い出したかのように笑顔で来週のバイトのことを訊ねてきた。おう、来週はガッツリ入ってるけど、つかお前は俺の予定知ってるだろうが。そう返すとつくしは嬉しそうな顔で遊びに行くからねと言い出した。練習しにこい、遊びに来るな。
「モニカで予約したから!」
「……毎度」
「じゃーね!」
いい笑顔で手を振るつくしを見送りながら俺はため息を吐いた。いやいいんだよ、つくしと瑠唯さんとましろちゃんはね、いいんだよ。おっぱいって興奮できるし。ただ問題は残りの二人なんだよなぁ。そう思いながら来週のバイトが少し億劫になった瞬間だった。とりあえず明日はひまりに振り回されるからそのこと考えよっと。
つくし相手だと発言がヤバくなる主人公、ついに名前が登場しました。
おっぱいはせいぎヒロイン図鑑(略称おっぱいヒロイン図鑑)
№01幼馴染イズベストフレンド:二葉つくし
おっぱいはない、ない(無慈悲)。彼女にとって彼は幼馴染以外のなにものでもなく、それ以外にはなりたくない。だが幼馴染離れができないため、時折重いカノジョみたいなことを言い出す。